青年放浪記   作:mZu

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第172話

少し言葉を詰まらせていた。

 

他人に話しても良いのだろうか?その思いで火焔猫の心はいっぱいになっていた。

 

別に話しても解決してくれるとも限らないしそれを逆手に取られる事もあるのかもしれない。妬み嫌われているさとり妖怪なのでそのような事があってもおかしくはない。いや、そちらの方が必然とも言える。

 

「実は、最近生きている気をなくしているというのか。やる気というものも感じ取れないんです。」

火焔猫にはそれだけの覚悟があった。それだけ信頼しているからこそ話しても良いのだろうかと苦悩した。魔理沙はそれをあっさりと切り返した。

 

「なら、強引に連れて行くだけだぜ。」

左手でグットのポーズを取っている魔理沙は言葉にはならない革新というものがあった。そして火焔猫にも何か変えてくれるのではないかという何かが感じ取れた。

 

「でも、今はそれよりも解決しないといけないことがある。もしかしたらそれが原因で来たのかもしれないし。」

火焔猫の気迫も薄くなっているのを感じた魔理沙は元気付けようと大丈夫だぜ、とだけ伝えた。と言うところで上空から遅れてきた二人が現れた。

 

「妖怪ね。退治するわよ。」

 

「早い、早いぜ。霊夢。落ち着けよ。」

魔理沙はあまりの巫女としての仕事を全うしようとする霊夢に待ったをかけた。危なかっしくて見ていられないがそれが博麗の巫女の底力となればそれなり仕方がない事になる。

 

「霊夢、まずは話を聞いてからにしなさい。この人に危険性は今の所ないわ。」

霊夢の後ろにいた紫は扇子で口元を隠しながらゆっくりとしていた。と言うかいつも話している時はそうなるので其処は仕方がないことだと思われる。魔理沙は深く帽子をかぶって視線を切っておいた。

 

「紫はそう言うならそうでしょうね。」

霊夢はよく理解しているのですぐにお祓い棒と札をしまった。攻撃をするつもりはないと言う意思表示になる訳だが何か違うところがあると思われる。

 

「それでさっき話していた奴というのは何なんだぜ。」

魔理沙は霊夢の暴走を紫が止めてくれたことに感謝しつつ、火焔猫に事の経緯を聞こうとしていた。

 

「その事だね。実は友達の力が暴走してどうにかして止めて欲しいんだ。してくれないかな?」

 

「しないわ。それはあなたが止めれば済む話だもの。」

 

「そこを何とか。そうしたらこの地底の温度も間欠泉も起こることはないんだ。頼むよ。私一人では止められないんだ。」

火焔猫は必死に訴えかけた。

 

魔理沙は同情的な表情をして、明らかに嫌そうな表情をしている霊夢、そして何があるのか不安そうにしている紫。そしてその三人に挟まれて少し気が滅入っている火焔猫は次に何をすれば良いのか、その判断を誤れば倒されるのだろう。不安で胸がいっぱいであった。

 

「仕方がないわね。やるわよ。」

嫌々そうに話している霊夢だが異変の解決に繋がると言われたらそれはやらないわけには行かない。それにこのまま何もしないで帰るのは博麗の巫女としては出来ない。

 

「なら私も協力するわ。異変の解決になるのならね。」

紫もそこそこ乗る気のようであるので三人の意見は一致したと思われる。

 

「なら行きましょう。」

霊夢は言うが火焔猫も射命丸も魔理沙も動かなかった。その事に激昂している霊夢だがある意味ではどうしてなのかはよく分かった。

 

「それは待って欲しいぜ。まだ人数が足りないんだ。」

魔理沙は霊夢達にその事を伝えた。射命丸と一緒に異変解決に乗り出した人物がいると言う。その人の名前は知られていないが基本的に面識のある人だった。

 

「人増えてないか?」

淡い青色の帽子を被って煙草からは黒煙を噴き出している。腰には二本の剣を携えていて武闘派に見える見た目、それに反するゆるりとした短パンを履いていた。

 

「幻霊。どうしてここに居るのよ。」

 

「やめろ。話がややこしくなる。」

青年はゆっくりと煙草を唇から離して誰も居ないところへ煙を吐いた。それからゆっくりと時間を過ごしているのか何も話さなかった。

 

「そういえば名前は持っていないのよね。」

霊夢は何かを思い出したかのように話していた。青年はその言葉にうん、と一回頷いてから話す。

 

「そういう事だ。人名もなければ偽名もない。俺は俺だ。」

 

「どうだった?とても優しい方でしょ。」

火焔猫はさとり様に会いに行かせた張本人であるが優しいイメージしかないので楽しそうにしていた。主人が褒められると言うのはペットの身としては嬉しいものである。

 

「いや、悲しさを体現したような人だった。」

その青年の発言にはどこか気を落とした火焔猫だが本当の姿を知らないだけなので発言した本人は何も気にしていなかった。

 

「そう。気を取り直して行こうか。」

火焔猫も何か読み取れたのだろう。その青年の変化には。

 

「何か雰囲気違うな。」

魔理沙はそのようなことは気にしない。気になるから話しかけた、それだけなのである。

 

「服装が明るくなったからそのせいだろう。」

そうかもしれないな、と魔理沙は返すが他の三人は気付いていた。何か奥底から湧き上がる憎悪を剥き出しにさせているような気がしている。触れば怪我をするような危ない人物へとなっていた。

 

「花壇を回せばその道には行けるんだったな?」

 

「そうだよ。任せてよ。」

火焔猫は花壇を縁取っていた物を回し始めていた。射命丸は手を貸していた。その真意は多分ネタ欲しさのところがあるのだがそれに気づくのはまだまだ先になるのだろう。そして魔理沙も楽しそうに回し始めた。それから霊夢も参加し始めていたが二人だけは何もしていなかった。

 

互いを見つめ合いながら何かを話していた。その声も口の動きも読み取れない。言葉なき会話を青年と紫はしていた。何が始まるのかは霊夢は知らないが何か不穏な事になるそうなのは目に見えている。

 

「そう言うことだ。」

青年はそれだけを紫に伝えると花壇で閉ざされていた道が開いた。その中は岩肌を剥き出しにさせていてその中からは熱気が出ている。四人の力で横に押されていく花壇を横目に青年はチラッ、とその中をのぞいただけでそこから何か言うことも何か行動を起こすようなこともしなかった。

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