破滅の咆哮、ある雄叫びの聞こえたその頃、対峙していた二人はその場で何をすればいいのかさえよく分からなかった。
目の前の赤く染まった物がこちらを向いて煙を吹き上げながらゆっくりと歩いている。それがカウントダウンだと、二人は感じていた。
半ば諦めた魔法使いを巫女は厳しい叱責を飛ばして目の前の事に対処しようとしているがそれが上手くいくとは限らないのはもう分かりきっていることだった。
「もう少し耐えてくれ。」
その二人に後ろで結んだ黒髪を揺らした青年は何処からか叫んでいた。その声には二人は呼応する。明らかに二人とは違い自信に溢れている青年を誰も止めようともしなかった。
それだけの気迫を発していると言うのが一番分かりやすいものだと思われる。それだけで二人がどれほどに勇気付けられたのかは知らないが何を根拠にしているのかは謎のままだ。それで聞いた。
「単純な理由だ。火焔猫にお空の対処を教えてもらった。それと今の状態を。」
青年の自信の根拠ではあるらしいが話している暇はないと青年の表情を向かなかった二人だが次の一言でその事は関係なくなってしまった。
「今はほとんど動かないらしい。かなりの迫力はあるがな。」
「それは本当?確かにあまり距離が近くなっているようには感じないわね。」
「そうなのか。なら、少し話を聞かせてくれよ。」
「要は今はエネルギーを放出している。それで周りを赤く染めている。それを内面へと向かわせると弾幕は撃てなくなる。それをする為には右腕の制御棒と呼ばれるもを破壊する必要があるがそれは火焔猫がしてくれる。その後はどうなるのかと言われると肉弾戦になるから魔理沙には活躍できそうになさそうだ。」
青年は最後の方は言いづらそうだった。それだけ言いたくないことなのかそれとも魔理沙のことを気遣っているのかは分からないが青年の一応の配慮として取っておくと良いのだろう。
「如何してだぜ?」
「魔理沙、簡単な話、あのエネルギーが拳に乗るとしたらどうする?」
青年は簡単な事を尋ねた。これまでずっと見てきていた魔理沙なら答えには迷わないだろうと青年は見ていた。
「一撃死、って事か?」
少々迷っていたがその発言には青年はうーん、と悩んでいた。期待通りの答えではないらしい。青年はそれから言いづらそうにしていた。
「掠るだけで、吹っ飛ぶ。それだけ太陽神の力は強かったと言うことだ。」
その言葉には傍で聞いていた霊夢でさえ恐れていた。青年は確かな目があるのかはどうかは知らないが少し誇張してでもそれぐらいの事は言っておかないといけないと思える。その言葉は二人には重たく聞こえていたらしい。
「そうなるとどうしたら暴走は止められるんだ。そうなると胸元に赤い目が現われる。それを破壊すればいいらしい。その代わりそれだけ本気で潰しにきている事を忘れないでほしい。だから火焔猫は地霊を出して増援を要求したんだ。」
「そういう事ね。そうなると魔理沙は本当にお荷物も同然なのね。」
「そうだな、マスタースパークで援護になるのか。」
「その話はまた後でしよう。今は火焔猫が破壊出来るように気を反らせておかないといけない。それは魔理沙に主に任せることにする。此処で大いに活躍してくれ。」
「分かったぜ。行って来るぜ。」
魔理沙は得意の箒で空を滑空する。それから何処からか八卦炉を取り出してそれこそ十八番とも呼べる魔理沙の魔法を使い始めた。
「マスタースパーク!」
最高に気分が乗っているのか、その叫び声は下にいる霊夢と青年にも伝わったのだろうしその先にいるお空に伝わったのだろう。一身に受けた一撃に動きを完全に止めてまともに食らったのでそれなりのダメージは期待できる。
「ねぇ、聞きたい事があるんだけど。」
「何だ?」
霊夢はこの状況ではとても小さい声で話していた。いつでも中立的にそして冷酷に倒していく巫女だからこそこのような反応をしているのか、と青年は勝手な想像をしていた。
「地霊殿の主人はどのような人なのよ?」
「行かない方がいいだろう。あれはお空よりも危険な能力を持っているからこの地底で自ら籠っている。」
「その能力は何よ?」
「心を読む能力だ。ある意味では知られたくないことも何もかも筒抜けになる。」
「それは危険ね。」
「だが今更そのような事を聞く必要があるか?」
「いえ、紫が少し嫌な事を言っていたのよ。」
霊夢の声は地底にでも潜るかのような陰気臭い声をしていた。巫女としての勘が嫌な気を感じているのか、青年には関係ないのであまり詮索はしなかった。
「主人を潰すなんて。」
「そうなると面倒な事になったがどうだか。」
青年は微笑にも似た表情をして霊夢の発言を軽く受け流した。まるで興味がないと言わんばかりなのが妙に鼻に付く。
「何か確信があるの?」
「会ってみるといい。直接は聞いていないが不自然な反応が多かった。見ようとすれば無差別に見れるのだろうな。」
「流石の紫でも難しいかもしれないわ。」
霊夢のその自信はそれまでよく見てからなのだろうと青年は感じていた。その事は今は放っておくとして完全に動きを止めたお空のことを青年はじっくりと観察していた。
赤い気迫は抜けたが此処から実はもう一つ壊すべきものがある。それは左足にある電子が回っているものだ。正確には目には見えないのだがあれはお空の力を増幅させる。それを壊すだけでも簡単に倒せてしまうのかもしれない。青年はこれからの事を考えていた。
「何か疑念があるのかしら。」
霊夢は聞く。
「紫ならスキマの中に葬ってしまうのか、と思ってな。」
「でしょうね。あんな危険なものアンタくらいしか活用しようとしないわよ。」
「そんなに危険とは思えないのだがな。」
青年は少しだけ元気そうに答える。心配するような必要はないと言いたいのだろうがそれ以上に気になることが両者は同じところを見ていた。動きを止めたお空の制御棒を破壊し終えた火焔猫は軽々しく吹き飛ばされた。意識はあるのか、どうかさえ分からない。