青年放浪記   作:mZu

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第15話

魔理沙とは別に幻想郷が霧に包まれている原因を探る者がいた。

 

その者は赤い服で袖は完全に分離していた。両側におさげを赤い紙で巻いている如何にも巫女という姿をしていた。彼女は博麗神社の巫女、博麗霊夢であった。

 

魔理沙とは違い、本気で異変を解決しようとしている彼女は主犯の命を頂かんとした気迫を持ち合わせていた。それもそうであろう。博麗の巫女として幻想郷の危機を脱しなければならない。

 

ある白黒の魔法使いは馬鹿らしく勝負を吹っかけてきた。水面ギリギリを通り過ぎる霊夢は水色の服を着た妖精に襲撃を受けた。青年が門番と対峙した終えたあたりだろうか。これまでも闇の操る程度の能力を持つルーミアや緑色の髪をした虫のような羽を持つ大妖精と会ったが問答無用でぶっ倒した。如何してこんな人が巫女をしているのか、疑問を持つくらいである。

 

「どうだ、私の力を思い知ったか?」

青服の妖精は声を出して大きく笑い転げていた。もちろん霊夢は有事の際に持ち歩いているお祓い棒を自分の左手を叩く。普通の人ならここで逃げ出すだろう。その威圧はさながら悪役のボスである。まさしく魔王とも言えようか。

 

「そうね。」

霊夢はもう止められそうになかった。理由はよく分かる。お腹が空いている。そのせいでこの時期は常時不機嫌である。

 

「ハッハッハ、もっと行くぞ!」

青服の妖精はそんな事など御構いなしだった。そのせいで自分の命が軽々しく吹き飛ばされる事を知らなかった。その時間、一瞬。青服の妖精は跡形もなく消え去った。霊夢は一つ溜め息を吐く。余りにも疲れているためか、行動は遅かった。霊夢はふよふよと門の前へと降りてきた。理由はよく分かる。あの二人がいた。

 

「よぉ、霊夢。私たちが先だったみたいだな。」

魔理沙は霊夢の姿を見るとまた一つ溜め息をついた。

 

「遊びじゃないの。」

霊夢は怒る事にさえエネルギーを使いたくないという感じだった。元凶はすぐ目の前にある。ここで気を抜いても霊夢にとってはなにも変わらない。

 

「そんな釣れない事を言うなよな。」

魔理沙は箒を担いで青年を立ち上がらせる。青年は霊夢に軽く会釈して何も話さなかった。霊夢にとってはそれは気に食わないらしい。その理由は元凶と言うのか、何と言えばいいのかどうでも良くなっていた、と言うわけでもない。そもそも理由なんてなかった、そう霊夢は思った。

 

「早めに行きましょう。」

優しく冷たく霊夢はそう言い放った。青年はこの時背筋に感じる悪寒を止める事が出来なかった。その視線がどこに向いていたかと言えば青年だった。

 

 

「タラタラしていてもしょうがないな。」

魔理沙は門を早めにくぐり抜けた。そしてその後に霊夢が興味なさそうに通り、最後に青年が恐る恐る入るだけである。

其処にはしっかりと手入れされた花園が広がっていた。魔理沙はゆっくりと小さな花々を見ながら館へと向かった。その姿は年頃の少女である。

 

その後ろを何とも思っていないのか素通りしていく霊夢。この対称的な姿を見ながら、青年は同じく魔理沙の後ろを通る。結果として霊夢が最初に入り、その後に後ろを見ながら青年が続き、最後に駆け足気味に魔理沙が入った。

 

その中は未開の館、血塗りの外装から中を覗くと紅で統一されたカーペットが敷かれた大きな広間がある。奥には曲線を描いた階段があり、その上に三人から見て左右に続く階段と真ん中に扉があった。階段を下りながら三人を見つめる女性が一人。

 

ここからは銀髪のメイドであることしか分からなかった。青を基調としたさっぱりとした服装であった。脚にヒールを履いているのかわざと音を鳴らしてゆっくりと階段を下りてきていた。

 

「あんたは誰?」

霊夢はそのメイドに話しかける。

 

「私は十六夜 咲夜と申します。ここでメイド長をしております。」

咲夜と名乗ったメイドは階段から忽然と姿が消えた。

 

そして三人の後ろで大きく扉が閉まる音がした。魔理沙は後ろを向いたが、二人は何も反応を示さなかった。理由としては目の前にそのメイドが居たからだ。魔理沙だけはどうしてしまったのか不思議そうにしていた。

 

「霊夢、先に左に抜けていってくれないか。主犯がどこに居るか分からないなら、手分けして探すべきだ。少し時間を稼いで欲しい。そうしたら俺が前に出る。」

霊夢は目を青年に向けるだけで反応は見せなかった。

 

「メイドが出てきていい場面ではないわよ。」

霊夢はお祓い棒をメイドに向けた。青年は魔理沙の肩を叩く。そして耳打ちで魔理沙に同じような事を話した。魔理沙は首を縦に振りながら壁を背にしていた。

 

追い詰められたわけではなく、避難する方が正しいと思われる。青年は霊夢がどのようにメイドと対峙するのかを分析していた。メイドは何も持っておらず、対して霊夢はお祓い棒を持っている。しかし先ほどの現象はどのように起こるのだろうか。それさえ分かればだいぶ攻略出来るだろうと青年は感じていた。対して魔理沙は霊夢がどうするかだけを見ていた。

 

「それは如何でしょう。」

メイドはその場から消えた。そして霊夢の目の前にナイフが現れる。

 

「それなりの実力は有しているつもりです。」

そして霊夢に向かってナイフ一本投げる。霊夢は先にナイフをお祓い棒で薙ぎ払うと、最後の一本を手で掴んで後ろへと投げた。

 

どのような原理かは知らないが、一瞬でメイドの姿が消えて、ナイフが現れる。そして元の位置にメイドが立つのと同時に斜め下にナイフが投げられたのである。青年は物体を瞬時に入れ替える能力だと思った。その場にある空気をナイフと場所を移動させた。

 

操作魔法の応用の仕方次第では出来ない事もないではないか、と青年は思った。それと同時に霊夢が投げ捨てたナイフの元へと近づく。何となく興味で誘われたのか如何だか、本人でさえ知らない。

 

単純にナイフなら間合いが同じになるという理由かもしれない。リーチの長い武器は間合いが広い分、脇が甘くなる。すぐそばに寄られれば対処が出来なくなる。それなら拳の方が良さそうである。そんな武術家としての考えを持ったのかもしれない。

 

「そのようね、中々の実力だわ。」

霊夢はあの魔法らしきものを見ても驚きはしなかった。何とも不自然な事ではあるが、人の事は興味が無いのかもしれない。

 

「お嬢様は大事な用事を済ませております。お嬢様に使えるメイドとして貴女たちを排除します。」

メイドは脚を動かして間合いを詰める。霊夢もお祓い棒を右手に持ち、中段で構えた。そして投げるナイフと飛ばした札が当たり、小さく爆発した煙を断ち切り、メイドは霊夢の元へと歩み寄る。

 

霊夢は瞬時に飛び退く。その反応は巫女としての特別な力に起因しているかもしれない。メイドがナイフをそこから何本か投げる。そして後ろからメイドが近づいてくる。

 

霊夢はノールックで後ろを向いた。お祓い棒でメイドを叩く。ナイフは外を向いており、その場にいる霊夢には当たりそうもなかった。メイドは叩かれた右肩を労わるように霊夢を睨みつける。

 

「いい腕してるじゃない。人里でマジシャンをしてみたら?此処よりも儲かると思うよ。」

霊夢はここぞとばかりに挑発する。

 

「元より死んだ身。私はお嬢様以外には仕えません。」

はっきりとした主人への忠誠心を霊夢は鬱陶しそうに聞いていた。霊夢は群れを嫌う。それ故に頂点も底もない。ただ一点で存在する唯我。それが霊夢であった。

 

「あら、そう。人生、無駄にするわよ。」

霊夢が今度は攻勢に入った。袖から出した札を大量に飛ばす。

 

メイドはその場から離れる。霊夢はそれでもメイドを狙い続けた。

 

その中で適当に投げた札が青年には気になった。霊夢もどのような能力かはよく知らない。先ほどのナイフと札の衝突によって爆発が上がる理由も分からなかった。

 

何か魔力でも籠っているのだろうと青年は推測した。辺りは煙に包まれて誰の目にもどこに居るか分からなくなった。青年はその中で比較的煙の少ない壁際でナイフを集めていた。

 

理由は特にない。それほど集めているわけでもなかった。

 

其処で青年は煙草の入った箱から最後の一本を取り出すと口に咥える。そろそろ行こう、と思えたのである。だからこそ、其処からの行動は早かった。一気に霊夢と場所を交代する。

 

「此処からは俺が受ける。」

霊夢の前に出て、大きな声でメイドに宣言した。

 

魔理沙は右へ、霊夢は左へ向かうとメイドは左右のどちらかに動こうとした。それを止めたのはカーペットが焼き切れていたからだ。

 

一線先に出れば、如何なるか?それを青年が抜いた剣が示していた。メイドは二人を逃して一人の青年と対峙する。

「貴方、何者?」

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