青年放浪記   作:mZu

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第144話

いつも通りのだらけた赤いジャージに着替えて青年は柄を触ってから意識をそこに持っていった。音を吸い取るような静かな佇まいには後ろにいた赤髪の中華の民族衣装を着用している美鈴は何も言うような事はしなかった。いや、何か言えるような雰囲気を作ろうとしない青年がその通りにしているだけだった。

 

青年は頭の中でイメージする。体の周りには陰の元素で包み込ませて中で風の元素によって上昇気流を起こさせる。フワッ、と浮き上がる感覚を感じてから一気に上へと向かって飛び上がった。その速さはいつもの比ではない。それは剣の性能が良くなったと言うことでもあるが青年がまだ使いこなせていないと言う意味でもあった。その速さには青年でさえ制御できない部分があってすぐに限界を超える高度まで登ってしまった。

 

「此処は?」

青年はゆっくりと現状を把握した。下には白いモクモクとしたものがあり上には今までに見たことのないようなギラギラとした太陽が存在していた。何処なのかまた、変な場所へとたどり着いたように感じる。そして急速に寒くなっていて凍えるほどだった。

 

青年には結局どのような空間なのか分からず火の元素を集めて使ってみる事にした。風の巻き起こる青年の周りには火のような球が燃えてからすぐに消えた。今の青年にはそのような使い方しかできなかった。結局何処なのか、それは近くにいる人に聞いてみる事にした。

 

「そこの人、ここはどこか知っているか。」

青年は目の前にいた不思議そうな服装をして青年と同じく気怠そうにしている女性を見ていた。フリルのついた天女の羽衣のような白い帯を宙に浮かせて白を基調した赤いフリルのついた服装で長めのスカートをはいている。見た目は何処か気品のある様相をしている青年とはまた違う様子で怠そうにしているのが青年の第一印象とも言える。

 

「此処は皆様からは天界と呼ばれるものです。」

その人は面倒臭そうにしていた。話すのも面倒ということなのだろう。はぁ、とため息をつくので青年は何と無く不幸者と自称しているようだった。

 

「天界か?とても楽しそうなところとは思っていたが何もないものなのだな。」

 

「本当にそうなんですよね。」

その人はどこを見ているかよくわからない気怠そうな生きているのかどうか判断のつかない目をしていた。少しキョロキョロと動いている辺りあまり精力的ではないと言うのかどうか。

 

「俺は南雲と言うのだが、貴方は誰だ。」

青年はまた適当な偽名を名乗る。その様子は別に悪びれているわけでもないがあたかも当然かのようにしている。

「永江 衣玖というしがない天人の使いよ。」

元気もない声が青年の耳には入った。もう少しハキハキと答えるのならまだしもダラダラと話すので青年からすればもどかしい気分になる。それで何か話すのかと言えばそうでもなかったりするので仕方がなさそうに腕を組んでいた。

 

「天人の使いなのか。では此処にいるような必要はないと思うが何か邪魔だったか。」

 

「いえ、別に。」

 

「では今は何をしている。」

青年は何と無く聞いてみる事にした。

 

「比那名居 天子という方を探している途中です。ですがどこに居るのか今の所見つからないんです。」

 

「そうなのか。して、その方はどのような姿をしている。」

青年は何と無く協力する気はないが天人という言葉に引き寄せられている。一度見てみたいと思ったのだろう。青年の興味が尽きるような事はない。

 

「見つけてくれるのでしたら言いましょう。」

衣玖から発せられたやる気のない使いらしくない声には青年には理解できないところが多い。使いとして仕事を全うしようとはしていないのが青年には気になるらしい。

 

「なら、貴方にも来て欲しい。間違えると面倒だろう。」

 

「ええ、そうさせていただきましょう。」

そこでやっと礼儀正しい部分が見えたので背年は関係のないことのはずなのに感心したらしい。しかしその真意はどこにあるのかは知らない。

 

「なら、此処には居なさそうだし下まで降りるか。」

青年にもその後には何が起こるのかは知らなかった。自分の魔法の不調がどのように作用するのかを。

 

地上へと降りた青年と永江 衣玖は少し騒がしい幻想郷の中心とも言える人里の東側へと来ていた。人通りは中心ほどは多くはないが寂しい雰囲気は受けないぐらいの人の多さではある。その人たちには驚かせてしまったのかもしれないが青年は言い知れぬ誰にも言えない怒りをぶつけていた。

 

「空から人が!ご無事ですか。」

ある一人の班長らしき人が青年の目名前に現れた。いかつい表情はしていないが確かな目を持っている事は青年でも知れた。さわやかな風になびかせている茶色気味の黒髪がクールなものである。

 

「別に気にする事はない。して、とても騒がしいが何かあったのか。」

青年はその班長らしき人に話しかける。別に何か一大事でもなければそのような事は起こらないだろうという単純な青年の推測である。その後ろにいた二、三人は少し落ち着かないようでその場で右往左往していた。

 

「これはお見苦しいところを見せてしまった。実は人里内で暴れているのを発見して事情を聞こうと思っていたのだがどうにも足取りが掴めていないんだ。」

班長らしき人は青年に明るい元気のある声で話した。元々そのような声の出し方をしている人なのかもしれない。

 

「して、その姿は分かるのか。」

 

「ええ、一応。何やら黒い帽子に桃の飾りをしている方で全体的に青色の服装のようです。それから口調がどうやら攻撃的なようなので気をつけて欲しいと。」

 

「衣玖、それであっているのか。」

 

「ええ。」

 

「関係者なのか?」

班長は少し疑いの目をしていた。それはそうだろうと青年は思ってしまった。

 

「総領娘様は天人に在られます。無礼な発言代わりに私が謝罪致します。」

 

「だそうだ。探してから話を聞く事にしよう。」

 

「ところでアンタは何者だ?妙に落ち着いているが。」

 

「落ち着いているのは個人の自由だ。それは失礼であろう。」

 

「それは済まなかった。」

 

「別に気にしていない。が、早めに探すのが得策だろう。」

青年はスタスタと見慣れない人里の中に入っていった。まだ見ぬ天人を人目を見ようという単純な理由だ。

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