青年放浪記   作:mZu

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第146話

フリルの付いた天女の羽衣に黒い丸帽子を被った永江 衣玖は急にぼさついた黒髪の青年の前に出て極光のような天候を持つ比那名居 天子に話しかけている。

 

二人は確かに天人でありその関係者であるのは間違いないがまるで二人は顔の知らないもの同士のように思える。終わりそうもない話を青年はゆっくりと眺めながら少し後ろへと歩いていた。

 

其処には自警隊として人里の警備を行なっている喜助の率いる隊が其処で集まっていた。軽くあしらうようにしてその場は後にした青年なのだが何処か悲しそうにしているのが印象的なのである。

 

「そんな事は言わずに。早めに行きましょう。」

 

「嫌よ。」

 

「そんなわがままは通りませんよ。」

衣玖は必死に弁明しているが天子は一向に耳に入れようとしないのでとても大変そうにしているのは青年にもよく分かるがらちがあかないの確か。

 

その理由は容易に分かる。全くと言って衣玖は天子には寄り添っていない。それで話を聞けというのは筋の通らない話である。

 

「もう帰りなさい。」

多分に使いの者にはこのようにされているのだろうと青年は思った。それが何の意味を持つのかは後でわかると思うとして今は天子がどのような理由でこの場所へと降り立つ事にしたのかの理由を知る必要がある。

 

青年は今は静観して時間が経つのを待っていた。それがどのようになろうともその時に対応すればいい、その時に何とか出来る範囲であるなら。

 

「いいえ、それは出来ません。さ、早く。」

 

「もう、うるさいわ。アンタも他の使いも全くもって使い物にならないわ。」

天子は急に声を荒げ始めたがそれが本音というものなのだろう。青年は口の中に含んでいた紫煙を吐き出してすぐに唇で咥えた。その時に灰はパパッ、と払っておいている。本当は袋の中にしたいがそれこそ箱を持ってくる必要があるので青年は持ち運びぶような事はしなかった。これからその内河童に作ってもらおうかと考えていた。

 

「アンタ達はいつもそうやってこの私を除け者扱いをして。本当は話しかけたいとも思っていないんでしょう。」

これはどうすれば良いのか、青年は疑問に思い始めた。左手で腹をさすっているが青年の一撃は流石に痛かったらしい。青年は何となく関係ないがそう思った。衣玖は困り果てたようで何か物を言う事はすぐには出来なかった。

 

「しかし、このままでは天人の名折れ。それでも宜しいのですか。」

 

「そのような扱っているからそうなるんでしょうが。」

怒気のこもった声には少し身をたじろがせる衣玖だがこれは自業自得とも言える。衣玖には辛い役だが天人として扱ってくれないのが気になるのだろう。青年は思った通りで口は悪いし高圧的なのだがこれは天子の方が良さそうに思える。それで起こし大変なら傍迷惑なものではある。だが青年は別に責めるようなつもりはなかった。それなりに楽しめたからだ。

 

「いいえ、私はそのようにはしておりません。」

 

「もう良いわ。退きなさい。」

天子はズカズカと歩いて衣玖の肩を強く押して道を開けた。その先には右手に持っている黒い刀身の剣を持っている青年がいる。

 

歩いていた脚が段々と速くなり神速のような風を断ち切るその速さには青年も軽く避けるような事はできなかった。弾かれそうになって初めて青年が体勢を崩したところである。

 

其処で天子はすかさず一撃を見舞うがそれは読めれていたらしく左手で刀身を支えて青年は受け止めた後で軽い身のこなしで避けた。

 

「急に来るな。」

青年は怒気のようなものは見せようとはしなかった。きっと同情しているからそれで表には出さないようにしているのだろう。青年は唇を動かして歯で煙草を咥えていた。その目はどこか本気のように思える。

 

「それは良いじゃない。楽しいでしょう。」

 

「わがままなものだ。自分が楽しいから相手も楽しいとは限らない、それだけは覚えていろ。」

 

「そうね。分かったわ。」

天子はどこか諦めたようで少し衣玖と話している時よりかは落ち着いていると思われる。それがどのようになるのかは知らないが青年は軽く受け止めていた。

 

青年は一旦休憩とばかりに切っ先を地面に向けると左手で煙草を掴ん紫煙を吐き出していた。そして白い巻き紙で包まれた先端から煙の出ているものを歯で咥えた。其処までの一連の動作を静観していた天子だがあることに気づく。別に攻めても良かったと言うことである。

 

「アンタの言う通り私だけが楽しいと言うわけにはいかなようね。」

 

「だろうな。」

青年はとても軽かった。何も考えていないようで何か手を打っているかのようである意味その人は強かった。

 

「なら、もうやめてしまっても良いわね。」

 

「別に。やる、やらないは勝手だ。貴方はどうする。」

青年は一回は消えかけた火を再度燃え上がらせたのは分かっているのだろうかそれとも無自覚なのかは分からないが口角は自然と上がっていた。それに合わせて天子も不敵な笑みをこぼして青年に対抗するように見つめていた。

 

「やるわよ。そう来ないと面白くないもの。」

 

「そうか。なら姑息な手段はやめろ。」

青年は不意に落としたように左腰から剣を抜くと後ろから来ていた石を止めながら回転を止めてその場に落とした。荒削りで青年に当たる予定であった場所はとても鋭くしてある。

 

そして注連縄が付いているのできっと天子の独特の能力であるようだ。青年はそんな事を思いながら横目に天子を様子を見ていた。驚いたと言うよりかは期待通りであるらしく天子は何か大きなアクションを起こしたわけではなかった。

 

「そうね。なら私からはアンタにあるものを贈るわ。」

天子は一気に勝負を決めたいのか注連縄のついた石を青年の方に向いていた。四方八方から向かってくるので青年でさえ今回は冷静に判断しているような暇はなかった。辺りには土埃が舞う。そして青年がいた場所には多くのその石が重なっているらしくそのような造形が土煙から見えるがそれ以外の情報は全くなかった。

 

「この私の要石はどうかしら。」

天子は得意げに答えていた。

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