青年放浪記   作:mZu

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第165話

目の前には大きな青色で塗られている館がある。その庭である花壇のところで何となく理由はないが座り込んでいた青色の服装をしている青年と今までの事をまとめている射命丸がいた。

 

なぜ行かないのかと言うと青年が休憩したいから止めたと言うわけではなくて射命丸が要望したものであった。青年は仕方がなくその場にとどまる事にした。

 

「兄さん、此処に来るのは初めてかい?」

何処から声がした。その声は何処か年の老いた優しさを感じる声で俯いていた青年はふと顔を上げた。メモ帳に独特の文字でこれまでの経緯を書いている射命丸もふと顔を上げる。目の前にはゴスロリ調の黒と緑色の服装で赤い髪を三つ編みにしている。頭には猫のようなとんがった耳があるが傷があるので青年は何となくそこを見つめていた。それこそその人が困惑するほど見つめていた。失礼にも程がある。

 

「初めてだ。」

青年はじっと猫耳の付いている少女を見つめていた。ここに来てからは不思議で仕方がないのだがこの人は変身する能力でも持っているのだろうか、それとも先ほどの尻尾の二つある黒猫とはまた違う存在なのか、うーん、と言っている青年は何処か狂気じみている。

 

「そうかい。それなら此処はどんな場所かは知らないんだね。私は火焔猫 燐。此処の地霊殿のペットの一人さ。」

 

「して、火焔猫。ペットの一人というのだが人型をしているのはそれいかに。」

青年はその事は謎に思っているのだろう。それこそ今の見た目では絶対にそう感じる。何がおかしいのかといえば地霊殿の主人が鬼か何かなのかと言いたくなる。

 

「私は沢山の怨霊を食べてきたからね。元々は猫の姿だったけど人間へと姿を変えられるようになったのさ。」

人懐っこい笑顔で青年に話しかけるが当の本人は何も表情を変えなかった。神妙な面持ちで火焔猫を見ているのでそれこそ気分がおかしくなりそうだが別にそのような事はないらしい。側から見ている射命丸は作り笑いをして何とかしようとしている。

 

「となると妖力が高まったから人型として成り立っているということか。先ほどの黒猫とは同一なら先ほどの方が楽なんじゃないか?」

 

「うん、そうだね。でも先から何もしていないから話しかけようと思ったんだけど猫だと出来ないからね。今はこうしてやっているんだ。」

何か楽しそうに話しているので気にならないが妖怪といってもこのように安全そうな者を居るのだな、とふと感じた。キスメはあれは多分襲ってきていたが何かあるのかもしれない。パルスィは見るからに怪しいが妬みに関係ありそうだな。勇儀は単純に危険だ。青年はそんな事を考えていた。

 

「して、わざわざ話しかける理由は何かあるんじゃないか?」

青年は何となくだが聞いてみた。地霊殿に連れて行くだけなら猫の姿でも何とか出来そうだし、別に目の前まで来ているのだから無理に姿を現して話しかけるような必要もないと考えてきた。何か世話焼きな性格でもしているのだろうか。

 

「確かにあるよ。」

火焔猫は急にトーンを暗くしていた。言い方は悪いがふざけているかのような口調から急に真面目な人へと変貌した。青年は立ち位置や態度は変えないがその人の話を聞く事にした。何か面白そうだし。」

 

「実は友達を助けて欲しいんだ。」

 

「その友達は今何処にいる。」

 

「その花壇の下の地下通路を抜けた先にある空洞の所にいるよ。」

 

「どうしてそんな事をしている。」

青年はどうしてそのようにするのが冷静に聞いているが不審には思っていた。そのように幽閉している意味がわからないからだ。友達を救って欲しいのに自分で幽閉しているのか主人にそうさせられるのかは判断できないがつまりはそういう事である。

 

「簡単な話さ。先日に起こった間欠泉は覚えているだろう?」

 

「石を割ろうとしていた時に起きた奴か。あれのおかげで変に脱力出来てとても助かった。」

火焔猫はそのような話は聞いていないと思ったが話に食いついているので気分を悪くしてはいけないと適当に相槌を打っていた。

 

「其処に私は怨霊を流し込んで地上に知らせる事にしたんだ。自分で掻き集めた妖力の強い霊を連れてきて地上に放った。それで来てくれたのだろう?」

青年は表情を変えなかった。それこそそんな話は聞いていないと言いたそうにしているが基本的にポケー、としている。何か話したいのだろうがそれは一切しないらしい。少しだけ間はあった。

 

「いや、そんな話は知らない。何やら温泉が出来たらしくてな。入りに行こうとしていた矢先にこの人に会ってそのまま来た。」

後ろの人、それは赤い山伏の帽子をかぶっている烏天狗の射命丸だった。青年は噂話を聞いてその場所に行きたいと思って行動したところ温泉はなくなっている、射命丸に連れて来られているので気勢を削がれている。少々頼み込まれて断ろうとは思えなかったことがいちばんの原因だと思われる。

 

「そうなんだな。でも良いよ。ここまで来たから友達を助けてくれないだろうか?誰かから力を貰ったらしいんだけどその人の名前は覚えていないらしくてね。力は暴走して間欠泉を暴走させる、地底内の温度を高くしているで私も困っているんだ。私が言っても一時的なものだから解決しないし友達を傷付けるのは嫌だし。だから他人に何とかしてもらいたいと思っているんだ。どうか助けてくれないだろうか?」

火焔猫は青年の目の前で命乞いをするかのようにしていた。青年は少し考えているのか少し迷ってからゆっくりと話し始めた。

 

「それは貴方の弱いところから来ている。友達がもし認めて貰いたくて力を求めたのなら貴方の責任だ。それでも他人に迷惑をかけるつもりなのか。」

青年は淡々と言い聞かせるように話した。火焔猫はその言葉にはどうすれば良いのかはよく分からない。青年は目を閉じてゆっくりと踵を返すとそのまま歩き出した。答えは聞くことはしなかった。

 

「射命丸、俺は先に挨拶を済ませておく。一人で行くから何かしておけ。」

青年はそれだけを伝えるとゆっくりと歩き出して地霊殿へと向かった。そして花壇を横目にまた戻って来るつもりらしい。青年は少しだけ怠そうにしていた。

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