悲しみとは何か、人から裏切られた時だろうか。
憎しみとは何か、その事に対して出てくる己の感情だろうか。
それこそ包み隠された己の影だろうか。
恐らく全て青年には当てはまらないのだろう。
そんな表情を浮かべてその一瞬、その魂の削り合いを楽しんでいた。
「俺はパチュリーの一部しか知らない。だからこの時を待ち遠しく思っていた。」
包み隠したような表情をしているが口元からは笑みがこぼれていた。それだけ楽しみしていたのかと童のように思えた紫色の髪をした少女は感じた。
パチュリーは変に気分を良くしたのか魔道書のページをペラペラとめくっていた。
「ええ。良いわよ。してあげましょう。」
青年はその言葉を楽しそうにして聞いていた。それこそ少年のような心で今から始まる楽しそうな事を待ち遠しく感じているのだろう。そうでもなければヨダレを垂らした犬のようにはならない。
「有難い。して、俺は何かした方がいいのか?」
「何もさせないわよ。」
水色の水晶のような尖ったものがパチュリーの前に現れた。
青年はクリスタルのような輝きを持つその弾に目を輝けせて感嘆の声を上げていた。どこにそんな余裕がある、と言いたいところである。
パチュリーにもその事は伝わっているのか含みのある鋭い目つきをした笑みをしていた。同族のようである。もうこれで終わり、とパチュリーは前の方向へと力いっぱいに飛ばした。
風切りの音が聞こえるその弾を青年は華麗にも身体を曲げて避けた後に踵を返して一階の開けたところから入り組んだ本棚のジャングルへと逃げていた。
その中にはより多くの魔道書が置かれている。青年も一度は目を通した事はあるのだろうが大体のものは忘れてしまった。自分の部屋に置かれているメモを読み返せば何とか思い出せるのかもしれない。
青年は何か関係ないところではあるが一冊のある魔道書を読んでいた。その本は土で作る簡易的なゴーレムのことについて書かれている比較的薄い魔道書だ。
お試し程度にはやってみた事はあるが何となくやってみたくなった。目を通しながら魔法陣を書くためのチョークを探していた。
右手に魔道書を持ちながら左手には手遊びのように小刀を持って怪しく歩いていた。懐かしい気持ちが今の現状のことを忘れさせる。青年にとってこの場所は好奇心をくすぐられる最高の場所である。しみじみとその事を感じながら青年はこの図書館の端の方まで来ていた。
「此処までは来た事はなかったな。」
顎を擦りながら少々困った表情をしているがそれはそれで面白いと思っていた青年は今の困窮した状況をどうしたら楽しくできるのかを考えていた。
だが此処には幸いにも魔法陣についての魔道書が置かれていた。そしてある本を取り出してその中身を覗いていた。その中で青年が出来そうだと思ったものを見つけ出してズボンのポケットから長釘を取り出すと地面に置いて白いチョークをではないがある粉を使って描こうとしていた。
その粉はチョークとして使う前のものである。扱いは難しいが効果は同等なので使えるものなら使う。最初に大きな円を描いて直角に交わるように指の力を抜いて粉を置いていく。
その後一番外側の円から一尺離れたところに同じ太さで同じ円を描く。その中にまた円を描いて結ぶように最初の方に書いていたバッテンマークを書くが向きや角度は同じようにして十六個を書き足した。
最後に中心のところに釘を自分の念を込めてからその場所を置いて粉に馴染ませるようにしていた。白い線書いてあるところは光り出して青年はその場から逃げ出した。色々と迷惑をかける事になるがその時は一緒に片付けをするつもりだ。