第125話
その場所には整備された本殿までの石造りの道がある。そしてその両端には灯籠が立ち並んでいる。そして青年から見て本殿の方に神奈子は空に浮かんでいた。今度は後光が差している神奈子はその場所から更なる追撃を与えようとしている、、青年は勘違いから起こったこの無毛な戦闘を収める方法は自分だけでは出来ないと感じた。憎しみの対象になにをされてもきっと何も耳に入る事はないのだろう。青年は剣を構えながらその様に感じていた。
「行け。」
日本の御柱が神奈子の両端に現れるとそれが上から下へと降り注いだ。それが青年を動かせない為に敷かれた布石であると感じたので当たる寸前のところを通りながら何とか広い場所へと出た。まだ新しいはずなのだが軽く抉られている石畳の道を青年は変に悲しく思えてしまった。だが神奈子の起こした行動は愚直だと笑う事は出来てもその言動までは笑う事はできなかった。大事な人を守りたいという気持ちは誰にでもあるものなので青年はそれを否定する気は無かった。
「辞めろ。悲しむ奴がいる。」
青年は其処で辞めさせる事にした。神奈子の気持ちも分かるがそれがどうしても青年には相手にする事はできない強大な力であった、そして青年の持っていないものでもある。神奈子は青年の言葉は耳に入らなかった。青年は致し方がないのでしばらく相手をして助けを求めるほかないだろう。どうしても駄目なら本殿の下に潜り込めばいい。
それだけを頭の片隅において何となく現状を目で確認した。右側には大きな御柱があり上から飛ばされるので避けることが出来てもこちらから攻撃を加える方法はなかった。生憎此処には水と言うものが限定的にしか無かった。その場所は要は手を清める為の場所で皆が使うであろう場所なので其処の水は使える気はしなかった。しかしあの水はどこから来ているのかは青年は分からなかった。あれが集まって川になるのかもしれない。
「それは知らないな。罰を受けるが良い。」
神奈子は青年の頭上から三本だけ地上に落とす。青年は後ろに避けた後にその場所に読まれていたかの様に御柱がくる。青年は更に右側へと避けると御柱に当てて青年を狙っていた。青年はその場で御柱を避ける為に空中で捻りを加えて御柱の上に乗った。その硬さは並のものではなく鉄の様なもので強固なものだった。上から少しでも擦れば引き千切れるだろうと思えた。それだけ神の力と言うのは甚大なものである。そしてその先にはきっと破滅の未来が用意されているのであろう。
青年はそのカウントダウンを数えながらどうにか回避する方法を探していた。此処からどれだけ一気に出せる数が増えていくのかは知らない。それこそ無数なのかもしれないがそうなれば青年にどうにかする方法はない。三本でもこの調子なので此処からの試練は突破するだけで精一杯になる。軽く舌打ちをして少しずつ後ろに下がる事にした。鳥居のところは上から死角になりやすい。其処まで行ってから一呼吸してから再戦か逃亡をしようと考えているが其処までうまく行けるのだろうか。
「早苗はこの様な戦いは望んでいるのか。」
「早苗は泣かされていたんだ。私が早苗にしてあげる事はそれぐらいしかない。」
「幸せ者だな。」
青年はそれだけ伝えた。神奈子には過去がある。誰しもが持っているものなのだが神奈子には早苗を守ってやることができなかったのが心残りだった。その悔いは如何しても拭いきれない。
「貴様が何か言えた口か。それが現人神に対する態度なのか。聞いて呆れる。」
どこか冷静を失っている神はどこか人間と同じ様なところがあった。それが神奈子が人を集めた理由なのだろうがそれに合わせてカリスマ性も何処かの主人よりもあるので其処には人は惚れたのだろう。
「貴方こそ見知らぬ人に話し過ぎではないか。」
「貴様。」
神奈子は唇を噛み切る様な悔しさにかられていた。そして青年は時間稼ぎのつもりで口を開くのだがリミットがどんどん縮んでいる様にも感じるのでもう開けれる様な気がしなかった。このような意思のぶつかり合いには慣れていない青年には自分にどんどん自信を失ってくる。それをどうにかするためには誰かに助けを求めるしかないが此処で誰に頼めるのだろうか。
此処には上に霊夢しか居ないが何やら状況が掴めないらしく何も手を出そうとはしていなかった。そして鳥居の後ろにいる魔理沙はまた霊夢が騒ぎを起こした様に感じているか特に聞く耳を持っていなかった。霊夢も声を荒げると男と変わらない声であることがある。魔理沙は面倒な事になったと思いながら帽子を更に深く被る以外は何もしなかった。
咲夜は早苗を宥めているが其処まで上手く行っておらず難航していた。つまりは青年に助けを求められるのは霊夢しか居ない。が、必ずしも賛同してくれるのかは分からないし青年にも其処までの余裕はなかった。椛との戦闘で両腕が動きにくくなってしまったらしい。軽い傷ではあると思うが筋肉が切れている様な気がする。それも剣を握るために使う様な筋肉なのだ。剣の重たさで右手は悲鳴をあげていた。青年にはもう何かする当てはなかった。
「辞めてください。」
青年の前に立ったのは現人神である巫女だった。青年に背を向けて神奈子に御柱を投げさせない様にしているがそれでも止まる気のなさそうな神奈子は更なる一撃を見舞おうとしている。青年は鞘の中に剣を納めてから早苗の右腕を掴んで自分の元へと引き付けた。それから後ろへと乱暴に投げ捨てる様にすると早苗を守る様に青年は神奈子と対峙していた。
「巫女には傷を付けるな。」
青年は少々声を荒げていた。予報の中では一番悪いものであるがそれでも助けを求めてくれたのならそれだけでも嬉しい。
「貴様を粛清すれば終わる。大人しくするがいい。」
神奈子は高圧的に青年に言うが青年は更に強い眼差しを見せるだけでそれ以上は何もしてこなかった。逆に何もできる様な事はなかった。
「分かった。私の勘違いだったよ。」
神奈子は大人しく空から舞い降りると青年に一言謝罪を述べた。青年は何も気にしていない様でそうなるのならばいいと気楽に考えているかの様だった。青年は無言で立ち上がるとタラタラと鳥居の方へと歩いた。