青年放浪記   作:mZu

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第156話

今日は特に寒い日だった。雪が降りそうなほど霜のついた朝の人里に大きな音が響き渡った。

 

その音に驚いて皆が起き上がり家の外へと飛び出していた。その先に見えたのは目に見えるほどの間欠泉。人里の皆はそれに不思議に思い近づいてみると温泉がわき上がっていた。其処で大喜びして温泉へと入浴することで日々の疲れを癒していた。

 

それだけで終わるのなら良かったがそう上手くはいかなかった。湧き出た間欠泉の残りと思われるところから黒い影が一体、一体と間欠泉のごとく湧き上がる。人里の皆は知らなかったがそれを見ていた巫女は気づく。そこには霊が住み着いていたことに、そしてその霊が其処らへんにいるような妖怪とは違いそれなりの力を持ち合わせていたこと。それがどれだけ危険であるのかを知らない事。人里の皆が一思いに温泉に浸かる中それに気付いたごく一部の幻想郷の住人はその退治に追われていた。

 

「何よ?これ。」

間欠泉の噴き上がったあたりの近くの温泉と思われる湯気の立つ水溜りでは人が楽しそうにしていた。その中で博麗の巫女はその様子を見ながら首を傾げていた。博麗神社の近くで起こった間欠泉は確かにあったのだがその後には温泉が出来上がっていた。

 

今日は凍てつくように寒く手が悴まないようにするのが精一杯という季節となった矢先にこれは起こった。皆は余計にその温かい湯に浸かりながら一思いに時間を過ごしているのを変に羨ましく思えた。少し近づいてみようと高度を下げ始めた巫女の目に止まったのは黒い影だった。

 

その影は多少なり妖力を蓄えているので並大抵の妖怪とはまた違う一筋縄ではいかない強さがあった。それこそ何らかの異変というものである。

 

巫女はすぐさま札を裾から取り出すとそれを黒い影へと投げつけた。消失するようにはち切れそうな声を上げて落ちて行くのを見ながら何か可笑しいと思えるので更に高度を下げていた。その速度は先ほどとは比べ物にならない程速かった。

 

「地下にいる霊魂、よね?」

巫女はその間欠泉に吹き出したのであろう地面にある大きな亀裂の中をのぞいていた。その中は熱気は感じるが何か妖力があるようなのは存在しているようには思えなかった。その中には何か生きているものがあるようにも思えない。だが、霊魂が現れた以上は何かが起こる前触れとしても可笑しくはなかった。

 

朝に博麗神社の近くで起きた大きな音と立ち上がる白い柱を見た時は何事か、と思っていたが来てみると人里の皆が楽しそうにしている。そしてこれは何かが起こる前触れでもあるのだろうと巫女は考えていたが別にそうでもなさそうというのが一番に思った事だった。

 

だが、地底から出現すると霊魂は悪意はないものの妖力を持った危険なものであった。早く何とかしないといけないと感じた巫女だがそれ以降は何も起こらないのでやはり拍子抜けというものだった。一旦帰ろうとしたその時巫女はその亀裂の奥底から多くの妖力を感じた。

 

その数は流石の巫女でも対処できないような数だった。黒い帯のように続々と出て来るのでもはや対処のしようがなかった。巫女はその帯をずっと見つめていた。札で倒せる数は倒したがそれでも対処は間に合わなかった。それぞれの場所へと降り立つ霊魂を追いかけようとしたがそれでも間に合いそうになかった。巫女はまた別の裾から紅と白の色をした太極図のような球を取り出すと其処に話しかけた。

 

「紫、ちょっと聞いて。朝に起きた間欠泉の噴出場所から霊魂が飛び出してきたわ。その数は未知数。私が対処できる数は減らしたけどそれでも散らばった場所へ行ったわ。倒せる人全員に頼んでちょうだい。」

余程緊急であると感じたのかそうでもない限りは出さないような声を出していた巫女は少し焦りというものがあった。その交信相手と思われる紫は少し落ち着いたように話す。

 

「では、皆さんに退治させて頂くことにします。少し時間がかかりますので優先順位を決めてください。」

交信相手と思われる紫は何処か人が違うようだったが巫女はその事は構うことはなかった。

 

「なら、今まで異変を起こした人たちに話しかけなさい。従わなかったら消すともね。」

其処で否応無しに通信を切った巫女はその場から飛び立つと一旦博麗神社へと向かった。紫はまずは紅魔館から話しかけてその後に白玉楼へと順々に連絡を回していた。

 

そして博麗神社によく見るあの魔法使いにも話しかけていた。それで幻想郷を巻き込んだ形で地下から出てきた霊魂の退治を行う住人だがその妖力の強さには苦戦したものの少なくはなかった。

 

そして大体の有力者は自分の敷地に籠ることで異変の解決には尽力的ではなかったのもその一因と思われる。それなりに時間のかかったわけで全てを倒すには何日か日にちを跨ぐことになった。それでも片付いたのでそれでもう良いらしい。そして博麗の巫女は異変の解決をするために調査に向かおうと間欠泉の噴出した亀裂の場所へと向かった。そしてそれとは別の目的でその場所の近くへと向かっている別の影があった。

 

「霊夢?今は何処にいるのかしら。」

巫女の裾からそんな声が聞こえてきた。その声は本人なようで巫女はすぐに取り出して話しかけた。

 

「間欠泉の亀裂の前にいるわ。今から異変解決に向かうつもりよ。」

巫女は淡々と話していた。それこそ何かの業務連絡のようになっているのだがそれを気にするようなことはないのだろう。

 

「そう。分かったわ。それじゃあ、霊夢。私は少し準備をしてから貴方の元へと向かうわ。それまで適当に異変の解決するための調査をしていなさい。」

交信相手である紫は其処で通信をやめて声は聞こえなくなった。巫女は待ちなさい、と前に使った太極図のような球に話しかけているが返答は何もなかった。其処で霊夢は少し時間を過ごしてからその中へと身を投じることにしてみた。

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