青年放浪記   作:mZu

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第19話

ステンドガラスからさまざまな光がその玉座の置かれた部屋に降り注ぐ。その光は優しく暖かいはずだがこの時だけは違った。紅に染められたカーペットがあり、光によって天井も壁も紅く染まっていた。殺戮の行われた今亡き王の孤高の玉座。家臣も必死に抵抗するも敢えなく命を散らせたそんなもの悲しい風景をしていた。

 

「中々、やるわね。」

此処の主人は息を切らしながら対話を始める。何となく手が止まった瞬間なのかそれともこれからが本番となるのかは誰にも知り得ない事であった。それでも鋭い眼光をやめない辺りは流石と言うべきか。

 

「あんたこそ、厄介ね。」

霊夢も同じく息を切らしていた。本来は霊夢が何回も倒していてもう勝っているはずだった。

 

逆にそうでないとおかしい。淡い紅色の服が所々破けており、そのところから滑らかな白い肌が見える。健康的とは言えないかもしれないがそうでもないのが吸血鬼という種族。

 

そしてレミリアは少食の為に余計にそう思われるだけである。

 

「これが夜の帝王たる由縁よ。さぁ、命を乞い、頭を垂れなさい。」

レミリアはこれでもかと霊夢に対して挑発を続けた。互いに互角であり、一進一退を繰り返す。それは魔理沙が加わった後でもスピア・ザ・グングニルを使って対応する。

 

魔理沙の星の魔法は雨でも降ったかのようにレミリアには影響がなかった。霊夢の札でさえ意味を成さなかった。空中を大きな黒い翼で飛び回る、まさに帝王として二人の前に君臨していた。その様子をこの部屋の隅の影のかかる場所で見ていた青年は出る機会を伺っていた。

 

「どうすんだ、霊夢。蝙蝠になればスルスルと抜かれちまうぜ。」

魔理沙は絶望にも等しいほどにレミリアとの戦闘をやめてしまおうと考え始めた。それもそうだろう。

 

相手は攻撃を容易く避けて、傷を軽々しく治して、こちらが喰らえば一撃死に等しい、諦めない方が異端ともされそうだ。

 

「大丈夫よ、いざとなったら使うわ。」

こんな不毛な戦いを止めようと魔理沙と同じ事を考えていた霊夢は肯定的に物事を考えていた。

 

「この状況をなんとか出来るのかしら?人間風情。」

大分調子に乗っているレミリアだが、二人が戦闘不能状態にまで追い込んでいるのも確か。気を強くしていても状況が自然とそうしてくれる。

 

「すぐに倒してあげるわ。」

霊夢は札を投げると様々な角度から投げて一点に集める。その点にいた人物は前転して爆発の勢いを最低限にして距離を詰めた。転げた後にもかかわらず正確に槍を突き刺しにくる。霊夢は刃先をお祓い棒で弾く。

 

棒には霊力を纏わせており中々の事では折れるどころか傷すら付かないという武器を所持していた。レミリアはそこで攻撃を止めなかった。弾いた方向へと身体に捻りを加えて霊夢の足元を払う。

 

しかしそれはフェイント。

 

霊夢の前で槍は急に角度を上に上げて胸を狙う。霊夢は左肩を後ろにして半身にする事で避けてお祓い棒をその間に入れておく。レミリアは鋭く尖った歯を見せるほどに笑っていた。楽しいとかと言うよりは吸血鬼として気分が良いらしい。対して霊夢はゆっくりとした空気でどっしりと事を構えていた。

 

此処まで余裕があるのも巫女としてなのか。レミリアは攻撃を通せないと悟ると槍を引かせた。紅くてレミリアと言う吸血鬼にはとても似合う自分の背を超える槍だった。それでも扱えるのはそれだけのカリスマがある、つまりは才能があるのだろう。

 

「どう楽しい夜でしょう。貴方達の血が食すのはいつになるだろうね。」

落ち着いて事を見ていたレミリアにはまさかとも言える事実があった。上から札が大量に現れたのである。流石の吸血鬼と言えども、反応は間に合わなかった。土煙が上がり二人の前の視界が明らかに悪くなった。霊夢は既に伏兵を作り上げていた。札で固められていた自身の分身が暴発したのである。その札は標的を的確に狙うようにされていた。そのせいなのかついに本気というものを見せ始めた。煙を断ち切り、現れたのは言うまでもなくレミリアであった。

 

「策としては良かったが、量が少なかったようだ。」

レミリアは王者という風格と余裕を見せつけた。爆発札の雨を浴びて煙の中から平然と現れた悪魔は霊夢の元へと向かった。その昂らせている気持ちが空回りする事はなかった。

 

槍が霊夢を狙う。素早く正確な槍裁きは霊夢の先の行動まで読んでいた。数回か身体が当たる。霊夢でさえ万事休すであった。

 

「スターダストレヴァリエ」

流星群のような星の弾がレミリアに襲いかかる。その行動は確実に読まれていた。蝙蝠に姿を変えると身体を焼き切りながらも全ての弾を避け切る。まるで通用していなかったのように平然とグングニルを持って立っていた。

 

「これまでか。」

レミリアは疲弊しきった二人を見てレミリアは勝利を確信した。此処からの逆転策は何も残されていない。

 

「二人とも無事か?」

そんな時に男の声が聞こえた。履き慣れている靴で音を鳴らしながら、ゆっくりと蝋燭の間を通り抜けてくる男だった。体は既に疲弊している。まともに戦えるような人ではなかった。

 

紅美鈴は十六夜咲夜の手当てをするために医療器具を取り出した。

 

丁寧にナイフを取り出してその傷をよく観察した。そこまで深い傷ではなく消毒を行った。その痛みから咲夜が身体を暴れさせる。美鈴は膝で咲夜の腹を抑える。

 

美鈴は丁寧に消毒液を塗り込み包帯で傷口に異物が入る事を防いだ。青年が入れた所はそこまで危険なところには当てなかったのがせめてもの幸いというものであった。

 

それを美鈴は残り三箇所に処置をする。二箇所目からは動きが小さくなり、三箇所目になると動かなくなった。美鈴は咲夜の心臓や息遣いを見てから生存を確認して処置を終えた。美鈴は咲夜を抱き上げると手頃な小部屋にあるベットに寝かせた。あまりの痛みとショックで気を失っている。

 

その日の内に軟膏なり薬を買う事をお嬢様に伝えようと美鈴は思った。今は三人が交戦している。せめて終わってから人里に買い出しに行こうとした。美鈴は近くにあった備え付けの椅子に座りながら咲夜の回復を待つことにした。

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