辺りには赤い大地が広がっていた。
お空の能力によって一度起こったものは中々止まるような気配はないので青年はあまり深くは考えていなかった。それから青年は双剣を抜いてお空の小さな核のエネルギーを包むことができるのかを試そうとしていた。
「それでこれは何か関係があるのかい?」
それは青年の構え方だった。右腕を垂らしているが剣は地面と平行になっていた。そして提灯のように垂らした左腕からは不自然に剣が垂れ下がっていた。それ以外は何も言うまい。
「ここまで練習してきたからな。こうでもしないとまだ発動は出来ない。」
青年は静かに解説していた。お燐にもわかりやすいようにしているがそもそも魔法を扱ったことのある火にしか伝わらないものでもある。
専門外の知識はないように二人の持っている知識はまるで違った。
「そうかい。何回か試せばうまく行けるだろうね。」
どこか嬉しそうにしているのが気になるが青年はまた一つ嫌な事を思い出した。それはお空のそのエネルギーの事である。まともに食らえば即死に近い攻撃力を持つと思われるのでそれがどうしても気になっていた。
何が起こるのかはまったくもって予測がつかないのでそれこそ運任せでするといっても過言ではないようなものだった。
「それだと嬉しい。お空、本当に小さいもので頼む。」
青年はしっかりと出てくる弾がどのように来るのかをしっかりと確かめていた。珍しく楽しそうなものでもなく起こっているこのような目つきをして真剣に取り組んでいた。
それだけにその気迫というのも想像し難いものとなっていた。
「行くよー。」
ぽん、と気楽そうにお空が放った小さな弾は青年の近くへと寄ってくる。前ほど大きいものではないのは確かなのだが何か不安に感じるのがどうしても気になるところであった。
青年は十分にひきつけてから左右の腕を動かしてその弾の上下を囲うと今度は腕の上下を反転させて左右を囲う。そこから前後を囲うために青年は反転しながら側面へと回ると左右を囲う。
見た目では何をされているのかはよく分からないが青年が一旦動きを止めたので二人は近づいてみることにした。その中にはお空の放った赤い小さな弾が動けずにいた。それでも少し振動しているように見えるので青年は少しだけ不満そうにしていた。
「これで一旦終わりだ。それでこれがちゃんと伝わるのかという事なのだがどうだろうか。」
青年は双剣でトントンと弾の上を叩くと下へと落ちて亀裂の中へと入り込んだ。そこからは強大なエネルギーなのだろうかと思えるほど動きが活発化したので三人は青年の指示でその場からは逃げる事にした。
「これは難儀しそうだな。」
青年は少し卑屈になっていた。
自分の魔法が不満だったというのもあるのだが、それよりもお空の持っている核のエネルギーが小さくても大きな力を持っていた。
前に開いてしまった大穴から青年は下を覗き込んでいたが横に寝そべっている姿がどうもそのように感じる。お燐はその姿を見ていて何かくすぐられたのか近づいてみることにした。
「何回か挑戦したらやれるさ。それまでは辛抱の時だよ。」
「いや、そうじゃない。今は刺激されたところにしているから過剰に反応しているだけなのではないかと思ってな。そう言えばこの近くには何も使われていないところがあるはずだ。其処に作るのが一番良いだろう。」
青年は下の穴を覗きながら別に卑屈になってなどはいなかった。
それよりかはどのようにすれば良いのかそれを悩んでいた。それこそあらゆる手段を用意していたのだろう。青年はそれを全部潰されたとしても片手だけは崖を掴んでいるような気がした。
「そうかい。まずは今は反省するべき点がないか探してみるべきだよ。」
「まず俺の魔法が不十分だった。二重か三重ぐらいで上手く制御できるところまで行けるかもしれない。」
青年はお燐のその言葉に即答した。体勢は変えていない。そしてどこを向いているのかと言えばその下にある今は活発化している中を覗いていた。
「それか、水を流してそれを温めるのはどう?」
「それをするのは現実的なのかな。」
お燐はその発想にはとてもできるようには思えなかった。まずどこから流すべきなのかは全くもって分からない。それに何が起こるのかも何も分からない。お燐はいろいろなことが不安に思えてしまった。
「それは上から管を通して上手いこと流し込むという事か。それも視野に入れておこう。それとお燐は何かないのか。」
「あたいかい。いや、今のとこらは何もないかな。何をしているのか理解出来ないんだ。」
「そうか。それも仕方がないだろう。俺は魔法でお空のエネルギーの一部を包み込んでいる。そして俺もまだ何も分かっていない。発動するための手順は何とか作り上げたのだがその原理や理屈なんかはもう少し時間が欲しい。それに魔法なんていう知識はあるか?」
「いや、ないよ。」
「そうなると余計に説明が難しくなる。それでも協力してくれるならお燐の力が必要になる事もあり得る。色んな人にさまざまな力を借りる必要がありそうだ。」
青年は堂々と答えていた。それから穴を覗くのをやめるとトボトボと歩き出してブツブツ話しながら何処かへ向かっていた。
その場所へは向かおうとしなかったが様子を見に行くくらいは良いだろうと思えたのでまたそのうち向かう事だろう。それでも良い。青年は双剣を抜いてまだブツブツ話しながら地霊殿を横切りその先にある空き地のような場所へと向かっていた。
「すごい気迫だよね。」
「あの時はお空の方が凄かったんだよ。」
「それはないと思うよ。」
「何も覚えていないようだね。それも仕方がない事さ。」
「それだけ私、迷惑かけてたのかな。」
「そうかもしれないけどそれは私も同じ。だからおあいこなんだよ。」
ふーん、とその言葉でこの話は止まった。何もないこの地底に大きな事をしでかそうとしているある男は一人で鍛錬を積んでいる中で他の二人は少し話していた。孤独な世界へと入り込み、自分の魔法を磨こうとするその向上心はただならぬ殺気とともに進められていた。