薄暗い地底には青い炎が灯されていて柔らかく照らしているがそれでも足りないことがある。そのような中でも紫色という服装をしていてローブを羽織っているゆったりとした服装をしている黒髪の青年はその中へと体を溶け込ませていた。
「パルスィ、来た。」
何の前触れもなく現れた青年にその家の住人は少しの間だけ動作を止めていた。それこそ何が起こったのか分からないという感じなのである。
「堂々と家に入るな。」
暗めの金髪をしていて尖った耳をしているつり目の少女は常識のない青年にそんなふうに話しかける。
「知らない仲ではないから良いと思ったのだが。」
特に気にしている様子がないのである意味では清々しいのをパルスィは感じ取っていた。そしてどうしても自分とはまた違うベクトルの変人であるという事も。
青年には前に話したことがあるが周りに当たり散らす性格をしていたのでこのような場所へと来てしまったのだろう。しみじみと感じ取りながらパルスィは今どこに居るか探していた。
「何人の家で寛いでいるんだ。その態度が妬ましいわ。」
パルスィは大きな声で騒いでみるがまるで効果がないように思えた。そこで一旦は諦めることにする。
「して、何か変化というものはあったのか。」
「変化?少しだけ快適になったわよ。」
パルスィは自分だけ茶を飲んでいた。客としてもてなすつもりはないらしいのは青年は気にしないが喉が渇いてきたので少しだけ潤せるものが欲しくなってきた。
「やはり涼しくなったのか。」
青年は少しだけ身を乗り出すようになっていた。それだけではないがパルスィはそんな姿を恨めしく思っているようでつり目がより誇張されたようになっていた。そして無表情でいた。
「そうね、勇儀から聞いたけどお空という人が異変の犯人という扱いのされ方をしているようね。」
青年はその事は知らなかった。なのでそれは気になるのでなんとなく話を聞いてみることにした。
「貴方も居たんでしょう。勇儀から聞いているわよ。」
パルスィは特に知らないらしいのでそれこそ新聞でしか異変の事は知らない。それに何か問題はあるのかと言えば大衆はそのようにしかならないので仕方がないところである。
「それは文々。新聞ではないか?」
人里で販売しているのは知っているのでもしかしたらそのような事がありえるかもしれないとふと感じたらしい青年。それを聞いていて首を縦に振るパルスィは少しだけ熱の入っているのを気にしていた。
「それには誰かから貰った力であると答えていた。それにそれを悪用するのではなく上手に使おうとしていた。俺はそれを知っている。」
「そうなのね。こういう時はきっとそうなんでしょうね。」
「パルスィ、会ってみないか?今から行くつもりだしな。」
青年は軽快にパルスィの手を引っ張るとそのまま立ち上がらせてから優しくエスコートするようにずんずんと歩いていく。特に抵抗する気にならなくなったパルスィはそのまま青年に連れらていくことにした。
「その行動力が妬ましい。アンタは少しは人のことを考えなさい。」
「なら離せば俺はそこまで力が強い訳ではない。」
「そんな簡単に言わないの。本当に離れたらどうするのよ。」
「その時はその時だ。もともと一人だったんだから変わらないだろう。」
そうじゃない、と言ってみたいパルスィだがその心には少し迷いがあった。迷いもなく純粋な心で道案内をするのを断る勇気はなかった。ある意味ではとても優しい性格をしているのかもしれない。それだけで別にどうでも良くなってきている。
「私以外には気をつけなさいね。」
「分かった。」
青年は楽しそうに腕を揺らしながら強引ではないが力強く握っている手を話すような事はしなかった。それに少々乱暴に揺らしているのがどうしても気になるらしくパルスィは何をしたいのかは分からないが大人しく付いていくことにした。それにこう強引な感じもたまには良いのかもしれない。
「ところでその人のところへ行って何をするのよ。」
「いや、前から頼んでみたいことがあった。」
「それは何よ?」
「その異変の犯人と呼ばれている人の力を使って間欠泉を定期的に起こさせて温泉でも作ってみようと思っている。ちょうど地霊殿の近くに立てれば鬼の沢山ところあたりが温泉街と呼ばれることになるだろう。」
「そんな事は可能なの。」
「実行までは出来る。後はその湯に入りたい人を呼び寄せることができるのかにかかっている。もしかしたら橋渡しの仕事を任せるかもしれない。」
「随分と大きく出たわね。妬ましいし勇ましいわ。」
「そうか。」
あまりにも淡白に返した青年の返答には流石にパルスィも眉を動かす程度だったがその程度で終わらせることにした。
「馬鹿な事をするのは人の勝手。それを本当に馬鹿にするのは愚直の行為よ。」
「その言い方もあるのか。」
青年は何処か興味がなさそうにしていた。
「私の意見よ。それは勘違いしない事ね。」
「ものは言いようによっては変わる、ということになるのだろうな。」
「妬ましい。自分で理解しなさい。」
「そうか。」
そこで話は終わってしまった。
「そこのお二人。どこに行くんだ。」
聞き覚えのある豪快な声だった。
「勇儀か。実は地霊殿に行こうと思っている。」
勇儀は仲間たちと飲んでいたと思われるが少し飽きが来た頃なのだろう。そのぐらいに通りかかったので話をかけられたと思われる。近くにいる鬼は基本的に潰れていているでそのように感じた。
「地霊殿か?何の用だ。」
「いや。そろそろ怪我人も復帰した頃だと思ってお礼に言いに行くつもりだ。」
「なら私も行こうじゃねぇか。そこまで大ごとになっているとは知らなかったな。」
「それは好きにすると良い。俺は強制するつもりはない。」
青年はそれだけを伝えて地霊殿の方へと向かうと勇儀は右手に持っていた杯を持って歩き出していた。その横を手は離れているが今まで通り付いていくパルスィがいる。
どこかぎこちなく見えるが二人は偶にではあるが飲み仲間でもある。なので何か気にしているような事はない。青年はそんな二人を後ろに地霊殿へと向かった。