青年放浪記   作:mZu

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第123話

高床式の本殿なのであろう大きな木造の建物と小さめな物を置くためだけの小屋のようなものそして奥には大きな朱色の鳥居があり何か音が聞こえてくるのだがその正体は分からずに隠れている。

 

髪の結んでいる後ろ姿の青年と銀髪のサイドを三つ編みにしている女性はコソコソと境内へと入っていた。下には砂利のような小さめの石があるがここまで管理が行き届いているのか新しいのか苔一つ生えていない素晴らしい見栄えの神社であった。

 

「此処が守矢神社なのか。立派な建物がある。」

もちろんそれ以上高いところなどないので合っているのだろうがまさかの裏口からの参拝に流石に咲夜は状況を飲み込めない。まるで盗人のような入り方を平然とした態度で青年は入っていくので仕方がなく咲夜も同じように中へと入った。殺風景というのは失礼なのだが最低限しかないので神社としては見事なものであると青年は感じていた。

 

「ところで本当にこれだけで帰るなんてことはないわよね。」

 

「それはどういう意味だ?」

青年は気になって咲夜に直ぐに聞いた。その速さは並大抵なものではないのだが慣れてきた咲夜にはそれほど驚きもしない。咲夜は呆れたような雰囲気を感じるのだが真相は夜の中にある。

 

「また騒動でも起こさないのか心配なのよ。」

咲夜はそれだけを伝えた。確かに身勝手な行動で始まった珍道中であるのは青年の行動の結果とも言える。挙げ句の果てに一戦頼むなんていう愚行は咲夜には到底理解出来ないらしい。

 

「臭い言葉を吐いてきたしな。雛に会えたのはある意味幸運とも言えるだろう。にとりとはまた来る約束もしたし、椛とは真っ向から怪我しない程度に闘いたい。」

楽しそうに話す青年に咲夜は手の焼ける子供を持つ母親のような表情をしていた。記憶のない青年がどのように過ごしてきたのかは知らないがきっと真っ当な生き方はしていないのだろうと考える。

 

咲夜は一度は救われた身としてなんとなく手を繋いでいるが青年が繋ごうとはしてくれなかった。遊びであるかのように会ってきた人に話しかけていく青年にはその気はなく何か悲しい気分になるのは仕方がないことだと思った。しかしここら辺で終わらせておきたい。

 

「そしてまた話しかけては仲良くなるのでしょうね。」

咲夜はある意味では未来を予知していた。別に青年にその様な気は無かった。何か青年には惹きつけられるものがあって話しているだけであるので何の事かはさっぱり分かっていない青年は首をかしげるだけで言葉は発しなかった。青年は取り敢えず様子を見ようと本殿の表側に向かおうとしていた。騒ぎは起きているが青年には関係のない事なので別に気にしてはいない。

 

それにその音は上で起こる様になってしまったので下手な話隠れる事のできる場所はまるでなかった。青年はそんな事を空を見上げながら考えて取り敢えず参拝だけ済ませようとしていた。

 

「何処に行くのよ。」

青年の動きに首を動かしながら咲夜は聞いてみる。青年はぬるっと首を咲夜の方に向けて話を聞こうとしているが何処か不機嫌であるところはあるのでどうしたものかと咲夜は思ってしまった。別に気にする様なこともなかったりするが本当に何がしたいのかは本人でもよくわからないこともあったりする。

 

「参拝しようと思ってな。それも許してくれないのか。」

青年はきょとんとした表情をしている。咲夜の一言が気に障ったのかそれとも目的を達成しようとしているだけなのかはよく分からない。多分後者であるだろうが本当は本人しか理解していない。

 

「いえ、それは違うわ。貴方があまりにも行動範囲が広いからこちらは困っているのよ。何か一言言ってから何処かに行って来なさい。」

 

「それは人の自由であろう。」

 

「基本的にそうでしょうね。でも偶に朝から居なかったりするから心配になるのよ。」

ちょっと声を荒げてしまったのだろう。咲夜は口を噤んでいた。青年は少し悪い気がしてきた。朝から居ない時は基本的に冥界か博麗神社に向かっている。それか霧の湖での釣りか。咲夜に言われてから思ったが青年は変に自分の謎の行動力の弊害を初めて感じた瞬間でもあった。そうだな、と青年は考えていた。

 

「なら次からは紙を置いておくから読んでおいてくれ。」

 

「それなら良いわよ。死ぬ事はないでしょうし。」

 

「物騒な事を言ってくれる。」

青年はそこで一旦話を終わったと思って脚を動かしていたがそこで話しかけられる事になった。

 

「こんにちは、私は守矢神社の巫女をしている東風谷 早苗と申します。本日は参拝に訪れて頂きありがとうございます。」

ぺこり、と深く一礼した人は確かに霊夢と同じく巫女の様な服装をしていた。相変わらず脇を見せた状態である服装で白の生地に水色の縁取りがされた服装をしている。スカートは青に白い水玉の模様のした可愛らしい服装をしている。そした頭には髪留めなのかカエルの顔をしたものが付いている。顔を上げた表情は元気そうな第一印象を青年は感じた。そして右側には一房に札によって纏められた緑色の艶やかな髪には白い蛇が付いていた。ここの神が蛇やカエルの様な物であるのだろうと青年は何となく感じた。そうなると博麗神社にはどの様なものなのかは後で本人に聞いてみる事にした。

 

「こんにちは。今日は人がいない様に感じるのだが何があったんだ。」

青年は素っ気なく聞いていた。騒ぎがあったのは知っているがそこまでやるほどの騒ぎなのであるのかは青年には愚策の様に感じられた。 其処は守矢神社の判断なのでなにも言わないこととした。

 

「実は見知らぬ人が神奈子様に喧嘩を売りまして。空を見て頂けると分かりやすいのですがこの様な状態なんです。」

早苗は上の二人がいる辺りを指差して青年に分かりやすい様にしていた。青年はその方を向いていたが咲夜は向く様なことはなかった。天然の様な無警戒の様なそんな性格をしている早苗を青年は疑問に思っていた。早苗はその事をどのように思っているのはよく分かっていないが。

 

「新人への荒い歓迎だと思ってやり過ごすのが一番楽だろう。」

青年はそれだけを伝えた。幻想郷には弾幕勝負という少女の遊びで決着をつけるときがある。要はそういう事である。】

 

赤いジャージを着用した青年は早苗の事をある意味危険な人物と感じた。その理由は基本的に話を聞いていれば何となく分かる。

 

「神奈子という人物なのだがもしかして今のところ空で舞っているのがその人なのか。」

青年は何となくであるが聞いてみる事にしてみた。青年からすれば本人から聞くべきなのであまり話させる気はなかったが聞き出せそうなので本当にそうなるのか試してみる事にしたらしい。

 

「青紫色の髪をした背中に注連縄をしている方がこの守矢神社に祀られている八坂 神奈子という方です。神奈子様は私にとって偉大な神様なんですよ。」

きっとこれまで危険に遭ってきた事はないのだろう、それともそれも理解出来ないのか。その事は気にしない事として青年は早苗の口の軽さに不安に感じているのだが幻想郷の中なら生きていくことも出来るのだろう。そんな失礼な事を考えていた。

 

兎に角このままでは進展がないので賊との対決を急いでほしいと思っているが生憎その賊というのが知人である事に青年はどう反応していいのかは分からなかった。その人は赤い服を着た巫女で黒髪の博麗 霊夢である。青年は心配してみた自分がとても恥ずかしくなってきてどうしようもない怒りに囚われそうになる。がその点は人の事なので水を差すことはないと言い聞かせた。冷静になって考えてみれば霊夢が勝手に始めた事であるので何も青年が手を出すような必要はない事なので気にしない方が得策かと思われた。

 

「そうなのか。神様が直々に相手してくれるとは不謹慎ではあるが中々良い機会なのだろう。」

青年は羨ましそうにしていた。早苗としては何か違うふうに捉えたらしく話がややこしくなりそうだがその事は本人は知らない。咲夜は後ろから気の小さい巫女と自由な青年を見ていて嫌な感情が込み上げてくるがそれをどうにか抑えていた。どの様に傾こうとも青年の自由なので咲夜は大事になるまでは静観しているつもりである。

 

「神奈子様もちょっとした余興なのでしょう。私も混ざりたいです。」

早苗も青年と同じく羨ましそうにしていた。早苗は尊敬する人の隣で戦線に繰り出せるかもしれないと考えている。青年は神とは対決出来るなんてとても面白そうと考えている。静かに後ろで見ていた咲夜は冷静沈着に二人の考えている事を予想してみた。概ね当たっているのだろうと自分で採点してみるが本当の真実は神も知らない。

 

「そうか。本人の許可が出たら行ってみるものもいいだろう。だが今は余興なら俺が出る幕でもないし貴女が出るのも場違いとなる。今はその気持ちだけを神奈子さんに伝えると良いだろう。」

青年も咲夜と同様に冷静に現状を分析していた。早苗は其処まで頭が回らなかったらしくはっ、と青年の言葉を聞いて初めて気づいたらしい。

 

「有難うございます。恩に仇で返すところでした。この感謝は一生忘れないです。」

急に元気そうにし始めた早苗に青年は多少戸惑いつつきっと雷にでも当たった衝撃を感じたのだろうと考えておく事にした。それほどあの気づきが早苗にとってとても良い経験となったらしい。青年はそんな事を考えながら何処か距離を置いているので青年はもう少し近づいてみてもいいだろうと思い始めた。善人ほど悪人であったりするので青年は変に慎重になっているらしい。

 

「そうか。それは良かった。」

青年はとりあえず軽く返答だけしておくことにした。

 

「そういえばお名前聞いていませんよね。」

早苗は急に気付いたのか、わざとなのかは知らないが青年に質問を投げかけていた。何か不味い事はしていないがここまで持って来られるとややこしい事になるのは確かである。どうするのが正しいのかはさておきどう答えるべきか。

 

「山川だ。」

 

「山川さんですね。これからも守矢神社に参拝して頂けると嬉しいです。」

ニコッ、と笑った表情を見て青年は人を惹きつけるのだろうなと思っていた。それは仮定ではなくて確証であった。心が軽くなって和やかになるのは人の心を柔らかくする。それだけでも偶に来る価値は大いにあるのだろうと考えた。

 

「ところで早苗は前から幻想郷には住んでいたのか。」

青年は何となく聞いてみる事にした。

 

「いえ、最近来たばかりです。七日ほどでしょうか。妖怪の山の天狗さんや河童さんにも神奈子様が手伝うように指示していました。神奈子様は元々山の長老をしている大天狗さんと話をしていたそうです。何を話していたのかは何も聞いていないので私は存じあげないのですが難航したと神奈子様は仰っていました。大天狗様は一本の山道を参拝するための道として利用する事を許可したので其処から整備に掛かっていたそうです。その次の日から私は人里に赴いて紙を配っていました。皆様は神社に対する印象が最悪だったので私も困り果てましたが話しているうちに一枚だけ紙を渡すことが出来ました。その時は私はとても嬉しかったです。それから皆様は続々と並ぶように紙を受け取りに来てくれました。私は紙を配り終えた夕方にこの場所まで戻ってきたんですけど山道が人々が登りやすいように設計されていましたので其処で感謝を述べてから戻ってきたんです。次の日は朝から驚きました。何と最初に受け取ってくれた人がわざわざ神社まで訪れてきてくれたんです。私は朝早くで適当な対応をしてしまいましたがその人は大変満足したようで危ない山道を駆け下りて行きました。それから参拝したいと言ってくれる人々が危険な道を歩いて来てくれるようになりました。その時ばかりは私も寝込んでしまいそうになりましたが人々の優しさに触れて何とか今日までやって来れたんです。まだまだ山道は危険な所があるのですがそれでも今日も同じように沢山の信仰心が集まったのでとても有難いと思っています。」

早苗はとてもしみじみと話していたがまともに歩いてきていない青年にとっては何の話だがよく分かっていない。それでも早苗の元々持っている人を寄せる能力が功を奏したらしく沢山の人が訪れているのは見るだけでよくわかった。

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