青年放浪記   作:mZu

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第131話

此処では身に刺さるような痛みのある寒さがある。夏だというのにこの寒さではまともに動くこともままならない。そして最近幻想郷の中ではその夏の暑さと冬の寒さが入り混じっているので青年は少しだけ気にするようにしていた。

 

異常気象である事には間違いないが青年は幽々子と同様にそこまで興味があるというよりかは四季の移り変わりを一身に受け止めている。紅魔館では春のような麗らかな春の陽気であり、此処では万物も凍るような寒さが続いている。

 

青年はそんな中で剣に火を灯しながらなんとなくの気分で来てみた。このような時に来る理由の場所へとたどり着いた青年は剣を鞘に納めてから扉に手をかける。やはりいつも通りでよく分からない雰囲気のある店には香霖堂という看板が書かれているがこのような変な場所に建っているので別になくてもいいと青年は思った。

 

「香霖、出来ているか?」

青年はいつも通りの声でノロノロと中に入る。何故か暖かく感じるが裏で火を焚いていると思われる。店内はとても汚く品物が散在しているが大体の場所ははっきりとしている。長物は大体店の奥に置かれている。

 

そして其処から出口に向かって雑貨があり、店主のいるカウンターには貴重品に見えるものが並んでいる。しかし今回は品物を買いに来たわけでもない。

 

「ああ、出来ているよ。とても上出来な物が仕上がったから大事に使ってほしい。」

白髪の少し遊ばせた髪型で黒縁の眼鏡をかけた香霖はこの店の工房があると思われる裏へと入っていった。青年はしばらくこの場所で待つ事にしたが新しく品物が増えているような気がするので何と無く見てみることにした。長物のある場所には棒のようなものや武器が置かれている。その置き方は乱雑で武器の扱い方を知らないかのようだが知識は向こうの方があるので青年は少し何か思っただけで何かすることはやめておいた。それから小物が置かれているところを見てみたが特に代わり映えはしない。服や皿など生活用品から何に使うのか青年にも理解出来ない物まである。

 

「済まないね、少し待たせてしまったかな。」

香霖は申し訳なさそうにしていたが青年は気がついて振り向くとゆっくりと歩いて香霖の近くに歩いて向かった。今のところ腰に携えている剣とは同じ尺で頼んだので香霖は忠実に再現してくれた。そしてついでに注文しておいたものがある。

 

「いや、気にする事はない。とても有難いと思っている。」

青年は丁寧に剣を香霖から受け取る。そしてその重量の違いに慣れようと剣を抜いてみる。鍔を親指で押してから柄を掴んで香霖から少し距離を置いた。それからほんの少しだけ刀身を眺めた。波紋は遊びのない真っ直ぐとしたもので黒く輝かしい光を反射させている。青年はその光に目を瞑りながら納めると青年は香霖の方を向いた。

 

「流石、としか言えないほどの素晴らしさだな。」

深く吸った息をゆっくりと吐き出すように放った青年の一言に香霖は落ち着いたのかホッと胸を撫で下ろしたように思える。青年はその姿を見て少しだけ微笑んだ。

 

「良かったよ。流石にこの大きさのものは初めて作ったから自信がなくてね。じゃあ早速使ってみてくれ。」

香霖は先に出ていこうとするがそう言えば、と言って分厚い上着を着てきた。そして白い袋を持って出てくる香霖を青年は扉の前で待っている事にした。

 

「君は寒くないかい?とても薄そうだよ。」

香霖は青年に声をかける。確かに服装は紅魔館の使用人の服装であるだけで他に何か服を着ているようには見えなかった。香霖からすれば普通とは言えない格好をしている。

 

「その点は大丈夫だ。俺は魔法の練習をした結果だ。」

青年は確かに特に寒そうな気はしなかった。陰の元素で青年は体を包み込んで中で火の元素を焚いている。ある意味全身カイロで包まれているような状態の青年は別にこの寒さは関係なかった。

 

「そうなのかい。随分と使いこなしているんだね。なら安心かな。」

香霖は青年の言葉を聞いて少し安心していた。この幻想郷ではこのようなことが普通であるようにも思える。いや、気にしたら負けか?

 

「それはどういう意味だ?」

青年は何と無く疑問を感じたのか聞いている。

 

「とても簡単な理由だよ。扱いが難しくなるからね。その分威力は上がるから護身用とかなら無難だと思うよ。いつ使っているのかはいつも疑問だけど。」

 

「つまり下手に使うと簡単に出てしまうという事か。」

青年は香霖の言葉から推測する。それは扱い方には何かと困るがもしかすると少数元素が使えるようになるかもしれない。青年はそのような事を考えながら外へと出てきた。

 

「そうだよ。君なら簡単にやれそうかな。」

 

「それではその周りを暖めてみようか。」

青年は香霖に作ってもらった剣を鞘から抜くと何か暖かくなりそうなものを思い出した。それは焚き火とかしたかったが一番小さく出来そうなものを念じてみる事にした。青年は黒い石を合わせた刀身に熱を籠らせる。その近くには結露したかのように水滴がついていく。その熱はどのくらいかは分からないが青年は何と無く触ってみることにした。刀身にそっと触れた左手からは程々の熱が伝わってくる。我慢出来ないのですぐに手を離す。

 

「暖かいね。」

香霖は青年の剣の近くで両手を出して体を温めようとしていた。青年はそれから念じる事をやめて剣を柄の中に納めていた。慣れないものだと思ったが青年は意外とすんなりと魔法を使えたのでそれはそれでいいかと安易的に考えてみる事にした。

 

「さて、パチュリーに報告しようと思う。」

 

「そうすると良いよ。其処からは君達で頑張ってほしい。」

香霖はそれだけを言うと分厚い上着の懐から一尺ほどの長さのもの二本を出す。青年は何も言わずに受け取ると香霖からの説明を聞く。

 

「一本は石だけで作っている。もう一本はそれから軽くするために合金という形で作ってみたんだ。」

 

「それはとても有り難い。パチュリーと一緒に研究に励む事にしよう。」

香霖は青年に何か求めたりするような事はない。別にそのような事はするような気はないらしい。青年は手を振ってこの場所から離れる。】

 

柑橘の爽やかな香りがする。そしてロウソクのようなもので灯された図書館では青年は必死に魔道書を読み漁っていた。最近時間感覚も狂ってきたようでいつの間にか朝日を浴びるような時間になることもしばしばあるようなぐらいのめり込んでいる。

 

「ねぇ、いきなりで何だけど貴方も大分魔法には慣れたのよね。」

紫色の髪をした綺麗な毛並みのパチュリーは横になっている青年に話しかける。ソファーというものに頼ることの無くなった青年は空中に浮きながら魔道書を片腹に読みながらメモを取っていた。その量は前の比ではない。

 

「そうだろうな。今はこのような風になっている。」

青年は何の気なしに返事をした。書物を読んでいるからか少し気の抜けた話を聞いているのかどうかは判別付かない感じだ。パチュリーは一旦魔道書を閉じたので青年は床に降りてから話を聞く事にした。青年はパチュリーのいつもいる机の横に近づく。

 

「ところで前に聞いたんだけど剣は変えたのよね。それでそんなに変わるものなのかしら。」

パチュリーには剣は変えたことは伝えたがあまり興味はなさそうなので青年は伝えるような事はなく何日か過ごしていた。

 

「材質が大きく変わったからな。パチュリーには話していないからそうなるのも不思議ではないだろう。」

青年は平然とした態度でサラサラと言葉を並べた。パチュリーからすればそのような事は知らないがたまたま調子が悪い時に青年が話していたのを思い出して複雑な気持ちになる。

 

「あの時はごめんなさいね。」

 

「俺にはよく分からないが気にならないので大きな事ではなかったのだろう。」

青年はパチュリーの体調が悪かったというのは感じておらず反応が悪かったのですぐに試していたという事になる。それは側から見れば新品のものを試す子供かのように見えるのだろう。それぐらいの勢いで外へと飛び出していた。

 

「そう。それで何に変わったのかしら。」

 

「魔法鋼だ。香霖がなんとか作り上げたからもしかすると不良品かもしれないがその時はその時で何とかしよう。」

パチュリーはその瞬時にあの後でどこに行ったかを察した。レミリアが従者に与えた休暇に守矢神社のある妖怪の山を訪れた帰りに拾ったのが黒い石だった。その石は胡散臭い店主によって魔法鋼とされているが実際のところはどこまで変わるのかは分かっているわけではない。

 

パチュリーもれっきとした立派な魔女であるが人には苦手な事もある。それが調合というものだ。簡単に説明すれば魔法道具を作るために必要な作業のことだが薬品の製造や植物の栽培も含まれている。実は紅魔館の庭にはそのような植物が植えられているが青年は興味がないので知らない。

 

「魔法鋼ね。少し見せてくれないかしら。」

パチュリーはどうやら気になるらしく青年に剣を見せてもらう事を頼んだ。青年は二つ返事で答えると腰の付いているベルトから剣を取り出して鞘ごと渡した。刀身に触らせる気はないという意識の表れだがパチュリーはそのあたりの知識はないので青年の意図など伝わるような事はない。パチュリーは青年から受け取った剣の重さを感じながら左手で柄に触る。それから抜いて色合いや魔力の大きさを感じるとパチュリーは剣を音を立てて鞘に納めた。

 

「ところで魔法陣なんかは何か変わっているようなところはあるのか?」

青年はパチュリーから受け取った剣をさらりとベルトに戻す。対してパチュリーは重労働をした後のようになっていた。

 

「いえ、きっと店主の計らいで何も変えようにしているのね。」

パチュリーは椅子に座って机にへばりついているので青年はソファーの方に移動して様子を見る事にした。

 

「それで刀身についてはどのような構造をしているんだ?」

青年は好奇心からなのかパチュリーに聞いている。対するパチュリーはあまり話す気も起こらないようだ。それだけ疲れているというなら仕方がないが其処まで重たいとは青年は思っていなかった。美鈴の所で午前中は素振りをしていることもあるのでそれが活きたらしい。

 

「直線の間に交わるような感覚を思い浮かべたら一番近くなるわよ。」

あまり話す事もないのかそれとも自分でいい加減見えるようにしてほしいのかのどちらかだろうと青年は思う事にした。そうしておけば何かと考える量は必然的に減らせる。しかし一直線という意味がどのように作用しているかは分からないので青年派また学ぶ必要がありそうだ。青年もそのうちここにあるすべての魔道書を一通り読み終えそうなのである。

 

「要は使って慣れよ、とそういう事を言いたいのか。俺が今できる限り尽力してみよう。」

青年はパチュリーのいる場所から離れた図書館の中の空間に出てきた。其処でいつも青年は魔法関連の練習をしてはいつも何かしらの発見をしたりしている。魔法の効率を良くしたり発動の仕方を変えたりできる事は全てやっている感じだ。

 

パチュリーは青年の周りに箱のような結界を張っておいた。もうカーペットが焼けるような比ではない魔法まで繰り出し始めるのでパチュリーも細心の注意を払っているわけである。そんな訳で青年は剣を持って大きな魔法を出そうと溶岩を思い浮かべてみるわけだが前の比ではないほど炎が舞い上がる。その火は二階に届きそうなほどの大きさのパチュリーの結界にほんの少し当たるほどでそれを見ている方も最初こそは驚いていた。急に威力が大幅に上がったのでそうなるのは仕方がないがもう既にやはり前回とは違う。

 

「ねぇ、お兄さん。遊ぼ。」

その主人の妹に当たる金髪のくしゃくしゃな髪をして飛べるのかどうか分からない宝石のような輝きを放つものを吊り下げた翼をしているフランドール・スカーレットは別に今の状況を見ても何とも思わないらしい。その辺りは流石は吸血鬼と言うのか力が強いのだと青年は思った。もちろん話しかけられたので念じるのを辞めたわけだがフランは何処か不満そうにしていた。

 

「よし、分かった。トランプでもやるか。」

青年は魔法だけを通さない結界から出てフランと話した。

 

「何でやめたの?」

遊んでほしいのか見ていたいのかどちらかと言われるときっと見ていたいのであろうと青年は思った。

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