おじさんと男の子が会ってから三年後、その起因である事件は解決の方向へと向かった。
実は犯人が見つかったと言う話を今朝のラジオニュースでやっていた。少年はその話を聞いていて警察はやはり無能であると思えた。
犯人は目の前にいて自分は辿り着いたのに国家は辿り着かなかった。冤罪をかけて何とか事件の解決を急いでいるらしいがそうせざるを得なかった程におじさんは裏工作をしていた。
「これはどう言う事だ?」
「それは俺が仕向けた。一ヶ月前の事を覚えているか?」
おじさんはナイフを砥石で研ぎながら少年に聞いていた。少年はラジオを聴きながらその事件のことを思い出していた。そういえばあの時は途中で夫が帰って来たはず。その人に疑いをかけて自分は逃げて来たと言う話らしい。
「マンションでの話だな。あの時は大変だったが何かしたのか?」
「ちょっとしたコネを使った。凶器についている指紋をすり替えておいた。その結果どうなるかわかるか?証拠はそれしかないからそれで話を進めていく必要がある。そして俺が警察の署長にそいつを犯人するように言ったわけだ。」
おじさんはさらりと答えた。
それこそ何かに取り憑かれているかのような狂気の笑みをこぼしていたがよくみる光景なので少年は軽く受け流していた。そしてもう一つ細工していることがある。
それは指紋を削り取った事だ。
何に触れようとも何をしようとも指紋は残らない。そしてDNAも抹消した。正確には両者が死亡した扱いをされている。そのついでらしい。
どこで何をしようとも問いただされることもなく犯人として名も上がらない。逆に何かをされても身元不明の死体でしかないので身元判明は何もされないのだが。
「そのようなコネもあったのか。恐ろしい。」
少年は簡潔におじさんに話していた。しばらくラジオを聞いていた少年とナイフを研いでいたおじさんはそれぞれの時間を過ごした。
「おい、逃げるぞ。」
おじさんの声が急にした。
その声に素早く少年は反応してラジオの電源を落としてから付いていく。身の回りの装備は十分にしている。手持ちの砥石に使いこんだナイフを二本をポケットにしまっていつでも出せるようになっている。
そして顔を隠すためのパーカーを羽織っている。偶に警察が見回りに来るのだが基本的に探し出すようなことはできない。近くの木が生い茂っているところへと逃げていくのもあるのだがおじさんから教えてもらった体勢では下からは必ず見つからないようになっている。少年は飛ぶように木に登りその体勢をとる。おじさんはその反対の木で息を潜めていた。
「ここも一応見ておくか。」
ある警察官の一人がこの木々の中に入り込んできた。その様子をおじさんと少年の二人は木の上から覗き見ていた。
「そうだな。しかしホームレスというのも困ったものだ。」
何かボヤきながら警察官の二人は中へと入り込んでいた。
ホームレスにはとてもお世話になっているのでその言葉には体が熱くなるような事もあるが少年は素早く冷ましてその怠業しかけている二人を抜群の連携で上からトドメを刺した。
その速さや正確さには常人のそれではなかった。木から降りてくると首筋を切りつけながら地面に着地して足首を切り裂いた。前へと倒れた二人の背中を同じようなタイミングで神経を刺した。
「ナイスだ。貴方に任せてよかったよ。今日は豪勢にしよう。」
「ありがとう、おじさん。」
少年は素早く腕を切り落としていた。毎日のように鋭く研いでいたので普段なら切れないようなものでも豆腐を切るかのように出来てしまう。そして手慣れた力の入れ具合でサラサラと無表情で切っているのがまた嫌な空気を流している原因であった。
「俺について来てよかっただろう。」
「俺は貴方についてこれてとても良かった。」
袋に詰め込む二人を誰も見つけることも捕まえることも出来なかった。それはさせない為にここまで逃げて来ているので其処はおじさんの手の内で起こった出来事でしかないと少年は思っていた。必然であるかのように起こったその出来事に二人は拳を突き合わせて静かに喜びをかみしめた。
その晩、骨から肉を剥ぎ取り一口大に切り分けた。
そして新聞紙を集めてゆっくりとじっくりと焼いていた。静かに音もなく燃えていく新聞紙を見つめながら少年は今日の成果を見ていた。おじさんはとても喜んでいる。
そしてその力は大体は見て来た。それだけの年月をそれだけの近い距離から見ていた。覚えないという方がおかしいと思えるほどだった。
「貴方も十分に腕を上げた。どうだ、これからは一人で旅に出るのは。」
「いや、俺はまだ出るつもりはない。」
「そうか。それならまだ教えてやりたいことがあるから学ぶと良い。」
おじさんは剥ぎ取った肉をおいしそうに食べながらゲラゲラ笑った。今日は豪勢に行こうと言った通りにビール缶を片手に話してくれた。少年はその後ろ姿を見ながら成長しているので憧れの眼差しがあったに違いない。
「そうですか。それは嬉しいものです。」
少年も同じような格好で燃えた火を囲みながら今までお世話になった人と同じものを食べていた。基本的にこのような事はなく、大体は盗んだものを食べて過ごしていた。
「はっは、いいと言うものよ。好きな時に独立しろ。」
おじさんはそれだけを伝えると後は少年に渡していた。おじさんは懐から煙草を取り出す。その銘柄はいつも違うが今回はlayという名前であるらしい。
どこで拾ってるのかは分からないが今回はそれのようだ。そして少年の隣で美味しそうにそして煙の味を噛み締めるようにゆっくりと紫煙を吐いている姿が何とも言えない。
少年はその横から見える自分の光景を羨ましそうにしているがまだそれを据える年齢ではなかった。その事は知っているので少年はそれを恵まれようとはしなかった。
その内自分でやろうとしているその野心は誰にも負けそうではなかった。その事には此処にいる全ての大人も驚愕するようなことが起こるのはまだ先になりそうだった。