青年放浪記   作:mZu

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第194話

雲の中を通っていくある船が見える、その話題で持ちきりとなっている人里の東側にある神社。

 

その神社は巫女が祀られている神の名を知らず、人気の少ない人里の裏道よりも物騒な雰囲気のある場所とされている。

 

苔は生えている、草が所々抜けていない、石畳が汚れている程度でそのような事は決してない。その博麗神社と呼ばれている場所で一人の巫女は今日も悠々自適に暮らしていた。春らしい陽気な天候となっている幻想郷で巫女は大きな欠伸をして温くなった茶をすする。

 

そのような時間を過ごしているその時を邪魔したのは楽しそうに笑っていた魔法使いだった。

 

髪はカールのかかった金色の髪でトレーマークとも呼べる黒いとんがり帽子をかぶっている元気そうな表情をしている霧雨 魔理沙と呼ばれている。この神社の巫女とは子供の頃からの馴染みなので別に特別な礼儀があるというわけでもなかった。

 

「霊夢、何しているんだ?」

魔理沙はさらりと普段から話しかけてはいけないような雰囲気をしている霊夢に声をかける。霊夢に別に霊夢も今やらないといけない事をしていると言うわけでもないので魔理沙の声には反応したがその表情を見て何かあったのだろうと思っていた。

 

「別にいつも通り時間を過ごしていただけよ。」

 

「霊夢は飽きないなー。」

 

「そういうアンタもよく来ているじゃない。」

 

「そうだっけな。」

魔理沙は霊夢の鋭い一撃にとぼけるしかなかったがそれは事実である。それにこれから桜が咲きそうということで宴会が好きな魔理沙はその日を待っているというのもある。

 

「そうよ。」

霊夢は素っ気なく相槌を打つだけで何か特別な事をしたというわけではなかった。それこそ何も起こさなかった。茶の入った湯呑みを口に近づけて自分の時間を過ごしている巫女は何者にも囚われないそれだけの自由な人だった。

 

魔理沙は知らなかったわけではないのでそれは別の事として境内の中にある小屋のようなところへと入っていた。そこで自分の茶を沸かしてから暫くここで過ごすつもりらしい。

 

「でだ、霊夢。最近人里で噂になっていることがあってな。何だと思う?」

魔理沙はニソニソとしているが肝心の霊夢が食いついているような表情はしていなかった。

 

何か別の事を考えているかのように上の空であるので魔理沙は少し話そうとする気を失ってしまった。その事は別に直接は関係ない事であるが二人の間柄ならではの間の開き方でもある。

 

「空に船が浮かんでいるという事でな。目撃情報は後を絶たない。何か調査をしてみる必要もあるかもしれないぜ、博麗の巫女。」

魔理沙はそれから自分から話を始めた。霊夢も別に聞いていないというわけではない。

 

ただどのようなことが話題になっているのかそれを当てさせようとしている魔理沙のくだらない茶番には付き合うつもりはないというだけである。

 

魔理沙もそれは分かっているのだが毎回そうしてしまうのは話が好きな魔理沙特有の切り出し方とも言えると思う。

 

「空に船が浮かんでいる、ね。何かは分からないけど何か不思議な事はありそうね。」

霊夢は冷静に考えていた。こういう時魔理沙は水のように流れていくのだが霊夢は石のように頑なにその場に居続ける。霊夢は断る事もあるのだがある意味ではバランスの取れた二人であるのはいうまでもない。

 

魔理沙はそれから何を話してみようかと考えていた。そのような流れには疎い霊夢には伝わりにくいからこそどれから話すのか魔理沙が困るという事である。

 

「そうだぜ。人里ではその船に何があるのかについて議論されている。それに新聞屋も嗅ぎ付けて色んな憶測が飛び交っているという事だぜ。」

 

「人里でのことは勝手にしなさい。でも何があるのかは気になるのよね。魔理沙は何があると考えているのかしら。」

 

「私は何か貴重なものがあると思っているぜ。なにかの宝玉かもしれない。」

 

「要はまだ行ってみてはないということね。魔理沙もまだまだじゃない。」

 

「それが私も姿は見たのだがこの箒では追いつけない速度だからすぐに見失う事になる。そこでだ、霊夢に先回りをしてもらって一気に乗り込みたいと思う。それで力を貸して欲しいんだ。」

 

「別に悪い話ではないわ。それにそれが幻想郷にどのような影響を及ぼすのかを知る必要があるわ。」

 

「そうなると霊夢も来てくれるということか?それは有り難いぜ。」

 

「それに金銀財宝がザクザクとなればその話はとても良いものよ。」

鼻息を鳴らす霊夢に魔理沙は多少なり納得し難いところもあるらしいがそれでも行くと決めたからには行くので魔理沙は飲みかけの湯呑みをその場所に置いて自分の箒にまたがった。それからふわりと浮き上がると霊夢が来るのを待っていた。

 

ある森にある古道具屋。その場所に二人が近づいてくる。

 

「何時もの。」

青年がノックもせずに中へと入り、開口一番にそう言った。その店主からは手渡しなどの丁寧な接客ではなくて左手で軽く投げられる程度だった。それをうまく掴んで一本だけ出すとローブに細工してもらったところへと入れていた。

 

「それで今日は何の用かな?」

 

「探しものがあってな。煌びやかな玉の入った塔のような形をしたものを所望している。」

 

「似たものはあったね。探してくるよ。」

店主はその言葉を言ってからカウンターにある椅子から立つと裏の方へと入っていった。青年はその背中を見てからカウンターへともたれかかって一服したそうにしていた。久しぶりなのだが目の前にいる人には煙を吹きかけたくはないらしい。

 

「こんな場所にあるとは思えないのだが。」

灰色の髪をした全体的にパッとしない服装をしている少女は不安そうに話している。青年は特に気にする事はなさそうだ。

 

「店主と俺を信じてみろ。必ず見つける。」

青年はスパッ、と答えた。見つからないならまた探すつもりらしい。

 

「初対面の人を信じる事は難しいだろう。」

 

「細かい事は気にするな。」

青年はさらりと答える。何か考えでもあるように見えるのがそうでもなさそうにも見えるのが何か気になるらしいのか少女は返答を渋った。

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