青年放浪記   作:mZu

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第197話

紫色の一式を身に纏っていて黒髪を後ろから流している口に白い棒を咥えた青年はある船の甲板へと降り立っていた。質素で何もない船であるで何も浮力も感じられない。

 

だが、その割には自動的に動いているようで滑らかな動きで何処かへと向かっていた。青年は何も話すことはなく落ちない為なのか柵の部分にもたれかかる。

 

「青年、今回はとても感謝している。主人も喜ぶだろう。」

灰色の髪をして同じような服装をしている。頭の上に丸のような形をした大きな黒い耳を持ってい耳をネズミのような人物、ナズーリンは落ち着いた声と表情で青年の元へと向かっていた。青年は左腰に携えている剣を取り出そうと柄を触ったがすぐに引っ込めてからナズーリンの方を向いていた。

 

「そうか。」

何処か上の空の状態である青年なのだが人の話は聞いているようなので半分気にしながらも半分気にしないように努めたナズーリンはその場から離れていくように何処かへと消えてしまった。

 

青年は何も声をかけるようなことはせずにその場で居ることにした。この船は運動できそうな広い甲板を持っているが一部だけ大きく突起している部分があった。その部分にきっと何かの部屋があると思っているがどのよう原理でこのような動きをしているのかは分からないが青年は別に気にしない事にした。

 

何か追求しても何も出てこないのだろうと思えたからだ。理由はない、何となくそう感じたからだ。それから青年は雲の上という極寒の空気に身を晒しながら気を紛らわせる為に煙草を右手に持ってその先を先に抜いていた県の刀身に擦り付けて火を付けると暫く空気に晒してから口に咥えて紫煙を上の方へと吐いていた。

 

煙突のように流れていく煙を見ながら青年は久しぶりの渋い芳醇の香りがする物を味わった。それだけでも幸福と呼べるものなのだが何か物足りないように感じた。やはり何か気に入らないのだろうと思いながらその場に座り込んで落ちないようにしてある柵に背中を預けるとゆっくりと紫煙を吐いて不満そうな表情を浮かべていた。

 

その時間、その瞬間を生きていた青年にとってのその一人の空間というのは風情のないものであり何か不満となるような要素があるのを隠すことは出来なさそうだった。それを心配そうにそして不思議そうに見ていたナズーリンは言いにくそうにしていた。そこで青年は何だ、と聞いてみる事にした。

 

「大分集まってきたからもうそろそろ移動を開始する。そこに主人が居るから中で待ってくれないか?」

ナズーリンはとても言いにくそうにしていた。まだ燻っている煙草を手から離して火を消すとにとりから貰った箱の中に入れてナズーリンの後ろをついていく事にした。それを悟ってなのかナズーリンは踵を返して中へと案内する事にした。

 

「その主人というのは誰の事なんだ?」

青年は何となくであるが聞いてみる事にした。ナズーリンの言う主人というのが誰のことであるのかは知らないままである。それに宝塔の使い方や木片のものも気になるのだが青年はまず最初にそのことを聞いていた。ナズーリンはトコトコと歩きながら青年の質問に答える。

 

「毘沙門天様の弟子だ。他に何か質問があるのなら早めに聞いてほしい。」

 

「毘沙門天は何かしらないがきっと素晴らしい方なのだろう。それで貴方の探していた宝塔はどのような効果を発揮するのだ。」

 

「あれは主人にしか扱えないのだがある方を復活させる為には重要なものなのだ。」

 

「その主人というのはとても偉大な方であるのはよくわかった。して、誰を復活させるんだ。」

青年は何となく聞いてみる事にした。だが、返答は意外なものだった。

 

「それは知る必要はない。お目にかかるような機会はないだろう。」

 

「寂しいものだな。」

青年はボソリと答えていた。無いなら仕方がないと言われていそうに思ったナズーリンは青年が何となく操縦するための物があるのだろうと結論づけたところへと足を踏み入れた。

 

どうして此処までまだしようとしているのかはさておき何があるのか気になる青年ナズーリンの案内通りにその中へと入っていく事にした。中は暗いわけではないが光は直接入っていない為に何があるのかは分かるようなわからないようなそんな感じだった。

 

「して、この船はどのような風なんだ。」

 

「どんな風とはどういう意味だい?」

 

「推進力はどうなっているのか気になるだけだ。」

 

「基本的にその原理は船長に聞いてみる事にしよう。この道の途中にあるから寄る事にしよう。」

ナズーリンは青年の前を歩いているのだが大きさ的には青年の方が大きいので歩幅の事を考えると早歩きをしているナズーリンは小休憩を挟みたかったのかもしれない。そんなことは薄暗くてわからない青年なので何か楽しそうにしていた。ナズーリンはそんな青年をどのように扱っているのが正しいのか分かっていなかった。

 

「そうか。」

短く返す青年の言葉が変に気になるナズーリンだが扉へと手をかけてからその中へと入っていった。誰かの声がするが青年のその中は覗こうとはしなかった。いや、別に誰が操縦しているのかは興味がないから別に強引に覗こうとはしなかったらしい。ナズーリンの指示を待ってから青年は中へと入ってきた。

 

「失礼する。」

 

「私がこの船の船長のムラサだよ。」

軽快そうな口調をしているが落ち着いているその人はムラサと名乗っていた。その人は頭に似つかわしくないないほど小さな帽子で黒い錨のマークがあしらわれていた。

 

水兵服を身にまとっていて丈の短いスカートをはいているその人は見るからに船長という格好をしている。青年は上から下へと見ていた。

 

「俺に名乗るななどはない。好きに呼んでくれ。」

 

「でしたら、青年はどうですか?別に似合わない身丈ではないですよね。」

 

「して、船長ならこの船の動力源は何か知っているのか?」

 

「いや、自動運転だから何もわからないよ。でも私が居ないと作動はしないからそこは気をつけるんだね。」

ムラサ船長は荒々しいわけではなさそうで一安心した。青年はそうか、とだけ伝える。

 

「ナズ、どうして青年を連れてきたんだい?」

 

「それはこれから話そう。」

ナズーリンはムラサ船長のいるこの部屋にある座席へと青年を導いた。そして座るように伝える。】

 

操縦室としては光の通らない木製の壁に覆われた一室で黒髪の後ろで髪を結んでたらしている青年はその中での時間を有意義に使おうと考えていた。

 

それこそ何があるのかは分かっていないが少し待ってみる事にした。灰色の短めの髪型をしているナズーリンは黒髪のセミロングである髪型をしている船長に此処までの話を聞かせていた。

 

「私は飛倉を探していたら丁度青年が通りかかってきて話しかけられたんだ。そこで何やかんや話が続いて小道具屋に聞いてみる事になってその場所へと連れていかれる事になった。そこの店主は欲しがっている私を見て法外な値段を提示したが青年はなけなしの大金で交換してくれたから私はそのお礼に此処へと連れてきたというわけだ。」

ナズーリンは体を動かして身振り手振りで伝えていた。それをふんふんと相槌を打っているので聞く気はあるようだがそれが何かあると言うことではなかった。しかし本当に何もないというわけではないのでその後にどうするかが問題であるらしい。

 

「へぇ、この人がそのような事をしたんだね。人は見かけによらないんだね。」

 

「それは失礼だ。言葉を慎んでほしい。」

 

「いや、気にするな。本人が気にしていないなら無駄な言葉であるとは思わないか?」

 

「そうかい。本人がそう言うならそれで良いだろう。」

ナズーリンはふてくされたように答えるが何かおかしいことは言っていないはずなのでそれを責めることは青年はしなかった。

 

「だがその意は汲み取らせてもらう。で、俺はその飛倉を手にしたわけだがそれが何に使われる予定なのかを知りたい。」

青年の質問に船長は首を傾げながら答えた。

 

「何も知らないのに高い金を使って買ったのか。」

船長は不意に笑みをこぼして、声をこぼしていた。別に笑われる目的でそうしたわけではないので青年は船長を向いていたがその真意は読み取れなかった。

 

それこそ奥底から湧き上がる大きな野望のような、ふとそんな事を感じさせる。

 

「人の金の使い方にケチは付けるものではない。それはその人の生き方を馬鹿にする事に等しい。」

 

「ごめんなさい。それである人を復活させる為に必要な道具になっている。そしてこれから移動するところで先に言っている星の宝塔を使う事で初めて意味のあるものになる。だからその木片は何も役に立たないはずだから法外な値段はつけられないと思うんだけどね。」

 

「何か隠された力を読み取ったのかもしれない。俺の知り合いだからわかるが道具の使い方を知れる能力を持っている。もしかしたらそれでその人を復活する為に必要な物であると知られていたのかもしれない。」

青年は落ち着いた態度で話しているのだが本当は軽く知っているので何とも言えない感じだった。確かに既にその事は知られていたがそこは青年はうまいこと店主の善意に漬け込む嫌な手段を用いて安く買ったのである。だがそれ以上の金額の入った巾着を渡しているのは確かだがその事は今いる二人に知られることはないのだろう。

 

「厄介な人だね。でも彼のおかげで助かったんだね。」

 

「そうだ。青年が居なければ私は買うことも許されなかった。何せ、人身売買でもするかのような値段をつけられたからね。嫌な店主だよ。」

 

「それは大変だったね。」

船長は労いの言葉をかけたところで船が大きく揺れだした。その轟音に青年は落ち着いた表情で楽しんでいた。それこそ音の出るおもちゃで遊び始めて子供のようなものである。

 

「青年、君は頭がおかしいのかい?」

 

「いや、至って正常だ。」

ただ笑うことしかしなかった船長は揺れが収まるまでは何もしなかった。青年はその間この部屋の中で何処か外を眺められる場所がないのか探していたが上の方にある通気口しかなかったのである意味そこで諦める事にした。

 

何もするような気にならなかっただけだとは思うが本当に何をするのかは分かったものではない。

 

「揺れが収まったな。外に出てみようか。」

青年はその場から立ち上がるとその部屋から出て行こうとするがそういえばと思い出したように踵を返して二人を手招きしていた。来る途中の道は薄暗くて特に目印になるようなものはなく甲板に出るための道は何もわからないと言う状態だったのでどちらかに道案内をしてもらう事にした。

 

「私も船長として見ておきたいから行きますね。」

 

「私も主人に渡したいものがある。」

ナズーリンと船長は青年の前へと歩き出すとその薄暗い道を案内してくれるらしく青年は気分よくその二人についていく事にした。疑う事をある意味では知らない青年らしいわけだが二人はそんな事は知らないので奇妙な人だと思われながら船内の道を進む事にした。何かあると言うわけではないのだが何もないと言うわけでもないのでそれなりに楽しんでいるようだった。

 

「ところで今はどこにいるんだ?」

 

「魔界の一部である法界と言うところに来ている。幻想郷とはまた異世界となるような場所であるのに間違いないが別に外れているわけでもない裏の世界になっている。」

 

「楽しそうな場所に来ていると言うわけだな。」

 

「その楽観的な物言いはどこから来ているのが不思議だよ。」

船長は薄暗いながらも目を細めているのを確認した青年は笑っているとも怒っているとも言えない微妙な表情を浮かべているだけで何か話したりはしなかった。それはそれで気にしないと言う事だと思われる。

 

「して、その法界というところにあの人は封印をされているから解放したいという事なのか。」

 

「そういう認識で構わないよ。その経緯なんかは私にもよく分かっていないから聞かないでほしい。」

 

「そうか。なら何か接点というものはあるのだろうか。」

 

「あるよ。私と一輪と星は同じ人を尊敬している寺通いの関係でその僧侶はその人になるんだよ。」

 

「徳を積んだ人なのだろう。どこら辺にでもいる人とはまた違う雰囲気をしているのだろう。会うのが楽しみになってきた。」

青年は楽しそうにいうと先行してその先にある甲板へと向かっていた。置いていかれた二人は一瞬判断を見誤りながらもその後ろをついていく。

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