青年放浪記   作:mZu

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第13話

至って普通の季節であった。

 

寒くも暑くもない秋という名のついた時期であった。そんな穏やかな時期には似合わない紅い霧に包まれた。ぼんやりとした昼と夜を繰り返す幻想郷。

 

その元凶を調べる為、一人向かうもの。偶々見かけて興味本意で近づく二人。

 

その線が結ばれた先に見えたのは人を寄せ付けないように建設された一つの血塗りの館。湖の真ん中にある孤島で窓が少なく人が住んでいるように思えなかった。

 

 

少し時間は遡る。

 

「霧が濃いところを見つけたから行ってみないか。」

魔理沙はぐったりとしている青年と同じくぐったりしている金髪の少女に話しかけた。その傍若無人は慣れている場所だからこそ成し得た事であろう。青年は頭に被せた魔道書をどかして長机に置く。寝起きと言う割には正確に書物を置いた。

 

「少しは状況を見なさい。」

アリスは的確に正論を放ち、魔理沙は仕方がなく黙ることしか出来なかった。青年はまどろみの中で呼吸していた。昼夜が逆転しているわけでもないが、身体を酷使しているのは事実であった。昼は剣を使った魔法の出力の調整の練習。それから一休みして魔道書の解読を何日か続けていた。アリスはともかく、青年にとっては常人に耐えうる事も出来ないような苦痛である。そして、貴重な睡眠の時間を邪魔された。

 

「アリス、別に大丈夫だ。」

青年は寝ぼけた顔をしながらも会話できるまでに回復しているらしい。アリスはホッとした表情を浮かべてから、魔理沙の要件を聞き始めた。魔理沙はちょっとだけ恐怖を感じているのは言うまでもない。

 

「それで霧の出所が分かったと言うのは本当かしら?」

今、空には薔薇のような紅い色をしている。残酷な言い方をすると血の色と言うのか。そして人間が襲われる事例が増えているらしい。アリスと青年にとってはどこ吹く風のようでその事は後で魔理沙から聞いた。

 

「そうだぜ。人里の西側に大きな湖があるのは覚えているか?」

青年は魔理沙とアリスの会話から頭の中で簡易的な地図を作り出していた。

 

「ええ、流石に覚えているわよ。」

アリスはそれが、とばかりに相槌をうつ。実際に困っている様子はなかったので興味がないと言うのが正しい表現の仕方であると感じる。

 

「そこに実は大きな館が建っているらしい。って事で行ってみないか。」

魔理沙にはどうしても抑えられないものがあるようで何となく同行者を集めようとした。旅行気分であった。アリスはその発言にため息をつくだけで何とも思ってはいなそうだった。

 

「そんなの行くわけないでしょう。」

アリスには簡単に反対された。魔理沙としては後のない状況となり、半ば強引に青年が連れていかれたと言うわけである。それから魔理沙はどうにかアリスをどうにか連れて行こうとしたが、全てアリスには関係のない事で態度は変わらなかった。

 

 

そんなこんなで魔理沙に強引に箒に乗せられた青年だが、別に困っているわけでもなかった。

 

青年は眠たいながらに剣に光を念じていた。紅い霧に覆われた現状の幻想郷は日中とは思うが薄暗かった。全ては霧が日光を遮断している為だろう。青年は魔理沙の箒の前で両手で剣を持って寝転んでいる。何ともやる気のない様子だが、それなりの光は灯していた。そんな時だった。氷の弾が魔理沙を襲ったのは。シュッ、と何処からともなく飛んできた弾に魔理沙は驚いて箒を乱暴にその場に止める。青年は何食わぬ顔でその場に止まる。青年にとってそのような事は分かっていたらしいので指で静かにその方向を指した。

 

「はっはっは、どうだ。」

馬鹿なのか、単なる囮なのか大きな声を出していた。此処からは見えにくいので魔理沙に下がるように青年は要求した。何か分からない以上は様子を見てみるものだ。魔理沙は巧みな箒の操作でいつのまにか辿り着いた湖の水面まで近づいた。霧が濃く、かなり暗くなっていたわけだが、青い服というのは案外見つけやすかった。

 

「何者だ?」

魔理沙は興味があるのか、それとも襲撃に苛立っているのかとりあえず大きな声で話し始めた。

 

「チルノだ!どうだ、参ったか。」

尚も、高笑いするので魔理沙は逆に冷静になった。普通はもっと声を荒だてたりするだろう。青年は初めての事なので静かにしていた。それよりも怠そうにしているので何か話しそうな気はしない。

 

「いや、待て。お前は何をしたのか分かっているのか。」

魔理沙は何故か楽しげに話していた。青年にはよく分かっていないが、そもそも館に行こうとしていただけなので子供の遊びに付き合ってやるだけかもしれない。別に急いでいるわけでもないしな、と青年は思った。

 

「丁度通りかかったのでちょっと手荒い歓迎だよ。」

その青い服を着ている背中に氷で出来た無意味に思える翼が浮いていた。体の動きとは関係なく動いているのでそうなのだろう。容貌は子供である。森であった子とあまり変わらないくらいの背丈だと青年は感じた。あの時の衝撃はあるのでとても優しそうに思える。

 

「おもしれぇ。ちょっと遊んでやるか。」

魔理沙はそう言うと、カードを取り出した。青年にはよく分からなかったが、魔理沙の箒が不規則に動き出したので戦闘でも始まるのだろうと推測した。

 

「俺は後ろに移動したほうがいいか?」

青年は何となく聞いてみた。気遣いと言うよりかは自身の安全を優先したと言える。

 

「いや、それは必要ないぜ。所詮はごっこ遊びだからな。」

青年はその魔理沙の発言に疑いの目を向けていた。その理由はそのうち分かる。魔理沙はカードを投げるとその場で煙を上げる。その中から何とも綺麗な弾が現れた。

 

黄色や赤色などの華美な色をした弾は確かに鮮やかだった。そして流星のように湖へと降り注いだ。相手としても反撃に出たようで水色の氷のような弾が魔理沙の元へと現れた。

 

魔理沙は箒を巧みに扱い、弾と弾の間を通り抜けた。その脅威というのはこの身で味わないといけないと感じるほど怖かった。

 

何たってどの物質で出来ているかしれないものを触ろうと思えるだろうか。それにまだ慣れない箒の上では青年がしっかりと箒の柄を掴む事にしか出来なかった。しかし弾の綺麗な景色は見ているので案外余裕はあるのだと思われる。

 

「やっぱり弾幕ごっこは楽しいな。」

魔理沙は立ち上がり、スカートを捲し上げる。俺は男だ、と思いながらも後ろから緑色の光線が発射されているのがみて取れた。これも弾幕の類に違いないと後で聞いてみる事にした。相手から何も返しが来ないのを見て高度を下げた魔理沙はその惨状を見ていた。青い服を着ていた子供が湖で浮かんでいた。青年は助けてあげようと手を伸ばす。

 

「そこまで気遣う必要もねぇぜ。妖精だから何もかも忘れてまた向かってくるさ。」

魔理沙はそう言って箒を動かし始めると青年の手は僅かのところで届かなかった。青年は妖精という単語が気になり、聞いてみる。

 

「妖精か?子供みたいにいたずら好きだから、ちょっかい出されたら素直に相手する事だな。後々面倒になる。」

魔理沙はまるで体験したことがあるかのような話していた。青年はそうなのかと相槌をうっていた。

 

「この先にその館があるからさっさと行ってみようぜ。」

魔理沙は箒の上で水面を切るように動かし始めた。青年は出来るだけ身体を箒に巻きつけて水面に当たらないようにしていた。

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