第205話
灰色の景色の中に一本の糸のように上へと向かっている階段があった。此処は幻想郷と別の世界を繋いでいる曖昧な所であり本来なら行ってはいけないようなところであるが結界が曖昧で誰でも通ってしまえるので其処に入るしかないと思っているらしい。
白い布を羽織りその上から上着のように黒色の衣服を着用している下駄のような履物をしている青年は其処から上へと向かっていく事にした。その先には桜がある。だがその樹はいつになれば咲くのかは全く分からない。以前にも咲きそうになっていた事はあるのだが満開に近い状態で霊夢達により阻止されて満開になる事はなかった。
それ以降は花の蕾が出来ることもなく桜の木と説明しても絶対信用してくれるとは思えないほどに枯れていた。
「桜が咲く季節だがいつになったら咲くようになるんだ。」
青年はその桜の木の下の方に建っているある館へと来ていた。その館は白玉楼と呼ばれていて冥界と言われる魂が次の転生を待っている空間の主である西行寺 幽々子に話しかけていた。
「咲く事はないと思うわ。枯れているもの。」
悲しそうに答える幽々子にかける言葉も失ってしまっな青年は取り敢えずその右隣に座ると右足を左脚の膝に乗せて仰け反っていた。目の前には松の木がありそして晴れているとも言えないかが曇っていると言うわけでもない薄い糸が貼られているような状態の雲が張られた空を眺めていた。
「博麗神社では宴会があるようだ。」
青年は今朝聞いていた事を話していた。主人の顔も立たないほどに平謝りをし続けていたが青年は受ける気にはならなかった。そしてそのメイドも同じようににしていたがそれでも青年は行こうとは思えなかった。
「貴方は行かないのね。」
「幽々子も偶に下に降りてみてはどうだ。」
「それはお互い様でしょう。」
ホロホロと解けるように笑っている幽々子に苦笑するような視線を逸らした青年はゆっくりとした息遣いで言葉を話した。
「あの様な人の多い場所は行きたくはないんだ。」
「静かな空間でこそその景色というのは映えるものよ。」
左隣に置かれていた茶を啜る音が聞こえた。本当にその通りであると心の底から思えてしまった青年は一層の事此処で今日は一日を過ごす事にしようとした。
「そうだ。桜の下でこそ情景というのは大きく変わるのではないか。」
「ええ。そうかもしれないわ。」
「今から準備するのも良いだろう。」
青年は簡単にそれだけを伝える。幽々子もその事には賛成していた。そうと決まれば行くしかない。幽々子の座っていた縁側から立ち上がると砂利道を歩いていく青年。
それにひよこの様について行く幽々子はその屋敷の裏口へと向かっていた。其処は普段はあまり使われないが食事を作る場所や倉庫としての役割を持っている。
「妖夢、何か地面に敷けるようなものはないか。」
別館の襖をがらりと開ける青年に驚いたようで幽々子に出すための茶菓子を落としかけた少女がいた。その人は色白く白色のぱっつんとした髪をした幽々子の従者である魂魄 妖夢であった。青年は此処に誰がいるのかはもう知っているので別に何か驚いた様子はなかった。
「何に使うんですか?」
「桜を見に行くんだ。」
青年は短絡に答えた。妖夢は何をしたいのかを読み取れていないらしく少々慌てた様子をしている。青年はそれも楽しそうに見ていた。