青年放浪記   作:mZu

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第155話

赤いジャージを羽織った腰に剣を携えた青年はしばらくの間時間を潰してから中へと入った。

 

永遠亭の敷地の中に入ると其処には綺麗な庭が広がっている。周りには緑色の竹が風に揺らされていてまるで音楽でも流しているかのようだった。先ほどよりかは風は止んだらしいがまだまだ強い。そして池がありそこから反射して見えるのもまた良いものだと思った。

 

右側には永遠亭の客室らしきところが並んでいる場所があるがそのうち診療所として機能するかもしれない。青年はその両脇にあるものには目もくれずにずんずん進んでいく。

 

遠慮のない足取りだが別に気にするような人はいないのだろうと思える。青年は兎に角一番奥へと向かってガラリ、と襖を開ける。

 

「貴方ね。せめて声くらいはかけなさい。」

中にいたのは白くて長い髪を三つ編みにしていて片側ずつ赤と青になっている服装でスカートの部分は上とは逆の色の配置になっている。何やら調合中だったのか右手には匙を持っていた。

 

その横では紙に何かをメモしている暗めのピンク色をした腰あたりまでの長さの髪をしているウサギがいた。まるで高校生のような服装なのだが青年はあまりにも興味はない。それどころかスカートの短さがどうもきになるらしい。

 

「永琳、調子はどうだ?」

邪魔してはいけないと青年は悟ったのかすぐに移動して患者用と思われるベッドに腰掛けていた。そして服の付いている煙草の臭いが気になるらしいが表情が見るからに嫌そうなだけで何も言わないので下を向いている青年には見えなかった。

 

「順調に進んでいるわ。どうやら鈴仙が頑張って売り捌いているからかとても売れ行きがいいのよ。」

永琳はさっ、と表情を変えて嬉しそうに話していた。そこで青年は鼻で笑う。きっと見えていなくても感じていたのだろう、永琳の嫌そうな表情をしていたのは。そんな二人の間に板挟みにされている鈴仙の気持ちをわかって欲しいとは思う。

 

「そうか。俺も思った通りだな。」

青年は顔を上げて鈴仙の表情を見ていた。何か話そうとはしなかったがある意味間接的に褒められているので嬉しそうな表情をしていた。

 

青年は前のような小心者ではないのだろうと思いながらしばらく考えていた。

 

「そうなるのでしょうね。貴方はいつもそのように考えているわ。五日前もそうだったんじゃない。」

前に永琳には助けてもらっている。ていに連れて来られる形であったが脇腹の肋骨を折られていたらしいので永琳による体の本来持っている治癒能力を助ける薬をもらった。その代わり効果は強いが期間は短いらしく何時に一回の服用が必要らしい。青年はその話は聞いていたが野宿生活のためか薬の存在を忘れていた。無くしたというのが正しいのかもしれないがどうなのかと青年は思っているが実際のところは分からない。

 

「そうだったかもしれない。」

青年はさらりと答えていた。まるで無関心であるかのようであるがそれでも話は聞いているらしい。あまりそうとは思えない。

 

「貴方には何か人とは違うところがあるようね。その事はもういいわ。」

永琳はその青年の適当な反応は好ましくないらしいがその事はどうでもいいかのようにしている。青年もその事はあまり気にしていることがないので気不味い空気が流れていた。

 

「して、今はどのような調合をしているんだ。」

青年は聞いての通り何と考えているような節はなく逆鱗に触れているのかと思われている頑張って別にそうでもないらしい。

 

「今は血流を良くさせる薬を作っているわ。体温調節や代謝を良くさせるためのものね。」

永琳はもう一つ取り出した。どうやら二つ作っているらしいがあれからだいぶ経ったようにもそうでもないかのように思える。いつ前から鈴仙が人里に薬を売りにいっているのか青年もふと忘れていた。

 

「まだあるのか?」

青年はそう言いながらもまた別の事を考えていたが永琳はその事を感じ取りながらその事は気にしないことにした。

 

「ええ。これは頭の痛みを鎮める薬。それで貴方に渡したものは身体の治癒能力を増幅させる薬。本当はとても危険なものだけど見た感じそうでもないようね。」

永琳はまだまだ多くの薬を調合し終えているようだった。何処にそのようなものが生えているか、そしてそれをどう集めているのかは知らないが青年はあまり興味は示さなかった。調合にはあまり興味はないらしい。

 

「少し前から飲んではいない。三日前に無くしてしまってな。それでようやくここまでたどり着いたというわけだ。」

 

「そうなると薬は毎日飲んでいなかったのね。追加であげるから今日はゆっくりしていきなさい。」

永琳はそれだけを伝えているが青年は顔を向けているが何か感じる事はないらしい。屋根のある場所には二日ほどは暮らしていない。青年にとってはその言葉はそこそこ嬉しいものであるらしく表情に少しだけ出ていた。

 

「そうか。久しく屋根の下で過ごしていないからな。すす汚れているから服を貸してもらえないだろうか。どうしても周りと差がある。」

 

「そうね、分かったわ。ちゃんど治るまで居させてあげるわ。少し席を外しておいて欲しいわ。」

青年はその永琳の言葉の通りに一旦この部屋から襖を開けて外へと出た。別にそんなくらいというわけではないがもうそろそろ夕暮れになるのだろうと思える空の色をしていた。

 

青年は縁側で横になっていたがどうも暇になってきたらしく庭に出てから右腰から剣を抜いた。そしてまた構える。今度起こすのは元素を解放するための元素。その色は太陽のような橙色のものを身体中に纏ってから近くの池に近づいていた。

 

そして青年は脱力するように剣を振って池の水面に近づけるとその場所から池は真っ二つに分かれた。青年は同じように念じながらゆっくりと瞼を開けてその様子を見ていた。

 

風もないのにバシャバシャと波を立てて揺れている。剣の周りには水などなくまるで存在していたかのようにしていた。王が通る道には何もないかのような。そんな様子を見ていて青年は確実に力が増しているという事を考えながらこれをどのように使えるのかを模索する必要があると思った。力に溺れてはならない、そして人を傷つけるような使い方はしない。それだけは心掛けている。

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