辺りには蝋燭のようなもので灯されているかのような温かい火で灯されていた。しかしこの量とその正体を知るとそうとは言えない。
青く人魂であるかのようなもので今の無音で誰もいないこの状況では余計に不穏な空気が流れる。ぶった切った生地を頑張って縫い合わせたようなキュロットスカートのような短パンを履いた青年の横を山伏のような小さい赤い帽子を被った射命丸 文がその横を歩いていく。
別に二人には何ら関係はない。それこそばったり会ったので話しているだけのような関係である。しかし強いて言うなら青年の周りの特ダネをキャッチしようと射命丸は小賢しく付いてきているだけだ。
「この周りには何もないのだな。」
青年はゆっくりと歩調そのままに悠長な口調で話した。気怠そうな気にもなるが別にそう言うわけではないので其処ら辺の判別は難しい。射命丸は軽く浮遊して青年の周りをチョロチョロとしていた。それこそ特ダネを食べようとしている猛獣であるが起こるものも起こらないように感じるのは気のせいだろうか?
「そのようですね。私もここまでは下調べはしていません。」
射命丸はふわりと青年の目の前辺りで止まる首も微動だにしないくらい関心のない青年だが話は聞いているらしい。そうなのか、熱心だなと返した。射命丸は少し照れながら後頭部をさすっていた。
「して、この脇にある青色の炎はどう言うものなんだ?」
青年はそちらの方に気が向いているらしい。射命丸は何処か寂しそうな表情をして青年の質問に答えた。
「これは鬼火と言うものになります。執念深い魂であったりするので下手に触らないほうがいいですよ。」
射命丸は手を振って幽霊かのような身振りをするが青年はもとより射命丸のことは見ていないのでそれは通じなかった。それどころかそこまではあまり関心はないようなので拍子抜けするな返事を青年はした。
「と言うことは何か住んでいる可能性があるのか。挨拶の一つくらいはしておきたいな。」
青年はそんな事を悠長に述べていた。それこそ場違いな発言であるのだが天然でも馬鹿でもなくこれが自然なのである。射命丸はあはは、と作り笑いで肯定しておいてその場は流しておいた。青年はそんな気遣いには気づくようなことはなくそのまま歩き続けていた。
射命丸もその気遣いを気付かせるのには視線を平行にさせるべきなのだが天狗として見下した節のあるのを具現化しているだけなので気づくまでしているつもりなのだろうが無駄であると先に言っておく。
「それでこの先にはどうやら繁華街のようなところがあるのだが何か面白そうな事でもあるのか?」
青年はその場に立ち止まってその先を見ていた。此処は平坦な道で二人が歩いている幅の何倍もあるような場所なので確かに赤い提灯のようなもので照らされて何か声がするのは確かだがこの場所では何があるのかも何を話しているのかも聞こえない。
微かに地底に吹く湿った風の方が大きい時もある。そして気温的に暑く感じるのは何か下にあるのだろうと青年は思っていた。青年はふと触っていた剣の柄を強く握って冷気を出し始めた。氷の元素を集めて脳内の念で補填することでできるようになっているが少しばかりか強いような気はする。
「涼しいですね。何かその剣には秘密があるのですか?」
射命丸は青年の急に始めた事よりもその事を気にしていた。普通からすれば気になる事なのだろうが青年は自分でやっていると言うこともあり何も興味はなかった。細い目で哀れんでいるようにさえ思える。
「何も。魔法というものを使っているだけだ。それぐらいは知っているだろう。」
青年は首を傾げながらゆっくりと話していた。いや、元々こんな口調だったのかもしれない。射命丸はふーん、と言いながらメモ帳に何かを書き込んでいるペンの紙の上を走る音が聞こえる。青年と同じく何を書いているのかは読みにくい個人にのみ読める文字であるがそれを青年は覗く事もしなかった。それに何か気になるものもある。
「誰か居ますね?話しかけてみましょう。」
射命丸は先に話を聞きにいく。青年はそのような後ろ姿を見て何か思ったのかその後を走って付いていくことにした。その先には寂れた今にも壊れそうなほど黒ずんでいる橋がある。その下は何があるのか分からないほどの深さで見ているだけで恐ろしくなる。
その場所にかかっているので射命丸は飛行したままであったが青年は走ったままで橋を踏んだのでギシ、と音を立てた。その後で嫌な音が聞こえる。木材の折れるメキメキ、と言ったような音なのだろうが今にも壊れそうなので青年も飛行した。これだけはよく練習していたのでもう慣れている。
「すいません。文々。新聞の記者の射命丸 文というものです。少しお話聞かせてもらってもよろしいですか?」
橋桁に身を任せて長い棒の先から煙を出し続けている少女がいた。金色のショートボブで緑色の瞳をしていた。そして髪に隠れていて確証はないが耳が尖っているように見える。首元には白色のスカーフを巻いていて着物とも言えないがそのように見える襟を線を交差させた半袖の服装、そして下には黒色の下着を着用しているが何ら肌の露出はない。スカートの裾には橋のような赤色の装飾がされている。一見は優しそうなのだがどうだか。
「一人の時間を邪魔するな。」
その人は口元にある長い筒を左手で挟み持ってからそのように話した。下から来るような低い声で少々酒焼けしたようなガラガラ声である。
そして口から紫煙を射命丸にかけないように吹いていた。射命丸はあまりの態度の悪さに一歩だけ身を引いた。
「なら、俺も一服させてもらおう。」
青年は肩のポケットから煙草を取り出して剣の刀身に煙草の先を近づけて着火させると唇で挟んで肩のポケットに入れていた。そして剣は鞘の中に納めて敵意はない事を示していた。そして紫煙を吐いてもう一度唇で挟んだ。
その間橋桁にもたれかかっている人は静かにその青年の動きを見ていたが何から何までよく分からないので首を傾げて諦めた。射命丸はどうしたら良いのか分からずしばらく動くようなことはしなかった。