岩肌に囲まれた鬼火で灯された地下世界。
その中を飛行する二人の人間と一人の妖怪がいた。
赤い服装で頭に大きい同じ色のリボンをつけた博麗 霊夢。
黒いとんがり帽子に白い前掛けをした魔法使いの霧雨 魔理沙。
白いゆったりとした帽子で紫色のドレスを着込んだ人物。そして博麗神社のバックアップとしているいる大妖怪、八雲 紫。
その三人は上空から繁華街を通り過ぎてある場所へとたどり着いた。青い壁でこじんまりとした小さな館。地霊殿と地底の人々からは呼ばれているがここにいる三人は何も知らなかった。
「此処ね、やっと着いたわ。」
霊夢は恨めしそうに言う。少々蒸し暑いこの中は霊夢の機嫌を損ねるのには十分である。元々過ごしにくい環境を嫌うので余計なのかもしれない。
「この館が一番大きいからそうだぜ!」
箒に跨っている魔理沙はその上で拳を上に突き上げて大いに喜んでいた。無邪気というのかはたまた暴れん坊と言うのか。その事は放っておくとしてその二人を後ろで扇子で口元を隠して小さく笑う。何かを知っているようだがその真相は闇の中なので誰も知る事はないだろう。
「此処なら間欠泉の噴出の原因がつかめるかもしれないわ。」
紫はわざと二人にけしかけるように上からの目線で伝えた。スキマという紫特有の能力を使えば一発で辿り着くのだがそれをしようとしないのは相手を驚かせないためにしている。別に館の中に入ること自体は容易だがその先で何があるのかは予想がつかないので何も言わないということになっている。
「それで、紫は何が原因だと読んでいるのよ。」
間欠泉から噴き出した地霊と呼ばれる悪霊がなぜ出て来たのか、それを解決するためにここまでやって来たと言うのが第一目標なのだがその先をあると確信している霊夢はまず知っていそうな紫に質問を投げかけた。紫は少し考えてから話す。
「地霊の暴走と読んでいるわ。そうでもないと本来は危険性がないもの。」
「それならその暴走を止めたらこの異変は終わるのね。」
「よく分からないから一から説明してほしいぜ。」
魔理沙は二人の会話に置いていかれているらしくどうしようもない疎外感を受けているがそれ以降は何も言い出せなかった。二人には根深い関係がある。幼い頃から知っていたとは言え代々続く博麗の血筋を見守って来たのは八雲家であり、今の霊夢は反抗をするようなことは出来ない。もししたとしたら、それは幻想郷の間接的な終わりを示している。
「要は霊の退治すればいいのよ。」
霊夢は話の内容を理解していない魔理沙に不機嫌そうに話した。元々こんな物なのだが今回の異変解決の際は余計にそう思えた。魔理沙はより一層の疎外感を感じたのだがそれ提言しそうとするのを上回るほどに霊夢は機嫌を損ねていた。
「分かったぜ。また後で伝えて欲しいぜ。」
魔理沙は一旦話の中に入る事はしなくなった。それよりも先に下見を兼ねて目の前にある青い小さな館まで行こうとしていた。抜け駆けと言うつもりはないが魔理沙は興味本位でその場所を見ていた。そして誰かいるのを見つける。どうやら二人のようだが赤い髪をしていて緑色と黒色のドレスを着ている人と黒髪で赤い帽子を被っている人が居る。魔理沙は二人を置いていくようなつもりはないが先にその場所へと辿り着いた。
「よぉ、射命丸。ここで何しているんだ。」
「魔理沙さんですね。今日は宜しくお願いします。」
何処か最初から取材をする気満々の射命丸だが何故そこまで前へと来れるかは謎だった。魔理沙は箒から降りて右肩に担ぐと黒いとんがり帽子を被りなおしてから話を始める。
「流石に早過ぎないか?」
「ええ。実はですね、偶然ばったりと間欠泉によって出来た亀裂を見ていた人について来たらこうなりました。」
「そいつは誰だぜ?」
魔理沙は射命丸の顔を覗き込むように話しかけた。元々怪しい記事しか書かないのでそのような扱いをされても可笑しくはないが真っ当な新聞を書いている記者なので一概にそのような事は言えない。ただいろんなところに出没するので怪しいということである。
「今、地霊伝の主人様に挨拶しに行っていますね。」
アハハ、と軽快に笑い飛ばす射命丸を細い目で見ていた魔理沙だがその隣には誰がよく分からない人がいた。その人は上から見ていた時に射命丸に押されながら取材を受けていた人のようで背の高いイメージが魔理沙にはあった。
「で、その人は誰だぜ?」
「この人ですか?主人様のペットのようです。火焔猫 燐という名前ですよ。」
「へぇー、何か面白そうな人だな。」
魔理沙は射命丸の説明を聞いているのか、それとも聞いていないのかそれぐらいの反応の薄さであったがそれもすぐにやめて話しかけていた。
「ペットといっても人型だよな。何か違法な気がするぜ。」
魔理沙は疑いの目で見ているがいたって普通に火焔猫は答える。
「あたいは元々猫の妖怪だよ。長い年月のうちに人と話が出来るようになったんだよ。」
「と言う事は随分と長い間ここにいたと言うことになるのか。」
魔理沙は担いだ箒を持っていない左手で顎の辺りを触って少しだけ考えていた。何かあった訳でもないが人の考え方の違いなのかもしれない。
「飽きないものだな。」
「さとり様はとても優しい方なので偶に地上に出してくれるんです。いつも目隠しで連れて行かれるので何処にあるのかは全く分かっていないんですが。」
「さとり様、は此処の主人で合っているんだよな。」
魔理沙は話の理解をするために火焔猫に聞いていた。別に何か問題があると言う訳ではないが何かあったのは間違いな無いだろう。火焔猫はそれであっていると言う旨を伝えた。
「ペットには優しいんだな。それなら確かに飽きなさそうだな。」
「そうなんですけど。頑なに此処から出ようとはしないんです。」
「やっぱり一緒に遊びたいんだな。分かるぜ。」
「確かにそうなんですけど昔とはまた違うように思えてきたんですよね。」
「それは何なんだぜ。」
魔理沙は何か話の結末へと向かっている事を感じ取って火焔猫に相槌を打って話の展開を引き出そうとしていた。