二人は間欠泉の起こった亀裂から地底へと突き進んだ。その場所にはもともと亀裂があったのか両側の壁からは所々他の場所へと突き進むことのできる穴道が続いている。その内蜘蛛の巣のようなものが見えたあたりで周りには気をつけながらゆっくりと下降していた。
「この辺りには何か生息しているのかしらね?」
霊夢はそんな事を言ってみる。そうでもないとこの大きさのものはどうしても出来ないのだろう。穴を埋めるほどの大きさの蜘蛛の巣がその場所にはあった。魔理沙の八卦炉はそれを確認させるために使っている。そして霊夢はそれに対処するためには壁についている蜘蛛の糸を切れば良いのだろうがそれをする枚数と威力が足りない。札を投げて切れるほどの肩は霊夢は有していない。
「そうでもないとこれは出来ないぜ。それでどうするんだ。霊夢?」
魔理沙もそのことには気づいているのだろう。二人にはなんともならないという事を、そして周りには多数の穴が存在していてその道から行けるのではないか、と。そしてこのまま強行突破したとして何か変わることがあるのだろうか、と。
「私には策はないわ。」
霊夢は諦めたようにあっさりと答えた。その味けなさには魔理沙を目を細めるだけで何か言ってみたりする事はなかった。そこで霊夢は自分の札を一枚糸を切れるかどうかを確かめるために投げてみた。それは切れる事なく巻きついた。霊夢の札には霊力を纏ったものなのでそれは仕方がない事だと思っていた。だがこれをどうすれば良いのかは今の二人にはなんとも出来なかった。
だからと言ってもどうにかしないといけないので二人は頭を使ってなんとか抜ける方法を模索した。ある場所からカサカサと音がするのでもしここで光を消せばどうなるのかは分からない。霊夢は上を見て光があるのかは探してみるがまだまだあるので何とかなるのかもしれない。
「よし、もう強行突破だ!」
魔理沙はそう叫んで箒の柄をその蜘蛛の巣のところに向かって行くつもりらしい。霊夢は手を振るだけだ。
カサカサという音が近づいてくる。何処からくるのかは何も分からないが必ず出てくる。その直感が霊夢にはあった。博麗の巫女としてなのか霊夢としてなのかはさておき魔理沙にもその音は聞こえ始めた。
「この音は何だぜ?」
魔理沙はそう言ったときにはもう横から出てきていた。霊夢は素早く札を構えて身を引いていた。
「やぁやぁ、君達、何用かね?」
目の前に現れたのは燻んだ黄色の髪で茶色の服装をしている。髪型は団子を作っていてお姉さんという感じが出ている。服装だがふっくらとした蜘蛛のような膨らんだスカートで袖もふっくらとしている。しかし胴の部分はピッタリとした服装なので幾分か細身に見える。
「蜘蛛ね。」
霊夢は札を投げる準備をして臨戦態勢をとる。その人は別にその気はなさそうなので霊夢は投げないという事である。
「お前は何者だぜ?」
魔理沙は何となく興味があるのか聞いていた。霊夢が臨戦態勢になっているのが馬鹿馬鹿しくなるほど温和な空気が流れた。その人は可愛い表情をして答えた。
「黒谷 ヤマメだよ。どうぞ、よろしくー。」
軽快な口調で明るい声で話すヤマメはまるでアイドルかのような雰囲気があるのだが二人にはそのようなちゃらけたものには興味は示さなかった。
「それで、間欠泉の中に地霊を入れたのは誰?」
霊夢は単刀直入にズバッ、とヤマメの言った事を切り捨てた。無慈悲な言い方をするので後ろに位置する二人の会話を細い目で霊夢の保護者のようにしている魔理沙はそこからゆっくりと柄の先を振って霊夢の横につく。
「私じゃないよ。間欠泉が噴出したから住まいが広くなったんだけどね。」
片目を閉じてウインクをするヤマメだがそれを恨めしそうにお得意のお祓い棒で払うようにして構えた。
「私はアンタを退治する。良いわね。」
霊夢は札を投げてヤマメを狙うが蜘蛛の糸を何処かから出して札を巻きつけた。霊夢は更なる札を用意してこのまま攻撃しても仕方がないと思っていた。当たる事はない。そして魔理沙に協力してもらうというのもまた違うものであると感じる。そもそも光を失うのは霊夢からすると勿体ないところである。
「辞めとけ。大人しくして通してもらう方がいい。」
魔理沙は冷静に霊夢を諭すような話していた。それこそ保護者のような立場になるわけだが霊夢の力を知っているので良い関係のように思える。血走りやすいのは二人とも変わらない、若気の至りと思われる。
「そうだね。」
ヤマメはそれだけを言って蜘蛛の糸を射出して二人を襲った。ヤマメも別に襲うタイプの妖怪というわけではない。どちらかと言えば皆とは仲良くしたいようなタイプなのである。
なのでこの戦闘は本望ではないが仕掛けられたのなら自分の身を守るためには戦う必要がある。二人は一本だけの糸ならさらりと避けられる。壁に張り付いた糸には目もくれずその中へと入り込む二人をヤマメは頑張って対処しようとした。霊夢はその蜘蛛の糸や茶色の弾幕を狭い中でくぐり抜けていく。霊夢は札で反撃して魔理沙はその後ろで光で辺りを照らしていた。
別に魔理沙が参戦しているというわけではないが何も気にする事なく動き続けられるようにしたのでその功績は大きなものなのだろう。霊夢と魔理沙の息の合い方とそこからの完璧な立ち回りで素早く対処した。みるみる内に追い詰められて行くヤマメはついに降参した。
「で、どうして反抗したのかしら。」
「いや、待て霊夢。それは聞くべきではない。」
大抵分かるだろ、と魔理沙は霊夢に目で訴えていた。当たり前かのように話している魔理沙だがそれが通じそうな事はないほど霊夢は激昂しているようだった。魔理沙としては当たり前であると思うがその常識が通じるほど幻想郷は甘くないという事である。
「どうなの?」
霊夢は魔理沙の発言を何とも思っていないのかさらりと流して反応もしないので魔理沙は手を出して呆れ返っていた。
「急に襲ってくるから。」
ヤマメは正当な理由で答えた。魔理沙はだろうな、という表情でヤマメを見ていたが霊夢は未だに厳しい視線を浴びせている。ヤマメは霊夢の眼光にひれ伏していて身を縮こませていた。魔理沙はそんなヤマメに一言謝罪をするがそれも霊夢は気に食わないらしくさらに激昂していた。
「それはアンタが妖怪だからよ。」
霊夢はお祓い棒を振りかざして大きく振りかざすので魔理沙としてもヤマメとしても呆れてくるような感じになる。
「辞めとけ、霊夢。これ以上聞いても時間の無駄だ。」
魔理沙は早めに終わらせようとしているようだった。霊夢はその魔理沙の言葉を聞いて少々諦めたようにしていた。
「分かったわ。そうしておく。道案内しなさい。」
霊夢はお祓い棒を肩に背負って機嫌の悪そうにしていたがそこらへんは流石に子供ではない。ヤマメはやっと解放されるのかと思っていたがそうでもなかった。どの辺りからか大きな音がする。高い音で何かと何かが当たったような音がする。間欠泉の亀裂なので何処なのかは判別出来るというわけではない。
「行くわよ!」
霊夢が身を翻して来た道を戻った。魔理沙はその慌てようには驚いているがしっかりと再度謝罪をして霊夢を追いかけることにした。
「なぁ、霊夢。ちょっと焦りすぎなんじゃないか。」
「大丈夫よ。私を信じなさい。」
霊夢がそう言うので魔理沙は何も言わないが一つ疑念がある。ヤマメに道案内してもらった方が早いと思ったのだがそれはもう難しい。今何処にいるかも何も分からない。そして此処から戻るのも暗いので戻る気も起きない。そして霊夢の道を照らすことができなくなるのでそのあたりの心配はしていた。
魔理沙の疑念はそのままにして黙って霊夢の後ろをついて行くわけだがどのように行くのかそしてその勘が当たるのかはあまり心配していなかった。その事で霊夢が予想を外すような事はなかった。その事は心配しないでも何処までいけるのかはさておきという感じ話である。
「それでここがその場所のようね。」
そこには桶のようなものが落とされたような感じで浅い感じだった。特に気にするような事はなかった。
「そうだな。そしてここが地下世界か。」
魔理沙は目の前のことよりもその先に広がっているところを見ていた。ここからが本番ということである。