青年放浪記   作:mZu

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第162話

小さめな卓袱台。

 

そしてもう少し繁華街となるのかその先には酒と黒い文字の書かれた赤色の提灯が見える。そして何か頭にツノを持っている種族の人がたくさんいるように思える。

 

「有難うな。私のつまらない話を聞いてくれて。」

手短に終わった話だが青年は何とも思っていなさそうだった。途中から聞いてみたものの何かつまらなくなってきたので適当に相槌を打って話を合わせていた。無意識ながらパルスィは青年に対して好意を持ち始めたということである。恐るべき青年であるが本人は出された茶を一口も飲めていなかった。青年は猫舌である。熱いものは苦手なのである。

 

「いや、その事は気にするな。話してくれて有難う。」

話の内容は頭に入っているしい青年だがそこまで詳しく話を覚えているというわけではないで簡単な説明しかできない。

 

「こちらこそ有難う。」

パルスィは青年に握手を求めてそれをしてもらった。あまりに強く握っているので青年は困惑した表情でパルスィを見ていることにした。そういえば、と思ったのか青年は急に声をかける。

 

「そう言えば、この地底の頭首のような者がいる場所は知っているか?」

 

「この先を真っ直ぐ行くとその場所にたどり着く。基本的に人には会わないが特別な人なら通してくれるだろう。私も行きたいが暫く休んでから繁華街に向かう。その先に目に見えるほど分かりやすい建物があるから頑張って行ってみてくれ。」

パルスィは素早く立ち上がると外に出て指と身振りで詳しい道のりを教えてくれた。その先にあるのは先ほど入ってくるときに見ていた赤い提灯のある場所だった。その場所はそこまで広い場所ではないがぎっしりと並んでいるような気はする。青年は少し考えてから帰る時に寄るとだけ伝えてその場所へと向かった。

 

「一体どのような話をしていたんですか?」

青年がパルスィと離れたタイミングで上空にいた赤い帽子を被った白いシャツを着ている射命丸が合流してきた。記者としての魂なのか青年に聞いてみるが何か答えるような事はしなかった。何か答えるような事はないというのもあるが答えたくないところもある。

 

「射命丸、聞いて良い事を聞いてはいけないことを知れ。それが話の全容だ。」

青年は強く射命丸を指差して答えた。その迫力に気負けしたのかそれ以上は何も言わなかったがきっと何か不安な事が有るのだろうかと青年は思った。別に何か問題になるような事はないだがはて、と青年は考えるばかりである。

 

「それで他には。」

 

「頭首までの道は繋がった。この道を真っ直ぐ行くと着くそうだ。あの少女からはそう聞かされている。」

 

「それでその人の印象はどうでしたか?」

何を書いているのだろうとメモ帳にペンで何かを書いている射命丸を青年は思ったがその事は別に良いと思った。

 

「優しい少女なのだが能力故に仲間からは外されたそうだ。」

青年はそんな事を言って簡潔に終わらせた。射命丸はもっと詳しく話を聞きたかったらしいがそれ以上は聞かなかった。聞いてはいけないと思うからだ。

 

「この繁華街を超えるとその場所に行けるのですか?」

 

「だそうだ。」

射命丸は青年の背中を追いかけてこの賑やかな場所へとついた。

 

その場所は店が乱立していて覇権争いをしているかのようで色んな雰囲気のある店があった。だが何処も人気のあるようで席は満席で立ち飲みしている人もいる。頬を赤くしている者や何処かで見たことのある瓢箪を飲みながら次の店に行く者。

 

実に色んな人たちが色んな飲み方で楽しんでいる場所だった。青年はその中を何食わぬ顔で歩いていた。それこそ慣れているかのようにその空気感に馴染んでいた。

 

その後ろを恐る恐る歩いていた射命丸だがそれには理由がある。妖怪の山には縦社会という古くからの伝統がある。今は天狗が一番上の存在になるのだがかなり前は鬼が頂点に君臨していた。そしてその中でも四天王と呼ばれる鬼もいるのだがそれは後で話すかもしれない。

 

周りには鬼しか居ない、それは射命丸にとっては青年の近くにいない時をおかしくしてしまうほどだった。それだけ鬼というのが絶対的な存在であるということでもある。だが伊吹 萃香という鬼をしている青年は何か気にしているような節はなくスタスタと歩いている。

 

「如何してそんな平然としていられるんですか?」

 

「所詮は鬼だ。萃香よりかは弱いのだろう。」

青年は酷い事を言うがその通りである。鬼の中でも四天王とされているその四人のうちの一人である萃香の力は計り知れない。それだけ鬼からも恐れられていると言うことでもあるのだが。射命丸はきっと今後悔しているのだろう。それこそ付いて来なければこのようになるようなこともなった。

 

「萃香だ?何処だ、そんなホラ吹きは?」

横から現れたのは一際周りの鬼よりも体格のいい女性の人だった。その人は白い服で体操服のような感じがする。袖は赤色である。そして透け気味の長いスカートで下には何か穿いているかのようで黒っぽいものが見える。そして何より目を引くのは立派な一本角の鬼であること。そしてそこには星の模様があるようなことだった。

 

「俺だ。」

青年はその声に反応した。体格差はそこそこあるが青年は本当の事なので何も疑問にも思わなかった。その人は立ち上がって体から発せられる威厳を振りかざして青年に見下しながら近づいた。身長的にそうなるのは必然であった。そして鬼という種族なので力においては優位に立てる。

 

「お前か?一つ聞くが今はその萃香は何処にいる。」

 

「幻想郷の何処かにいるだろう。外の世界か、もしかしたらここにも霧のような形でいるかもな。」

少し笑ったような表情を見せて余裕そうにしている青年を周りの鬼たちは笑って見ていた。何を言っているのか理解できないからである。野次の中に霧になってだってさー、という言葉が聞こえてくるあたり何も知らないのであろうと青年は思った。

 

「よし、私と勝負しろ。」

その人の発言はこの場を凍らせた。

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