黒ずんだ橋にもたれかかる長い筒で吸う少女とその場に座って一服する青年は互いを見つめるようにしていた。その時間と緊張感の中で何も術がなく立ち尽くしている射命丸は早く何か話さないか待ち望んでいた。
「それで何の用だ。」
橋桁にもたれかかっていた人は長い筒に入っている萌えてしまった灰を橋のかかっている狭間の中に捨てた。青年も火のついたままの煙草を後ろに投げていた。正直そこまで飛ぶようなものではないが射命丸の風の操る能力で何とかしていた。
「別に。間欠泉を間近で見ようと観光しに来た。」
青年は平然とした態度で話しているが橋桁にもたれかかっている少女はどこか疑わしい目で見ていた。別に間欠泉を見たければ此処に来ずとも適当なところに行けば見に行ける。
此処は小さな間欠泉ならたまに起こるので何か問題になるようなことはなかった。此処には皆から妬み嫌われてきた者達が流れ着く言わば下にある楽園のような場所なのだ。
此処には昔の人間から逃げ延びた人間は地上ではどうしても暮らせないような人物が泣く泣く飛び降りた先にある場所なので別に無理に来るような必要はない。それにこのように平然と歩いているので何か特別な術でも使ったのだろうとは思っている。
「観光ね?なら帰りな。」
厳しい口調だがどこか優しさの感じる言葉なので青年は座って聞いているつもりだったが立って聞いてみることにした。その様子を蔑んだ目で見ていた少女は青年と視線があった時には何か感じたのかもしれない。青年は尻の汚れを気にしていたのか手でパッ、パッ、と払っていた。
「如何してだ。」
「観光で来るような場所ではない。それだけだ。」
少女は青年には優しく諭すように話していたが目がそのようには見えなかった。青年は気になるのだが元々だと困るので聞かないことにした。別に目が気になるだけなので気にしなければ良いと安易に考えているのだろう。
「そうか。それは人の好き勝手だ。首を無理に突っ込む必要もないだろう。」
青年も青年で自分の空気感で話している。自分勝手な言動のようにも別にそうでもないように思えるのが何か含ませているようで怪しいがそれが出来そうな顔つきはしていないのである意味では素直なのだろうとその少女は思っていた。
「そうだな。そんな気がしてきた。」
「して、此処で何をしているんだ。」
その少女らはピクリと耳を動かした。何か地雷を踏んだかのようだが射命丸の方を見て目で出て行け、と示していた。しかし動こうとしないので声で出ていくようにしていた。射命丸は急いでその場から離れたが上から盗み聞きしようとしている。
「私は水橋 パルスィ。橋姫として名を受けたがあまりその恩恵は感じていない。」
パルスィはそんな風に青年に哀愁漂う口調で話していた。今まで何があったなのかは青年は知らないが何かあるのは目に見えている。青年はそれを聞いてみようかどうか迷ったが聞いてみることにした。
「如何してこのような観光に来るようではない場所にいるんだ」
率直だった。言われてみればわその通りなのである。しかしパルスィにはそれ相応の此処にいる理由があるのだ。それがどのようになるのかはよく分からなかった。青年はそれでも何食わぬ顔でその場所に居た。パルスィは一呼吸置いてから何となくの口調で話し始めた。
「私は元々嫉妬を操る能力を持っている。それで私は周りから疎外され続けた。その結果がこれだよ。」
嫉妬か、と珍しく唸る青年だが多分この人には嫉妬という言葉は似合わないようである。パルスィは一連の青年の行動を見ていてそう思えたらしい。別にその事はどうでも良いようなことではないのだな表も裏もないような青年は必要なものしか持っていないのは長年の経験から感じていた。
「嫉妬か?何かよく分からないものだな。」
青年は唸った結果、出した答えはそのような者であった。パルスィは後ろに手を組んで優しい口調で説明した。
「誰かを見ていて羨ましいと思う事はないか?」
「いや、ない。」
「話が終わるからやめてくれ。」
青年のその即答には流石のパルスィも対応しきれなかった。困った表情をしているので青年は慌てて言葉を訂正した。
「そうか。なら、あるのかもしれない。」
「そうするとその力が自分にあったらいいな、と思う事はないか?」
「その人にしか扱えない能力というものもある。人それぞれが一人なのだから俺は真似をするだけだ。」
「それを欲しがっているという。それが羨ましいという事であり、嫉妬というものだ。分かるか?」
パルスィは薄々感じていたが人のことでは流されない様な空気感を感じる。それだけで青年の底力が伺える。もうやめてしまおうか、とパルスィは弱音を吐きそうになっていた。
「分からん。」
「如何して分からない。」
「俺は興味のある事しかしないからだ。人の事など知るか。」
「アァー、妬ましいな!」
パルスィは急に叫んだ。流石に青年の言動には嫌気がさしたのだろう。青年はそんな激昂したパルスィを心配そうな表情を見ているがどのように手を出していいのか分からず何もしないようだ。それこそ腫れ物に触るかのようだ。
「どうした。気分でも悪いか。」
「違うわ!お前のその言動がとても妬ましい。何だ、人は一人なんて言葉は?そんな聞き方が羨ましいわ。」
パルスィのその言動には微妙な表情をするので言っている本人も困ってきた。此処からどのように続けようか困っているという表情をしている。青年はそんなパルスィを不思議そうに見つめていた。もう少し話を聞いてみたいとも。
「なら、貴方は如何してこのような事になったんだ?」
青年は逆に聞き直す。青年も聞いてみるのは最初のうちは躊躇っていたのが興味や好奇心の方が勝る今では何の歯止めにも気休めにもならない。
青年はしたい事だけをして相手の事を少し考えながら暮らしている。それだけなのだ。悠々自適に過ごしているので何か考えるよりも先に行動しているような人物だ。止めれる奴がいるとは思えない。
「聞くのか?良いよ聞かせてやるよ。」
パルスィは何処かのネジが飛んだロボットのようにしていたが青年はその場所に座った。パルスィはそんな青年を涙ぐんだ表情で自分の家へと連れ込んだ。