青い外壁の中には大きなステンドガラスのあるエントランスへと出てきた。真正面にはステンドガラスを間近に見るための階段があり其処から左右に別れることで二階へと上がれるような構造をしているらしい。
扉から入っ時の印象はとても狭そうな気はするが此処はただ広いだけではなく空間を有効に使っているように思える。ふかふかのソファーと高級そうなテーブルが置かれているのが青年は何となく紅魔館と比較していた。
彼処にはそのような物はなかったが赤いカーペットが一面に広げられていたのは覚えている。此処には青色のカーペットで床が黒色という暗色が基調となっているようだ。階段を降りて来る音がするので青年はその前で待っている事にした。
「こんにちは、私は地霊殿の主人、古明地 さとりという者です。」
その人はやや癖のある薄紫色をして黒色のヘアバンドをしていていてフリルのついた袖の長い淡い水色の服装をしている。ボタンはハートの形をしている。
そして胸元には第三の目があるのでそれが何か力を持っていると思われる。そこから六本の管が伸びているのだが何処まで伸びているのかは頭と腕の三つ以外は分からない。
薄いピンク色の膝下くらいのスカートを着用している。手を前にして深々を挨拶をするさとりという人は何処か生気を失っているかのようだった。青年は不審に感じてじっと見るがそれ以上に真紅の瞳を持つジト目のさとりの方がその目力は強かった。
「俺は堀田という者だ。別に用事はないが地底に来たなら挨拶しておいた方がいいよ、と貴方のペットの猫に言われた。だから来た。」
「ええ、そのようですね。」
一旦其処で話は止まった。何か時を止められたような不穏な雰囲気が青年を襲う。
「間欠泉の事で調べに来たのでしょう。」
悟りは何となく青年に聞いてみた。先日のその騒動で調査の手が伸びたというのならそれは仕方がない事だ。
「いや、別に。」
(風呂に入りたいんだよなー。)
青年はそう思っているらしい。しかし風呂に入りたいとは何なのかはさっぱり分からなかった。それに今のところ何ら関係ない話なのでさとりは少々困惑した。青年は視線をずらしていた。
「では何故ここに来たんですか?」
「用は特にない。」
(あのステンドグラスはどのような模様を描いているんだろうか?)
青年は関係ない事を考えている。さとりは心を読む能力があるのだが言動と思考が噛み合わないのは中々いない逸材とも言える。それだけにさとりは相当困っているが表情には出さない。それこそ何か削り取られたようなそんな気はする。
「私のペットの火焔猫 燐とはどのような話をされましたか?」
「いや、別に。ここに来たなら主人に挨拶しておくと良いよ、言われただけだ。」
(そういえばそんな名前だったな。)
名前もうろ覚えらしい青年はあまり話が噛み合うような感じはしなかった。変に連れている人はいないのかと感じた。
「誰かお連れ様は居ますか?」
「新聞記者が居る。」
(しかしこの人は表情があまり変わらないのだがつまらないのだろうか。)
余計なお世話だと言いたかったが心の中なのでそれは自分の中に抑え込んだ。そうでもしないとどうにかなりそうである。しかも名前をもう忘れられているのがとても悲しい。
「その新聞記者は何処に居ますか?」
「外に居る。少し猫と話をしたいそうだ。」
(記者といってもその新聞は見た事ないんだよなー。)
「そのようですね。分かりました。ところで何か気になる事でもありますか。」
さとりは青年の行動を分析してみようとしていた。
「気になる事か?地底ってどうして暗いところなんだろうか。」
(食事はとっているのだろうか。顔色が悪そうに見える。)
やかましい、そうさとりは感じたが喉元で頑張って止めていた。もうそろそろで出そうだったがそこはさとり自身の根性で止めたものである。
「それは日が入らないからという事ですよ。地上では日はたくさんあるので余計にそう感じるかもしれませんね。」
「いや、皆の顔色が暗いんだ。何か人生を悲観しているようで一見楽しそうにしているが嘘のように暗い。その事を言っているんだ。」
(主人がこれだから仕方がないのか?)
「その事ですか。根深い過去がある人もいるので聞かないほうがいいと思いますよ。私も妬み嫌われている妖怪ですので。」
「そうか。あまりその様には感じない大人しい子の様に見えるが何かしたのか?」
(大人しいよりかは喋らなさそうだけどな。)
「私にはそれだけ人に嫌われる能力を持っていると言う事です。それが理由で妹には逃げられました。」
「妹へと愛が足りなかったのかもしれないな。」
(本当に何なんだろうな?)
「愛、ですか。確かに足りなかったのかもしれません。小さな家で二人で過ごしていましたがある日心を読める事がバレてしまいましてそれから私達は何処へ行こうとも追い出される日々を過ごしてある洞穴から此処へと逃げ込んできたと言うわけです。その様に色々と過去を抱えている人もいるので話は聞かないほうがいいですよ。」
「そうか。色々とあるものだな。」
(にしても心を読めるのは興味深いな。何か有効的に使える手段はないのだろうか?)
恐らくないだろう、それはさとりの回答だった。それこそ何もなかったからこうなってしまった。そして私は妹に逃げられてどうすればいいのかわからなくなってしまった。その頃から妹とは何か溝があったのかもしれない。さとりは静かに目を閉じていた。
「なので私は来る人は拒みません。貴方も来てみませんか?」
「いや、辞めておこう。つまらなさそう、だ。」
青年はそこで言葉を途切れさせた。それこそ何か思い出しかの様で心の奥深くについていた癒しきれていない傷を抉られたかの様に胸を押さえていた。その時にやっと気づいたのだろう。青年が長い時間何をかけられていたのか、そうでもしないと第三の目はあそこまでま大きく開いていないと言う事を。
「来る人は拒みません。ゆっくりと熟考すると良いでしょう。」
恍惚とした表情を浮かべるさとりは何か青年と同じく狂っている。