満面に広がる赤い海の上で二人は対峙していた。
一人は危険視している人物を消すために、もう一人自分の欲望を満たすためにその場所に立っていた。お互いが不純と動機を貶しあう中で一方が攻撃を仕掛けた。もう戻る事はないのだろう。
「もう、していたわよ。」
赤いリボンを頭につけたつり目をしている巫女で此処には敬愛すべき恩師とただの友人ときている博麗 霊夢はその表情そのままに話を進めていく。
何かあると言うわけでもないがもう既に一つのことが終わってしまったようにも感じれる。
「協力してくれ。平和的に異変を解決したい。」
青色のキャップ帽を身につけた肩と胸元にポケットのついた温泉に入るつもりだ妻だが射命丸と話しているうちに巻き込まれている青年は霊夢のことは話に対して返した。
平和的に穏便に済ませようとする青年をバッサリと否定する。相反する立場を取り合う平行線の二人はその場で不毛の争いを始めようとしていた。
「そんな事は出来ないわ。あれは危険な力なの。それは分かっているでしょう。それで十分な退治する目的になるわ。」
霊夢は冷徹にも生き物として感情を持っていないかのような様子で青年はどうしたら少しは理解してくれるのかそれを探っていたが何か見つかることはない。
それに何がよくて何が悪いのかそれを語らずに一概に否定しているのがどうしても許せなかった。
「俺は霊夢のその思想が危険だから此処で退治する。それでも理由は十分なのか?」
もうどうにでもなれと物を投げ出すような気分で言葉を発してみたが何か変わるような事はなかった。それに霊夢には一つこれだと決めると中々変えようとしない悪い意味では頑固さを持ち合わせている。青年はそれにうんざりとしているほどだった。
「十分なわけないでしょう。あれとこれは訳が違うのよ。」
「人間ってのは、その思いの丈で物事を動かし方は変わる。」
青年は諦めたように柄に手をかけた。それは霊夢も感じ取ったらしく眉を動かして嫌そうな表情をしていた。それこそ何か問題があるのかと言いたくなるような気もするが何かあるのかと言われると微妙に無かったりする。
「面倒ね。でもは向かうのなら先に潰すだけよ。」
「俺はどうしてもしなくてはいけないのか。」
段々とトーンが上がっていく霊夢とは裏腹に青年は気分を落ち込ませていた。
不毛な戦いなのは分かっている、しかしそれを止める手段もない。ちょっと威嚇のはずだったのが本格的になるとは思いもしなかった。
冷静になれなかったのは自分かもしれないと青年は思ってしまった。虚ろな目でゆっくりと身構えているその隙を霊夢は急に接近戦へと持ち込んだ。
左手に持っていたお祓い棒を斜め下方向へと振る。青年は気分が落ちているのか生きているのかさえ判別つかないほどになっていたがすんなりと後ろに避けて霊夢の一撃は受けなかった。
体勢を崩すのであろうその先を狙ってお札を二枚投げ込んだ後に霊夢は持ち方を変えて青年を突こうとした。どちらかを避ければどちらかには当たる。霊夢はそう思っていた。
しかし、青年は札をまとめて剣の周りで回すと霊夢の突きを首筋を預けるようにさらっ、と避けてその表情を見つめていた。青年の黒い瞳はまるで白く濁っているかのようで何を映しているかはよく分からなかった。ただ視線が真っ直ぐと霊夢の方を向いているのを覚えている。
霊夢は巫女としての勘が危険だと教えたので一気に飛び退いた。そして着地してから更に二歩下がった。その表情は悔しそうな、恨めしそうな感じなのだが青年は霊夢のことは見ていなかった。
「お空、此処はお前は関係ない。出来るだけ離れていてくれ。」
青年は霊夢の事など目の中に入れていなかった。それこそお空の身の安全を優先していた。その真意は知らないが霊夢が不満に感じたのは確かなようで何もそこからは進まなかった。
「何よ?私の事は放っておくのね。」
「何か含んでいるのか。」
青年にはどうしてもそのようにしている霊夢の心情は読み取れなかった。しかし青年も霊夢をどのように説得するか、お空の力をどのような利用できるのか、それだけを考えていた。別に自分のことは投げ打ってでもと言うわけではない。自分のしたい事をしたいだけである。
「何も。」
霊夢の冷徹なその言葉には青年も少しだけ身を引いた。此処からは何か起こせるようなことはない。だがそれだけの間合いであることは白玉楼で見ていた。
何かあったのかそれとも何もなかったのかそれはその時の青年には分からなかったが今では分かる。何処までが相手の間合いであり、自分の間合いがどれだけ狭いのか。
その証拠に今攻撃を受けそうになっている。霊夢の札は青年の横から遠くまで行くような弧を描いてやって来る。青年は身を倒して走り出すと一気に間合いを詰めていた。
その速さ、正確さに流石の霊夢にも度肝を抜くようなものであるが経験のある霊夢の方がそこは一枚上手だった。上に投げた札を雨のように降らせた。
ある程度は弾けても一枚ぐらいは受けてしまうものである。その中で青年は一枚を攻撃を受けるようなことはなかった。もうそれは経験しなかった事であるが霊夢もそれで判断を誤るようなことはなかった。
一枚だけ緑色の札を忍び込ませていた。その効果は爆発近くを通れば起爆するようになっている。それでも紛れ込ませていたところには近づこうとしなかった青年。それを止めようと最終奥義を使用する。夢想封印、博麗の巫女に代々伝わる妖怪退治の為の最終奥義とされるものである。
青年は間近で受けていたのでそこで足を止めた。そこからは素早く下がるが後ろからの札には気づいていても何もできなかった。背面からの爆発からの夢想封印の弾に当たった青年はその破壊力を一身に受けることになった。無残にも地面を転がされている青年を受け止めたのはお空だった。青年は諦めたようにお空のしたいままにさせるつもりだった。
「なんでそんな不毛の争いなんてするの?」
「アンタを倒すためよ。」
お空の声はいつものそれではなかった。
きっと怒っている、青年は翼に包み込まされてる中で何か嫌なものを感じた。