青年放浪記   作:mZu

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第132話

紅魔館の使用人の服装をしている青年は白いシャツに赤いベストを羽織った巻きスカートのフランドール・スカーレットを抱き上げてパチュリーの近くへと向かう事にした。

 

文句は言うもののその間は何故か落ち着いているフランドールだがこれでもまだ能力の制御は出来ていなかったりするので恐怖でしかないというのは言うまでもない。青年はそれでも抱き上げていられる確かな理由があるので心配する要素は皆無というわけである。

 

「パチュリー、遊びたいそうだ。」

青年はさらりと言うがその時にあからさまに暴れ始めた。青年は一旦自分の手の中で落ち着かせるがそんな簡単に行くはずもない。姉よりも優れている妹を持つという事はこういう事である。取り敢えず青年はソファーにフランドールを座らせた。

 

「嫌だ、お兄さんと遊びたい。」

駄々をこね始めるフランドールを青年は手には負えないらしくなぜかを聞いてみる事にした。

 

「お兄さんが魔法が凄かったから見に来ただけよ。それなのに辞めちゃったんだから。」

フランドールはそのように言う。青年はそれは仕方がないと思った。人に話しかけられてそれで集中が切れてしまうのは青年の弱点でもある。理由はすぐ答えようとするからだ。逆にこちらから話しかける場合は特に問題はない。

 

「俺の魔法を見たかったということか。」

 

「そうだよ。」

青年はそれは嬉しいことではあるがそれはそれで困る事もある。パチュリーの結界は人は通せるようにしてあるので誰にも迷惑をかけようとしないために人が来たら止めるようにしている。それなら通さなければ良いのではないかと思うがパチュリーでも突発的な青年の行動は読めないところがありいちいち解除するのが面倒であるのでこのような形になっている。その事はフランドールは知らないので不満を抱くという事である。青年は目の前の少女と視線を合わせるとゆっくりと話す。

 

「俺は誰にも危害を加えないようにしている。例え妹様でもな。いくら体が頑丈だからと言って怪我するおそれのある事をさせたくない。俺は傷つけたいから魔法を使っているのではない事をわかって欲しい。」

 

「分かった。でも私のことはフランって呼んで!」

 

「フラン、分かったか?」

 

「はい。」

元気よく返事したフランドールに対して青年は一安心した。あれ以上暴れられると流石にパチュリーの手を貸してもらう必要がある。その時は本当に最終手段であるので少々手荒い手段でフランドールを倒すことがあるので青年は見ていたくないという事である。その点も含まれている事は青年しか感じるような事はないだろう。

 

「それで魔法を見たいというなら訓練も兼ねて試合をしよう。」

青年の提案にパッ、と目を光らせたフランドールだが瞬時にいつも通りの感じに戻った。少し前のことでもフラッシュバックしているのだろうと思っている。

 

「お兄さん、それで良いの?」

フランドールは青年を心配そうに見つめる。初めて会った時は青年はフランドールに比べてとても弱くて軽々しく吹き飛ばされた記憶がある。青年もあの時の記憶は今でも思い出す事はあるがそれがもう足枷になるような事はなかった。

 

それだけ時間という薬が青年の傷を癒したという事である。それに前よりかは穏やかな性格をしているので別に思い出すような事もない。

 

「ああ。試したい事もある。良かったらという形だが良いだろうか。」

青年は少し申し訳なさそうに話していた。フランドールは少しだけ考えた後にゆっくりとソファーから立ち上がった。青年は同じようにいつも通りの立ち姿に戻ると踵を返して図書館の広間へと向かった。青年はもう一度振り向くとその目の前にはフランドールが立っている。

 

そしてフランドールの武器であるレーヴァテインを出していた。その間合いはとても長いが大体は魔法である。持ち手くらいしか実態があるわけでもなかった。青年が柄に手を添えてその時を待っていた。2人の間には一刀足では届かない距離がある。フランドールは軽く地面を蹴ると瞬時にその間合いを詰めてきた。流石は吸血鬼という速さではあるが別に青年は止められないわけではなかった。それはフランドールが手加減をしているからということでもない。美鈴との修練の中で磨き上げた実力と言われるものである。

 

青年は持っている剣にフランドールのレーヴァテインが止められていたが通り抜けていった。フランドールが止めたからではなくて青年の持っている剣が魔法を斬ったのである。フランドールは突然斬られたので体勢を元通りにする事はできなかった。青年の右足に足をすくわれてその場で転んでしまった。青年は少しだけまた距離をあける。その距離はどれくらいか立ち上がるまでなのでそこまで距離が離れているような事はなかった。

 

「お兄さん、何したの?」

 

「別に。日の元素で魔法そのものを分散させた。」

青年は簡素に答える。フランドールはそのような魔法の元素の話は分かっていないので到底理解出来るような内容ではない。

 

「面白いよね。その魔法。」

フランドールはほとんど全力で地面を蹴り上げて腰を回してレーヴァテインを青年に当てようとする。その速さ、凶悪さはあの時のものだが青年には今ひとつ効果はないらしい。フランドールのレーヴァテインは見事に弾かれた。青年の剣の方が勝ったのである。

 

「痛たた、今度は何なの。」

もう呆れているのかフランドールは興味があるようで聞いてきていた。青年は余裕そうな表情をしている。

 

「今度は衝撃波というものだ。風と月の元素でうまく作り上げてみた。」

その出来はフランドールの一撃を凌ぐほどなので十分な性能である事には間違いないらしい。青年は細らしげにしているがフランドールはつまらなさそうにしていた。青年は真面目に勝負をするような事はなかった。それは真剣でやればフランドールとは対抗出来ないからだ。

 

まだそれだけの力の差があるのは種族関係から容易に分かる。青年はわざと相手を本気にさせないように戦っている。其処で疲労を始めた頃にとどめを刺しにいくようにしている。それだけ幻想郷の人物との差を青年は痛感しているという事である。

 

「これで終わりとしよう。」

ゆっくりとした青年の話はフランドールは不満を申し立てるだけだった。

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