青年放浪記   作:mZu

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第128話

川のせせらぎが聞こえるこの場所では夏らしい気温と直射日光が降り注ぐ。その場所と香霖堂とはまた違うことを感じながら青年は川沿いを歩いていた。

 

所々に散りばめられた黒い輝きを放つ小さな石を見ながらある場所へと向かっていた。その場所にはドーム状のした細い煙突からモクモクとした煙を吐き出しているその工房には河童がいる。その河童というのは外ハネのしている青い髪をしていて作業服であるツナギを着た少女だった。

 

「やぁ、山川さん。今日は何か要があるのかい。」

にとりは工房の扉を開けて青年を迎えた。元々河童は物作りが得意な種族であるらしく工房を持っている人も居るがどうやらその一因になったと思われるにとり。青年はそのような裏の事情は知らないので何が出来るのだろうかと思っていた。

 

「川沿いのところに落ちている黒い石を集めたいと思っているんだがそれは可能なのか。」

青年は少し言葉を膨らませながら話した。ゆっくりとした話し方には青年は慣れていないのだろう、何かぎこちなかった。頼み事はあまり得意ではないようなのでその辺りのことは仕方がないと思う。

 

「黒い石?あれを何に使うんだい?」

にとりはそのように聞く。

 

「拾って欲しいと頼まれたんだ。それで集めたいのだが良いだろうか。」

 

「目的は何か知らないけど良いよ。何も使わないし色も嫌だから。多分河童には必要としている人は居ないしその物好きには感謝だね。」

にとりは何処か嬉しそうにしていた。その理由はその素朴な工房とどちかと言えば科学的な思考をしているからだと思われる。幻想郷では科学のみで解決する事も魔法のみで解決させる事も出来ない事もあると思う。青年はそのような事を考えていた。

 

「それなら助かる。実はこの黒い石を加工する事が出来る人を見つけて双剣を作ってもらえないか頼んでいたところなんだ。」

 

「剣を作れるなんてそれはホラなんじゃないか。」

にとりはきっと前にやってみた事があるのだろう。青年は加工のやり方を誤っているから出来るわけがないと思っていた。香霖の話ではどのような環境でも形状を変えることはない、それなら窯で焼いたところで一切変化するようなことはあり得ないのだろう。

 

「例えばこの剣の鍔に使われているとその人は言っていた。それで信じてもらえるのだろうか。」

青年は腰につけていた特注のベルトから剣を鞘ごと取り出すとにとりに見せていた。にとりはその剣をじっくりと見つめていたがどうやら分からなかったのか不満そうな表情をして青年に渡した。

 

「このように加工する方法はよく分からないけど研ぐことは出来るから投擲武器なら作るよ。」

にとりはきっと加工することのできるという話に火を付けられたのかどこかやる気を出しているように思えた。青年は単純に加工方法を教えてみても良かったがそれはにとりの職人としてのプライドを汚す事になるのでやめておく事にした。

 

「文なしだが頼みたい。それでは拾ってくる。」

青年は踵を返して黒い石を拾い始めると二、三個か投擲武器として手頃な大きさのものを拾って来ていた。それは青年が選んできたのでにとりはそのまま作業に取り掛かる事にした。にとりは何処からか出していた砥石に青年の拾って来た手に馴染みそうな形をしている黒い石を置こうとしていた。その姿はまるで取り憑かれたようであり相当悔しんだろうと思う。

 

「先に言うが何も払う気はないがそれでも良いか?」

青年は何かを確かめるように話しかけるが一瞬だけにとりは顔を青ざめていたが今更になってその事に気付いたらしい。

 

「う、うん。良いよ。仕方がないからね。私の勝手な思い込みでお金を取るわけにはいかないからね。」

 

「取るような事は出来ないからな。貴方の腕をその黒い石を研ぐことで見せてくれるという事であろう。」

 

「仕方がないね。じゃあ見ていてくれよ。」

にとりは元気を取り戻したのかもうどうでも良くなったのか青年には分からないが声を大きく出していた。河童の特性なのか個人の性格なのかは判断は付かないが青年は楽しみに待っている事にした。

 

「では俺はここで待つ事にしよう。」

青年は何かの合図かのように座り始める。にとりは青年の拾ってきた黒い石をどうして知っているのか、それが不可解に思えた。

 

「山川さん。そう言えばどうしてこの石のことを知っているんだい?」

 

「前に来た時に拾った。」

青年は短絡的に答えるが妖怪の山ではその中での物を外に出すことは許されていない、無許可なら。況してや天狗に見つかればどうなるかは知っている。そのような事が為せそうではあるがその辺りは本当の意味で知っていないと判断は難しいところである。

 

「天狗には見つからなかったの?」

 

「いや、一戦だけ挑んでみた。」

青年は平然と答えるがにとりからすれば愚の骨頂に過ぎない。サラっ、と青年が天狗と刃を交えたと答えるので二度見したという事しかできなかった。

 

「よく生きていたね。」

 

「真剣勝負をしたかったがあまりにも力の差があったのでうまく逃す戦法に切り替えたら何とかなっただけだ。」

青年は前にここに来た時のことを思い出していた。あの人の強さは青年からすれば破格というものであり挑む相手を間違えたというのが青年の本音だが見事に討ち果たした。その事を聞きたいのかと青年は思ったが聞かれるまでは詳しく答えるつもりはないようだ。

 

「もしかして手慣れの人?」

にとりからすればそのようなところだろうが人間が所詮持てる力は妖怪に対抗するためだけなので青年からすれば日頃から励んでいるという事である。

 

「いや、此処は危険な場所なので自分の命ぐらいは守れるようにしただけだ。」

 

「それにしては、よくやったもんだ。」

にとりはもう話す事をやめてしまったらしい。それとも話すをするだけ次元が違うので話が噛み合わないと感じたのか。その事には全く興味を示さない青年はにとりが何処にいるかなど知らなかった。青年は暫くこの川と近くの森林の穏やかな空気に触れて心が浄化されるような高揚感に浸る時間を過ごした。青年の頬を撫でる風は何処か暑苦しかった。

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