青年放浪記   作:mZu

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過去回。
そして閲覧注意。


第121話

ある少女は三人家族の幸せな家庭だった。その少女は神社に行くと偶に神を見かけると話すので少々気持ち悪がられている節がないわけでもなかったがとても楽しそうにしていた。

 

学校ではその明るい性格故にそのような事は無く友達は多い方だった。部活に入ってはいないので先生たちには少し怪しまれていたり嫌な噂を話していたりしてあまり良く扱われる事はなかった。

 

しかし少女の楽観的な考え方が意外と功を奏して何かあったような事も軽々しく通り抜けた。そんなある日の事だった。少女はいつも通りにある神社へと向かった。その場所にはその少女にしか分からぬが神が存在すると言う。

 

しかも二人居るらしい。

 

そして楽しそうに独り言を話している少女を見てはその近くに住んでいる人たちはヒソヒソと話をしていた。子供の頃はそれこそ戯れとして優しい目で見守られていたが、中学生となったこの時期では既に頭可笑しいのではないかと思われ始めている。

 

それは親にも感じてられているが頑なに行きたくないらしい。理由はよく分かるが本当の理由は本人に聞くしかなさそうだ。そして夕暮れ時に家に帰ってきた。まず顔を洗ってから制服を脱いでハンガーにかけると親が沸かしていた風呂に入る。

 

時間にして30分、少女は湯船に浸かってじっくりと芯から温めていた。そしてそろそろと思って湯船から上がって体をタオルで拭いた。それから寝間着を羽織る。オシャレなものではなく素っ気ない色の半袖と短パンを着用していた。

 

「今日の晩ご飯は何ですか?」

上機嫌にリビングに入ってくる少女の目に移ったのは日常を過ごしているのならばまず見ない景色であった。

 

「今日か、さて知らないな。肉でも焼いてみるのだろう。」

台所には少年がまな板で何かを細切れにしていた。少女はその少年の事を最初の内は何も思わなかった。

 

「手伝いますね。」

少女はきっと知り合いの誰かなのだろうと考えていた。そして食事を作っているので余計にそう考えてしまった。

 

「分かった。私はその家の事はあまり知らないのでな。とても助かる。」

少年は切り終えた肉を皿の上に乗せて野菜を切り始めようとしていた。そこで少女はキャベツを渡していた。

 

「貴方の母親は何処かに出かけている。しかし食事は適当に作っておいて欲しいと言われるとは思わなかった。適当に作って二人で食べる事にしよう。」

少年はそのように言っていた。なので少女はその言葉を信じ込んで少年と一緒に料理をしているのである。

 

「ありがとう。」

少年は素早い手さばきでキャベツを千切りにした。料理人のような繊細な切り方であるが豪快な男らしい切り方に少女も魅了された。

 

それをザルの中に入れてから少女によってすでに用意されていたフライパンの上に肉を入れてからコンロに火を付ける。軽くヘラで炒めてからキャベツを入れて蒸し焼きにしていた。

 

「醤油と酢、それにマヨネーズを貰えるだろうか。」

少年は少女にそれらの調味料を取り出してもらうように頼んだ。少女は軽く返事して冷蔵庫と引き出しから取り出す。

 

少年はシナシナになったキャベツの上に醤油と酢を同時に同量入れるとヘラでフライパインの中をクルクルと回した。

 

混ぜ込むようにフライパンの縁を使ってまとめるとマヨネーズをかけてからもう一度混ぜ込んだ。

 

そして素早く皿に盛り付けてフライパンの中に水を入れて汚れを取りやすくしておく。

 

「茶碗を用意してもらえるだろうか。」

少年は炊飯器の前にしゃもじを持って立つと少女は茶碗を二つ渡した。

 

きっと自分のと少年のものなのだろう、ピンクと青の同じ模様の入った茶碗を渡した。少年はご飯を軽く盛り付けてテーブルの上に置いた。

 

その机は少女がすでに台拭きで事前に拭いておいた。少年は少女の行いに素直に感謝を述べると褒められた方はとても嬉しそうにしていた。この時点では楽しそうな時間を過ごしていた。この時点では。

 

「この料理はどのようなものなんですか?」

少女は少年と作った食事を頬張りながら少々行儀悪いが話しかける。少年はコップで口の中を一度流し込んでから少女の受け答えをする。

 

「豚か牛かは今のところ分からないが、何かを炒める料理であるのは確かだ。味付けはこちらで勝手にさせてもらった。マヨポン炒めだが口に合うだろうか。」

少年は何処か自信なさげに答えていた。少女はそんな様子を察してか、とても美味しいと答えた。其処で少女の父親が帰ってきた。

 

ツナギを着ているので力仕事か工場に勤めていると思われる。父親は一旦ツナギを着たまま茶の間まで来た。

 

「こんばんは、お邪魔しています。」

少年は挨拶をしておいた。

 

「友達?」

父親は答えた。

 

「いいえ、お父さんの知り合いではないんですか?それともお母さんですか?」

少女はこの空気感も気にしている様子はなかった。元々の性格がここで発揮しているのか、その事はさておき父親は薄々察したらしい。

 

「君が殺人鬼か?」

少年はその言葉を聞いた瞬間に立ち上がると父親に向かって何かを投げた。

 

その一直線な軌道を描いたナイフは深い場所に当たった。その場所から噴き出した赤い液体は鯨のような勢いで吐き出されていた。父親はその一瞬で何をされたのかは全く分からなかった。

 

少年はゆっくりとした足取りで美しくナイフを抜くと赤く染まったナイフの刃を見つめてヘラヘラと笑った。舌で舐めとってから少女に一礼すると玄関から堂々と逃げていった。父親は動かないで勿論のことだが、少女も其処から動くことが出来なかった。少年のその行いに吐き気がしたわけではない。

 

ほんの一時間程度だが一緒に過ごしていた。その時の記憶が脳内でループする。虚ろで何も受け取る気になれなくなったその目は脳の活動を止めるのに十分なほどの損傷を与えた。

 

父親は病院に搬送された後に死亡判定を下された。母親は見つける前から息を引き取っており両腕がなかった。血に塗れた家の中にいられなくなった少女は施設を転々としていつもの場所に戻ってきた。

 

地域の人にも見離されて誰からも手を差し伸べられることのなかった少女はいつも優しくしてくれるところまで出かけた。

 

「今戻りましたよ。」

 

その声に当時の面影などなくあどけない表情をしていた少女は真っ暗な顔と認識されないような顔をしていた。

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