青年放浪記   作:mZu

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第164話

周りを囲んでいた鬼はその光景に唖然とする。

 

鬼の四天王が一人である星熊 勇儀はその場で膝をついた。そして立っているのは萃香を知っていると言う謎の男。その男は針二本を勇儀の両腕に差し込んだ後で一撃を受け止めただけで倒した。その光景とよく分からない技によって勇儀は倒されたのだ。周りからすれば何をされたのかはよく分からない。

 

「済まなかった。貴方には失礼な事をした。」

青年は小刀をズボンのポケットの青年から見て右側に納めた。其処にはきっとさやがしまってあるので多分そうだろう。そのような音が確かにした。

 

勇儀は痺れているのかゆっくりと立ち上がると片膝をついた状態で青年を睨みつけるようにしていたが認めたようだ。静かにに俯くとその場から立ち上がって一気に針を引き抜いた。

 

勇儀は顔をしかめながら抜いているが血などは出るようなことはなかった。ある意味では凄い事である。何か外傷で死に至る事はなかなかないのだろう。青年はその針を勇儀から受け取ると小刀のしまってあるポケットの隣にしまっていた。その針の形は黒くて片方が鋭くてもう片方が打ち込みやすいようにしてある。

 

「何をしたのかだけ教えて欲しい。」

勇儀は負けを認める代わりにどのように倒されたのか知りたいらしい。青年は仕方がなさそうに教えることにした。

 

「まず両腕に針を差し込んだのだがそれは俺の魔法の威力を増幅させる。小刀と同じ素材だから同調するそうだ。そして最後に雷の元素を使って貴方の拳に擦り寄せた。その時に大量の電流が流れて神経を麻痺させた。」

 

「要は動きを止められたと言うことか。」

勇儀は青年が何を話しているのかは分からないので兎に角自分で分かりやすい言葉に直していた。青年はそう言う事だ、と話して勇儀の言葉に肯定した。青年はそれでは、と手を振ってその場から離れていこうとする。

 

「待ちな。」

勇儀は青年を止めた。青年は何となく振り向く。

 

「どうした?」

青年はなんとなく聞いてみることにした。

 

「鬼を倒した事でどうなるかは覚えておけ。」

 

「覚えておく。」

青年はそれだけを伝えてこの場所から離れた。見知らぬ人だが勇儀と対等に話しているので周りで一連の流れを見ていた鬼たちは無言で畏怖の念を込めて道を開けていた。

 

青年はどうも、と避けてくれた人に礼を言い、認めたくないのか立ちふさがるには何も言うこともすることもなくその場から離れた。青年は何とか繁華街を通り過ぎることができたが本当に心臓はバクバクとしている。極度の緊張というのもあるのだが鬼と対峙する事になるとは思わなかった。しかも純粋な力でここまで押し上がってきたのだろう、擦れただけなのだが如何しても右腕が痛く感じる。

 

「いやー、素晴らしい一戦でしたね。」

上からか声がしたのだが上を見上げるような事はしなかった。

 

聞き覚えのある声なので別に特別見る必要もないと言う事である。白色のシャツに黒色の丈の短い紅葉の模様の入っているスカート着用している記者である射命丸 文なので青年は余計にしないと言う事である。

 

「いつの間にか居なくなっていたのにな。」

青年は悪態をついている。急に居なくなって鬼に囲まれる事になったので当然といえば当然なのであるが射命丸にはそれなりの言い分があるのでお互い平行線となりそうだ。

 

「それは鬼があれだけ居れば逃げたくもなりますよ。」

確かに周りには多くの鬼が隙間なくいた。その中で遊戯を倒した青年の功績は語り継がれるようなところまで行きそうな気もする。そうではなくてもしばらく噂話で聞く事にはなるのだろう。

 

射命丸はもちろん上で見たのだがこれを記事にするのかはまた別の話である。きっと止められるだろう。

 

「小心者だな。それだけ言っておく。して、近くに何か建物はなかったか?」

射命丸に頭首のいそうな場所がなかったか聞いてみるが案外気楽になれる回答が返ってきた。

 

「それなら近くにありましたよ。」

射命丸はすでに見つけていたらしいので二人はそちらを向かう事にした。その場所には何とも大きな庭のある屋敷にたどり着いた。あの鬼たちが居て賑わっていた場所からはかなり遠かったがそれでも何となく見る事はできそうな距離ではある。此処でも賑わっている事はよくわかるくらいの声が響いていた。青年はそれだけを見てどれだけ歩いてきたのかは何となく察しがついていた。多分この地底を縦断したと思われる。

 

「此処がその屋敷なのか?」

 

「はい、そうですね。一瞬だけ見にきただけなので判断はつけにくいですが立派な建物でしょう。」

その静かな佇まいで洋風の屋敷のようだ。紅魔館とは違い寒色である青色で壁一面は塗られていた。来ないで下さいなんて、言われそうな気もするがその事は気にしないので青年はズカズカと敷地内に入った。

 

真っ直ぐ続いている先には円形の花壇があり、それを囲むように丸を描いた道があり十字路を重ねたようだった。その道を突き進むと足元に一匹の猫がまとわりついた。

 

パルスィのような嫌われ者が集まる地底では何が理由でこのような結果になったのかはよく分かっていないところもある。青年は多少なり警戒したのだがそれはあまり功をそうしなかった。ただ単純に懐いてきているだけなので青年は両手で持ち上げてよく観察してみる事にした。

 

丸っこい顔でとんがった右耳には少し傷が付いていた。そして黒色の毛で触り心地はとても良かった。それから尻尾が二つに分かれていることから妖怪の類なのだろうと青年は思った。別に何か思ったと言うわけでもないが射命丸にその猫を渡した。

 

「そこら辺に逃がしておいてくれ。」

青年は射命丸に背面を向けて話していた。その表情は見えないが何処か悲しそうな気はするので射命丸は何も言う事はなく大人しくその猫を地面にそっ、と置いた。そして何処かへと逃げていくのを見守ってから青年は歩き出した。

 

「別に良かったんですか。」

 

「ペットか何かなのだろう。可愛い猫だ。」

青年は淡々と話しているので信憑性は薄いのだがある意味平常とも言えるので本当なのだろう。射命丸は既にメモを取っていたが何のネタになるのかは青年には分からなかった。

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