青年放浪記   作:mZu

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第173話

花壇の下の空洞を抜けたその先、其処には噴火寸前のように赤くなっている地面があった。その上で大きな翼を持った人物がいる。

右手には木筒のようなものを持っていて左足は象のように太くなっていた。そして後ろからなので表情はわからないが白いマントをしているのはよく見えた。

 

「あれが友達なのか?」

魔理沙はその息を呑むような光景とやばそうな空気を放っている現状に気が滅入っていた。熱気はひどくあまりにも酷い状態であるのだから当然といえば当然であるがその先に何があるのかは予想はつかなかった。

 

「何か今までとは全く異なるもののようね。」

霊夢はそれまでの経験からものを言うのだが確かにそれは異様な存在となっていた。霊夢は妖気を感じ取ることができるが神の力は感じ取れないと言うわけでもないがはるかに精度は落ちる。そして目の前にいるのはその両方を持ち合わせている怪物というのが正しいような人だった。

 

「少し様子見しましょうか。」

紫は得意なスキマからの偵察をしている。遠隔とは言え空間を切り裂いて状況を判断することができるのでとても重宝されている。これで異変を解決へと導いたものもあるが青年はそのことは知らない。

 

「それは好きにしろ。コンタクトを取ってこようと思う。」

 

「やめなさい。」

青年が降りようとしているところを止めたのは霊夢の左手だった。強く握られているので物理的には逃げることはできてもその後は困るわけだし、そもそも心理的に逃げようとは思わなかった。

 

「どうした?」

 

「今、紫が偵察しているのよ。だからその邪魔はしないでちょうだい。」

霊夢は小声で話している。少々響くからなのかは知らないが青年は何か悪い気がするので其処でやめておいた。

 

「何か太陽神の力が組み合わさっているようね。とても厄介だわ。」

紫は爪を噛むような程悔しそうにしていた。それ程に力が強い妖怪であるらしいが何がどう凄いのかはまた違う話になる。

 

「何が厄介なのよ。」

霊夢は紫がそのように言う理由がよく分からなかったので聞いてみることにしたらしい。火焔猫は心配そうに友達のことを見ていて射命丸は大人しくメモ帳にその人のことを書いていた。そして青年は壁にもたれ掛かっていてその反対側に魔理沙が立ってその様子を見ていた。

 

「核の力なのよ。威力が高いから変に避けたら崩れるかもしれないし当てれば即死になるわ。」

紫はそのように説明するが核と言うものを知らないので何が大変なことなのかは聞いている霊夢には伝わらなかった。魔理沙も同様であるらしく何が可笑しいのかさっぱりと言う感じだった。

 

「その力は絶大なものよ。私のスキマではとても対処しきれないものよ。」

紫はそのように伝えるのだが霊夢にはその真意はすぐに理解できた。紫では対処できないと言うことは参加しないと言う暗示でもあった。実質五人で大きく戦力を削いだ状態で戦うことになるのでその事はある意味敗北を意味にしている。

 

「それがどうした?紫がそれでは巫女の力もたかが知れる。」

青年はその先の光景を見ながら紫の弱音をバッサリと切っていた。とてもではないが馬鹿馬鹿しいのだろう。

 

「どう言う意味よ。」

霊夢はついでとばかりに攻撃されたので青年の胸ぐらを掴みそうなほどだった。だが青年は冷静に状況を分析していた。

 

「そんな弱気では勝てる相手にも勝てないだろうなと言う意味だ。」

簡潔に答える青年だがその答えではとてもではないが通じるようなものではなかった。

 

「じゃあ、もう勝てないと言うわけなの?」

 

「いや。やり方、人の使い方次第では行けるだろう。火焔猫、何か友達として弱点なんかは知らないか?」

 

「何もないよ。とてもではないけど勝てるような見込みはなくしてきたよ。」

 

「そう弱気だとやりたいことも出来なさそうだ。」

青年はそれだけを言うと一番間近で見ている二人の間を通り抜けて下へと降りた。誰も追いかけるような事はしなかった。それだけ間に合わなかったと言う事なのだろう。

 

「誰?」

見た目の割には優しい声がしていた。何処か寂しかったのだろうが其処まで容赦できるものでもない。

 

「堀田という者だ。よろしく。」

 

「堀田?何か用かな?」

その人は確かに上部分が黒っぽい大きな翼をしていてその上からは白いマントをかけている。右腕は確かに木筒のようなものであるが何本か二尺ほどの金属のようなものが棒が刺さっている。そして右足も金属が溶け出したような形で何処か異物のように感じれた。

 

「実は友達がどうにかして欲しいと言われている。」

 

「お燐だね?私は霊烏路 空。お空って呼んでね。」

何か子供のような気がするがそれだからこそ紫が言っているような凶悪な力を持っているので危険とされているような気はする。

 

「ところで暴走させていると言う話なのだが何か関係あるように見えないんだが。」

 

「そうだと思う。君には使う力もないからね。」

ヘラヘラとしている訳だがお空は確かな力を持っているようにも思える。しかしその根拠というものはなく何もないようにも思える。強いて言うならその右手のものと右足のものか。

 

「そうか。それなら一つ聞いて欲しいことがあるんだ。」

 

「何?」

 

「間欠泉の噴出や熱気を放出させるのをやめて欲しい。」

 

「分かっているけど。制御の仕方を忘れちゃったんだよね。」

 

「そうなると今は何も出来ないということか。それは困ったな。」

 

「ごめんね。どうしてなのかはまだ分かっていないんだ。」

 

「それはお空の責任ではない。だから大丈夫だ。」

青年は少しだけ危惧していることがある。何かのために使おうとする時その人は強力な力を持っているほど頭の切れる人ではないといけない。冷静に判断してどのくらいの力を使えばいいのかそれを見定める必要がある。核と言う得体の知れない脅威に対してこの人の知能は言っては悪いが良くない。

 

「そうなの。ありがとう。」

 

「だが、これは本気で制御する方法を考える必要があるな。何か案はないか?」

 

「ううん。」

 

「そうか。それならその力を完全になくす事はできなさそうだな。」

途中からは青年の勝手な判断であるがどうにかするような方法はないように思える。それだけ強大であるということは見ていてよく分かる。

 

一面を岩で覆われていて、溶け出しているような赤いものが見えるこの場所で大きな翼を広げた太陽神は平然とした顔でいた。

 

魔法により気温を下げて頑張ってはいるがそれでも限界というものがあるのは仕方がない事だ。永続させることも出来ないし、何より使い勝手は悪いので偶に使わなくする必要がある。

 

その時に伝わる地面からの熱気と周りからの押し込まれているかの様な熱気には少々参ってしまうところがある。青年はそれは口に出さなかったが段々と表情には出て来ていた。

 

「大丈夫?なんか熱そうだよ。」

 

「いや、気にするな。ところでどの様な威力が出せるのか少し見せてくれないか?」

青年は相手の持っているその能力がとても気になっていた。それこそ核という未知のエネルギーでどのようになるのか、何が起こせるのかをよく知りたかった。青年の興味が尽きる事を知らない。

 

「ごめんね。もう出ているんだ。そしてこれが私の最低限。」

その言葉は青年の好奇心に火をつけた。ただその場所にいるだけで何もしていないのにここまで影響を与えているほどの力を持っているということが不思議に思えた。

 

その事は良いのだがその執念とも呼べるものは並々のものではないという事は見ていればすでによくわかる様な事であった。まるでガソリンに火をつけた様な見るだけで危険だとわかる、それくらいのエネルギーは青年も発揮していると思われる。

 

「そうか。それはこれからがとても楽しみだ。」

青年は左手で顎をさすりながらとても楽しそうにしていた。それはもうおもちゃを与えられてどの様に遊ぼうか考えている、そしてどのような方法を使えるのか有効に使用するために頭を使っていた。他人という事を忘れている青年にお空は少々ドン引きしている。

 

「楽しみ?よく分からないね。」

 

「よく言われる。湯を沸かすことは出来るのだろう。それなら温泉を作ってはどうだ?」

 

「温泉?よく分からないけどさとり様に頼んでみてよ。」

 

「それで気になるのだが一発だけ弱めのものを見せてもらえないだろうか。」

青年は興味本位なのだろう。それともどれくらいの威力を持っているのか、上の方で見ている人たちにも見せてみるのも良いだろう。

 

青年のわがままというふうで言われてたらそれで終わるのだがお空はとても楽しそうにしていた。

 

「どれぐらいが良いの?」

 

「岩を壊せるくらいか。それぐらいで良さそうだ。」

見せるのにはそれくらいで良いのだろう。青年は安易に考えていた。何が危険であるのか、それは未熟や無知が一番いけないものである。

 

パチュリーとの魔法研究の中でどれだけ知識を積んでおく必要性はよくわかった。全てを紙に書いてみる事を始めたのはアリスから教えてもらったのか。

 

色々とあったしそう言われると何かしていたようにも思えない。それぐらいつぎ込んできたのだがまだまだその二人には追いついていないというのが現状である。お空からは何か学べることがあればと青年は考えていた。

 

「分かったよ。行くよ。」

右腕についている木筒には電気のようなものが走った。

 

金属の棒のようなところをパチパチと素早く移動していく電気に青年はどのように出来ているのか、ふと考えていた。青年はそれからある事に気づく。

 

筒の先が白い玉のようなものができている。その大きさは拳くらいの筒からすると小さめなもので何か可愛らしく思えてくる。お空はその間何かを制御をしようとしているのだが青年は今は話しかけるべきではないので控えているが興味津々だった。

 

それこそ強大な力が眠っているのだろうがそれを起こすためには何をすれば良いのかとてもではないがよく分かってはいなかった。ぽよっ、と離れた拳くらいの球は地面に当たって大きな衝撃波を放った。

 

青年は体に一本の線を書かれたのかと思うほどで少しだけ怯んだ。そして青年は思う、これが核と言うものなのか。とても興味深い、そしてこれをどの様に扱えるのだろうか、どうする?それだけで青年の頭は一杯になっていた。

 

「凄い力だ。」

青年はそれだけの短い言葉しか出なかった。お空はその言葉を嬉しそうに受け取っていた。素直な人なのかも知れない。青年は何が起こったのかそれはよく分からなかったが研究や実験を繰り返せば何か掴めるものもあると思われる。

 

何をすれば良いのかそれだけがどうしても謎のベールに包まれている。解きたいと思う気持ちを阻害したのは意外な人物だった。

 

「アンタ、何をしたのか分かっているの?」

 

「実験だ。」

幻想郷を守るべきである博麗の巫女である博麗 霊夢。青年とお空に向けてお祓い棒と札を出していつでも戦闘に入れる状態でいるので二人はすぐに気を引き締めた。まだその辺りでは優しいところであるが状況は悪いのは青年は分かっている。

 

「そんな危ないものは今度どうなるか分からないわ。潰すわよ。」

 

「やめておけ。それは使い方次第だ。」

青年は戦闘にしたくはないので霊夢を冷静にさせようとしていた。

 

「そんなわけないでしょう。危険なものは危険なのよ。それはいつの時代も変わらないわ。」

霊夢は青年の意見には耳を傾けないらしい。それは困ったものだ、と青年は楽観的に判断したがより一層状況が悪くなったように感じる。

 

「なら巫女の力も危険なものではないか。世の中には危険なものは沢山ある。その中で何回も思考を繰り返して生み出されたものは先人の遺産として今の人たちは利用している。それは分かっているだろう。」

 

「例えば何よ。」

 

「物を燃やすことができる火だ。それは調理をするために利用するものだし、暖をとるのにも最適だろう。」

 

「そんなものとは比にならないわ。」

霊夢は札を三枚投げつけた。青年は冷静に避けてから霊夢と対峙する。どうやら外れていく軌道であるらしくお空には

当たらなかった。青年だけを狙ったものであるらしい。

 

「宣戦布告か?」

青年の声は一気に闇へと落ちた。

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