青年放浪記   作:mZu

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第185話

地鳴りのような衝撃があったのはパチュリーが青年を探してから少しの時間を過ごしていた。軽い質問に答えたくらいの時間だった。

 

本棚がガラガラと倒れている音なので急いでその方向へと向いていた。その場には即席とはいえ立派な黒い姿をしたドラゴンがいた。

 

一階の天井に当たりそうなくらいで辺鄙な場所で召喚されたんだろうな、と冷静に分析していた。しかしその力はとても強かった。

 

何かを触媒にされているのは分かるがそれは青年の持っているものである。それが何が問題であるのかと言われるとそれをできるほどに成長していた。

 

その現実だけはパチュリーでさえ口をあんぐりと開けていた。その成長ぶりというわけではなくてその後の後処理のことを考えていた。

 

それとこれをどう倒すのか、それを考えていた。別に倒せないわけではない。しかし青年と合わされば苦戦を強いられる事はよく分かっている。なのである意味では正当ともいえる魔法で対抗する事にした。青年の方が勝てばそれは二重に困ったものだがこちらが勝てばそれで良い。

 

パチュリーは呪文を唱えてシルバードラゴンを召喚させて戦わせておく事にした。そして他の場所を探す事にする。この散開した本棚の中で青年が平然としているわけでもない。

 

そう思えたので他のところへと探しにいく。パチュリーは青年の携えている魔法剣の魔法陣は覚えている。そして魔力を感知できるのである意味では探すことも造作でもない。それこそ使用していなければ何と探す事はできないのだがそれでも点々と音は聞き取れる範囲では逃す事はないのだろう。

 

「そっちね。」

パチュリーはその先で感じた魔力というものを感じ取ってその場所へと急いで向かう事にした。此処からは広間へと出たところのその辺り。パチュリーは開けた場所へと出ると案の定と言うのかその場には居なかった。多分

この本棚の列の中へと忍び込んでしまったのだろう。

 

後ろからは大きな音がしていて音では判断は出来なかったがパチュリーは中へと入った。その後ろから青年の魔力が感じ取れた。そして三回発動しているということも感じ取れた。何をしたいのかは分からないが何かをしようとしているのはわかるのでそれを潰そうとするが何をしたいのかは全くと言って読み取れない。

 

何をしたらいいのかさえわからない状況となっている。パチュリーにもきっと何か策を講じるつもりだが今一何か思いつきそうな節はなく暫くは青年のやられたい放題となっていた。

 

パチュリーが青年の元へとたどり着き、分かりやすいところへと出てきた時には青年も準備は終わらせていたのだと思われる。

 

「とても疲れているが何かあったのか?」

青年はどこか他人事のようにパチュリーの机の中から何か作業をしていたかのようにゆっくりと出てきた。そして大きく身体を伸ばして脱力した甘い声を出す。その声がどれほど待ちわびていたのかを少しだけ伝えていた。

 

「貴方、ずっとそこに居たの?」

 

「いや、流石に今の立場は逆になっているだろう。」

青年はのそのそと身体を動かしてソファーの背もたれに座って欠伸を噛み殺していた。相当暇だったのか、退屈で眠くなっていたらしい。だからと言って露骨にそれを出しているのはどうかとは思うがそれはもう相手の自由なので冷静に落ち着いて会話を続ける事にした。

 

「そう言えばそうよね。」

パチュリーはゆっくりと口を開いていた。それだけなのだが不敵にも笑みをこぼした青年の表情を焼き付けられたのでどうしてもその事を気にしてしまう。何か重大な事を見落としていたのかのように感じるのがどうしても気になる。何か不安を感じているのだがそれが何のことであるのかがとても気になる。

 

気になる事だらけで押しつぶされそうになっているのがどうしてもパチュリーの中では何か不安に感じている理由を知りたくなった。喉から手が出そうになるようだ。それを何とかする方法も何もないのがとてももどかしい。どうすればいいのかなどいつのまにか忘れていた。

 

「それに左側に逃げているのは知っているだろう。」

 

「ええ、左側にあなたの魔力は感じていたけどいつの間にか移動していたようね。」

青年は顔をうつむかせて鼻で笑っているように思えたのだが詳しくは見えないようにされているのでパチュリーの想像でしかないが支配されているようになっていた。

 

「その途中で俺は貯蔵庫を見つけたので粉を取り出してそこら辺にあった本から魔法陣を描いてみたが意外と精巧に出来ていたらしいな。」

なぜか自慢げに話している青年だが大きなロスを与えたのでパチュリーにとってはただの嘲笑のようなものでしかなかった。それを知らない青年でもないはずだ。

 

「そのようね。正直驚いたわよ。それなりに魔力の増幅の仕方は手馴れてきたみたいね。」

 

「それ程でもない。さて、準備を再開しよう。」

ふらっ、と歩いてくる青年に向けて咄嗟に呪文を唱えて対抗した。発動タイミングは分かるのでその都度かけておけばいい。それだけで青年の魔法は完封することができる。

 

まだ威力は小さいはずだと踏んでいるパチュリーは少し青年のことを見くびっていたのが知れない。

 

「させないわよ。」

パチュリーは大きな火の弾を浮かび上がらせてその大きさで動きを一瞬でも止めようとしていたが何故か止まるような気配はなかった。何処かボォー、としている気がする青年がある意味では怖かった。

 

「火力が足りん。」

ボソリ、と呟いたその声にパチュリーは一瞬だけ耳を疑った。その言葉がどれだけ魔法使いとしてのパチュリーの存在を傷つけるようなものであったのかは言わずとも分かるだろう。

 

それだけ強過ぎたのだ、青年が受けていたあの一撃が。それを知らないパチュリーは悩んでも仕方がないような事に頭を使う事になる。先ほどのように述べた青年はゆっくりと左手に持っていた黒い刀身の小刀を何かで研いでいるかのようにサラサラと動かすとそれだけで何も起こらないのではないか、と思えてきた。

 

「減らず口は相変わらずのようね。」

青年は鋭い目つきでパチュリーを睨み付けると足裏を図書館のカーペットに擦り付けて反転してから小刀の波紋でさらりと斬り捨てた。否、斬ってしまった。

 

そして其処から爆発の勢いに任せて青年はカーペットを滑るようにしてパチュリーの元へと近づくとその場で一回転。そして青年はパチュリーに向けて小刀を振るうのだが周りから集められたような元素がその小刀の近くを回っていた。

 

そしてその色は雷でありピリピリとした微弱なものではなく雷雲を持っているかのような近くにあるだけなのに本能的に恐れてしまうようなものであった。

 

パチュリーはこの時にはっ、とする。だがそれはとても遅かった。気づいて目を見開いた時にはすでに青年の小刀はパチュリーの体に触れていた。そこから伝わる雷に打たれたような痛みがする。それから何が起こったのかまるで青年が中心であるかのように電磁フィールドが展開されていた。

 

地面に伏してしまった、その時にもまた同じような痛みを感じた。一瞬で行われた事にパチュリーは何も理解できなかった。

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