青年放浪記   作:mZu

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第178話

地割れのような音が響いて三人はその場を見ていた。

 

動けずにいた前にある壁が動き出した時、決死の思いで制御棒を壊して内面へと向けた人は岩肌へと飛ばされて意気消沈としていた。目の前にはそれはそれは恐ろしい魔物がいた。

 

「火焔猫の健闘を讃えよう。」

青い帽子を深く被り鋭い視線を覗かせているある意味では調子に乗っている青年は小さな声でポケットに潜ませるように話していた。その言葉を聞いていた二人はそこからどうするのかその人を見ていた。

 

「此処からは接近戦になる。生半可な攻撃は通らないと思う。だが、胸元にある赤い瞳を狙ってほしい。」

青年はゆっくりとそれだけを伝えてズボンのポケットから魔法鋼だけで出来ている小刀を取り出した。そして左手で構えていた。人差し指をあげて小指を鍔につけた持ち方で思い出した得手のようだ。

 

「私は出る幕はなさそうだから援護に回る事にするぜ。」

その答えてフヨフヨと箒にまたがって浮き上がりそのまま上から達観を決め込もうとしている。青年はあまりそのような事は気にしていなかったがそれも作戦のうちだからだろう。

 

近距離戦は巫女の方が上手のようでその事には二人とも異論はなかった。才能の巫女と努力の魔法使いは魔物の名を知っている人から情報を聞いている名も知らぬ青年についていく。その先に何があるのかさえ後ろの二人には分からなかった。

 

「来るなら来なさいよ。」

穏やかそうに歩いている敵を凝視しているが何か不穏な空気の流れ始めていた。地面は急に静かになりあたりには明かりが灯されているだけのような空間になっていた。

 

いつも通りといえばそれで終わるのだが今まで噴火するかのような勢いのあっただけにそれだけ内面に溜め込んだと言われるとゾッ、とする所がある。

 

「辞めておけ。来ない方が良い。」

青年は何処か興味のなさそうにしているか何か別のことを考えているのか霊夢の言葉に応答しただけでその場から離れてしまった。巫女はそれを嫌そうに鼻を鳴らすだけで何か言ったり目立つ行動はしなかった。敵わないというそれだけの感情か更なる高みへと目指すための準備なのかはよく分からない。

 

「魔理沙、援護は良い。火焔猫の救助の方に向かってくれ。」

青年は急に魔法使いに頼んで救援へと向かわせた。別に戦力にならないからではなくそうしないと本当に命の炎が消えそうだからだ。それだけ困窮した状況なのだが青年はどこか楽しそうにしていた。不謹慎極まりない。

 

「ウワァァァ!」

魔物は雄叫びをあげて二人の元へと向かってきた。先にどちらを潰すつもりなのかそれは相手に任せるとして青年は心を落ち着かせて鳥のイメージをしていた。

 

そのためにはとの元素を使うと良いのかより明確に念じていた。それは先ほど二人が魔物の弾幕を避けていた動きを見ていた時に何に似ているかを思っていた。その賜物だ。

 

黒い刀身をした魔法鋼の小刀は鈍く光りだすとふわり、と浮かんだ青年の体を弄んだ。それこそ奇襲をかけるためだ。魔物は先に巫女を狙うらしい。

 

それを瞬時に察知した青年は地面すれすれの低空飛行でその元へと向かった。そしてタイミングを合わせて足を持つ。その先からは巫女に任せるしかない。縦に動いていた体を横方向に不要な力がかけられてその場で倒れ込んだのを巫女は一瞬だけ動きを止めてからお祓い棒の先で突こうとする。一瞬の迷いは相手に猶予を与えたらしく防がれて弾かれてしまった。

 

やっぱりか、それが青年の本音だった。巫女は大きく仰け反り片膝をつけるとその隙を魔物は見逃さなかった。しかし急な痛みからその場で勢いを止めた。

 

魔物の右膝には黒色をした釘のようなものがあった。その釘が刺さっているのを見てすぐに背面を向いた。其処には少し息を切らしている青年がいた。咄嗟の判断なのだろう。それだけに急所と呼ばれるような場所ではないが抑止という意味ではとても意味のあるものだったと思う。それだけで大分救われたものだと思われる。

 

「ワァァァ。」

吐き出すような息にはそのような音が混じっていた。声にもならない呻きというものを上げて青年のほうへと向かっていた。

 

青年はそれまで通りに素早く移動して魔物の動きをこちらへと集中させていた。青年は高いところ、岩肌のある上の方へと向かってわざとその場所に撃たせた。

 

岩を破壊するような一撃には肝を冷やすものだがそれだけで青年が憶するという事はまずありえない話だ。パラパラと落ちていく粉のようなものと大きな岩のようなものが落ちてくる。青年は素早くそこから逃げて再度同じような所で拳を出させた。

 

徐々に開けられていく穴に青年は何らかの確信を得ながら何回かそれを繰り返した。それだけに上にある地霊殿では謎の音には驚いているのだろうがそのような事は関係なかった。青年には確かななにかがある。それだけで十分だった。

 

「よし。」

青年は開けられた穴から身を小さくして通り過ぎると穴の縁を蹴って軌道をわざと変更させた。転がり込むように地霊殿を背にしてこちらには向かわせないようにしていた。

 

「して、ここからどうするか。」

青年は左手に持っている黒い刀身の小刀を構えて相手の出方を見定めていた。そうでもしないと相手の攻撃は避けられない、というのは言わなくても良く分かる話だった。

 

「シュー、」

口から白い煙のようなものを出す胸元に真っ赤な目を出した魔物は開けた穴を挟んで向かい合っていた。そこからは動こうとはしないのは疲れたからなのか、それとも動かない方がいいという冷静な判断なのかは青年にはよく分からなかった。だが、好機なので念じている事は忘れていない青年はその状況をあたかも楽しんでいるかのようだった。何がしたいのかそれさえ分からない。

 

「相当溜め込んでいるみたいだな。」

青年は呟く。それを合図に魔物は動き出していた。まるで獣かのように真っ直ぐに狙ってくるのを青年は避けなかった。

 

目に見えているその勢いを使って青年は突き出した腕を持ってその方向へと流すと右腕を使って思い切り押した。その拍子に転びかけた魔物は青年の方を向いて其れ相応を使いを与えようと睨みを利かせていた。】

 

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