すごろくは投げられた、それこそ誰もがBETしているギャンブルのためのもので誰が稼げるのか、そして誰の金が吸い取られるのか、そしてそれを誰が所有するのか、人間の喉から手が出る感情が混沌としている場では結果などコロコロ変わる。
そのようなルーレットのような場所で赤か黒を予想するよりも番号で選び始める青年がいた。少しくすんだ赤い色のジャージで中には灰色のシャツを着ている。それから掻き上げただけの前髪と後ろできっちりと結んである髪を揺らしながらゆっくりと場所を使っている。
トン、トン、青年が足で奏でる音がこの場所を包んでいた。
「これは何なんですか?」
外に居た緑色のポニーテールの髪型でゴスロリ調のドレスを着用している鍵山 雛はあまりの変わり様に頭の中は混乱していたと思われる。しかし青年はとてつもない自信からとんでもないことを口走る。
「神々の遊戯だよ。」
と。何処かネジを外れたロボットのような状況であるので其処にいる二人にも訳のわからないようである。だがここに居ては危険であるというのはよく分かるらしく二人は母屋へと移動した。そしてその後ろで準備をしていた神奈子は青年と一戦やるらしく御柱を一本準備している。
青年は振り向きながらその事を理解していたようだ。青年も剣を鞘から抜いてゆっくりと構えた。それがどの様になるのかはもう別にどうでも良い。この二人には種族など関係ない、それからどの様な力の差があってもそれがこの二人に提示されるのかは諏訪子による。
「さ、早めに始めようか。」
神奈子はもう既に投げていた。奇襲や不意打ちとも言えるが青年も準備をしていないわけではない。青年はゆっくりと剣を動かした。
ゆっくりとした時間の中手間残像が見える様に揺り動かす青年には何処か見えている様で見えてなどいなかった。しかしその正確な一撃には神奈子でさえ驚くものである。
御柱は青年の前で動きを止めた。神奈子の神力をふんだんに使っているので普通の木よりも固く重たくなっている。それが神の威光と言わんばかりに。
「俺は今は暴れている。それが分かってないようなら三流ということだ、神奈子さん。」
「よく言うね。一本そうした所で腕試しな事を忘れている。神の前にひれ伏すが良い。」
神奈子の左右には御柱が現れていた。その姿はまさしくとも言えるが何か砲撃でもしてきそうな気がする。青年はその直感を信じてみることにした。
青年は神奈子が動くまでの時間を待つ事にしていた。その間に何かを出来ているイメージを頭の中で作り上げる。ギーンと高い音が周りに響かせているような音がしている。それから手のひらには強い衝撃を感じている。そして目の前には大きく開けている。そのイメージを大きく目の前に展開した。
「それは難しいだろう。」
青年は大きく目を見開いた。それがその先にある光線を青年は一本の剣で大きく斬り裂いていた。そして耳鳴りするような音が辺りには伝わる。
それから柄の擦れるような感覚が手の中で起こっていた。其処から目の前の視界は大きく開いている。青い光線であったはずのものだがそれが見事にそうなっている。
青年はゆっくりと神奈子の方へと歩いて行った。その速さは決して早くはない。それこそ歩いているよりも遅いくらいだ。人間としてのリミッターを外れたような実力を見せる青年には神であるはずの神奈子にも分かるほどだった。
「やるな。だがここで終わりだ。」
神奈子は其処で止めてしまった。理由は簡単に言えばその力の大きさが大き過ぎる。地上ではすることが出来ないほど、それだが弾幕勝負となれば青年が大きく不利となる。本来は少女同士の遊びである弾幕だがこのような時でも扱われる。魔力の弾であるだけなので地上に当たればその中で消えて周りと混じってしまう。が、それが出来るようなほど青年は練習を積んできているわけではない。その事は見なくても分かる事なのである。
「どうした。」
その青年の声は物悲しそうなものだった。それこそ目の前で餌を奪われた犬のような表情をしているのは神奈子からは丸見えだった。
「空中でやるなら続きをしよう。出来るか。」
「いや、やめておく。」
青年は急に自信を失ったかのようにしていた。神奈子もその変わり方は予想外であるらしいがその事も見込んでいた所はある。そして何か悩みがあると言う事も、それが暴発したのだと神奈子はふと感じた。そして物悲しいとも。
「それならこの勝負は諏訪子に預けることにしよう。決着はまた次の機会だ。」
神奈子はそれだけを伝えて本殿へと戻っていた。青年はその後ろについている注連縄を見つめながらゆっくりと剣を鞘の中に納めた。それから体の中の息を出して心を落ち着かせていた。其処に終わったのだろうと二人は近くに近寄る。
「凄かったわ。」
「とても素敵です。」
二人の上機嫌なのとは裏腹に青年は見るからに気分を落としていた。それは神奈子が確実に手を抜いていると分かったこと。それからここで辞めたのは助長させるためであること。そして最後に自分自身の力が制御できていないと言うこと。それが青年の中でぐるぐると回っている。その速さは遅かったり速かったりしてもはや掴み取るような事は出来そうになかった。それから解放された時には青年はどうなるのではないかと自分で閉じているとも考えていた。
「手は抜かれていた。まだ人間として見られていたのだろう。」
青年はズボンからポケットからから出した煙草を唇に咥えてからゆっくりと踵を返した。それを二人は追いかけるような事もできなかった。青年は蔑まれながら道の真ん中を通って山道を降りていった。別に誰とも当たるような事はしなかったのは青年から漂う不穏な空気からなのだろうがそれにしても限度というものがある。
その先には何が見えているのかは誰にも分からないが良からぬ方向へと向いているのは確かな事である。誰にもそれを止める事はできない。それこそ幻想郷で名の知れた人物でもない限りは誰も止めないのだろう。