青年放浪記   作:mZu

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第213話

早朝という事もあり、人気は少なく代わりに妖気が立ち込めているような状態だった。青年はそんなところを歩いていく。変な置物のある決して綺麗とは言えない面構えをしている見るからに怪しいところで歩いていた足を止めると青年はそちらへと向けて歩き出していた。

 

「邪魔する。」

 

「本来ならもう少し待ってほしいと言いたいけど其処は客によるね。今日は何が欲しいのかな。」

この建物で雑貨屋をしている店主はその場で立ち上がると追い出そうとしていたがそれはいう通りに顔を見てからそれを辞めた。変に力を込めていたらしく凝り固まったような話し方をするが青年は別にそのことを気にしているそぶりはなかった。

 

「欲しいわけではないが教えて欲しいことが一つある。」

青年は店主に後ろを向けながら品物を見ていたが特に目ぼしいものはあるわけではないのですぐに辞めた。黒縁の眼鏡をかけた白髪の男性は不思議そうにしていた。まだ煙草が切れたようなものではない。もしかするとふと感じてここまで来てしまったように思える。

 

「僕にできる事なら何でも聞いてよ。」

 

「実は刃こぼれを起こしているのではないかと思って見てほしい。という事とそれを治す方法を教えてほしい。」

 

「いつも使っているからそれもそうだね。うん、分かった。ならついてきて欲しい。」

店主はいつもなら客を入れようとはしないが今日はどうやら違うらしい。青年は珍しいものでもあるもんだな、と思いながらその中へと入っていく。

 

「香霖、にとりと同じような雰囲気があるところだ。」

 

「そうだろうね。君の話を聞いているとそう感じるよ。」

 

「だが、どうして隠そうとしているんだ。危ないからと言われたら言い返す言葉は無くなるが。」

 

「職人にとっては命の次に大切なところだからね。物に決して触らないでほしい。分かるよね。」

香霖は薄く小さな笑みをこぼしているだけで他に語るような事はなかった。青年は隠したがっていたのは知っているのでどうして入れようと思ったのか、その事ばかりを考えていた。

 

「さて。だが大切なものに触れられたくないのはよく分かっている。」

感慨深そうに話す青年に一言も話す事が出来なくなった香霖はある道具の置かれている台のところへと来ていた。見たところ平らなところで大切そうに置いていたそれを青年は眺めるだけに留めて降臨の説明を受けることにした。

 

「これが刀身を磨くための道具。砥石と呼ばれる道具だよ。荒砥、仕上砥しか僕は持ち合わせていない。ちょっとしたこだわりがあってね。君のその双剣はこれから生み出した。そして君のその剣に内蔵されている魔法陣の原盤は此処にある。此処からいつでも複製は可能だよ。」

青年も顎を触りながら何となく思い出していたことがある。にとりに作ってもらった道具には後輪の魔法陣は施していない。そのように考えるとどうして自分は同じように魔法を使っているのか、それを知るには誰かの手を借りないといけなかった。

 

「ところで見ていて欲しいものがある。少し疑問に思ったんだ。」

青年は黒の上着の中に内蔵されている小刀に手をかけると鞘ごと取り出して香霖の両手に手渡した。柄に触れて丁重に引き抜くと薄暗い工房の中で香霖のその刀身から放たれる光を見ているかのように揺り動かしていた。

 

「別に何の変哲も無い普通の小刀だね。何か疑問に思うことはあるのかな。」

 

「香霖に作ってもらっていないが何も変わらない。それが気になるんだ。」

 

「それは君が全力で行使し続けているからだろう。染み付いているんだ、その両手に。」

青年はその言葉を聞いた瞬間にふと両手を見ていた。それは無意識に行われていているのに気づいた時それだけのエネルギーがあることを知れたので自分の手の中で試していた。

 

「君はどれだけの努力を魔法という幻想に当てていたのかそれで知れたのだろう。故に君の魔力は中にあるのではなく外にあるようだ。詳しい事はまた別の人に聞くといいだろう。パチュリー?だったね。その人に聞くといい。」

香霖は青年に見せてくれた小刀を手渡すと渡された本人は大人しくいつもの場所へと帰してあげた。

 

「その事ならもう分かっているのだろう。パチュリーの頭脳とその目なら。」

 

「随分と買い被るんだね。」

 

「仕方がないだろう。俺はそれだけ近くで見ていた。」

青年は自信ありげに答えていた。それだけの確かな自信は青年の中に宿っているのだと思われる。香霖はそれだけを認識してどうするのか答えていた。話は随分と脱線している。

 

「そうなのだろう。ところで本題に戻るんだけど。君の剣はきっと単純な構造をしているが他の人には扱うことは出来ないのだろう。それに自動修復をするようだ。使っている限りはね。」

青年はその香霖の言葉を背中で聞いていた後に青年は明るい店内へと戻っていた。其処へ香霖は追いつくように店内へと出てくる。

 

「俺にだけ扱える剣ということなのか。」

柄を握り締めていた青年に香霖は何も声をかけるようなことはなかった。だが青年は何か聞くことがあるらしい。

 

「香霖、三月だったが命蓮寺の人々とは会ったことはあるか?」

 

「彼処は仏教の場所のようだ。物は欲しがらないし最低限今着れる服があればそれで良いらしい。気晴らしに来るぐらいの人達だよ。あ、そうだ。最近新しい門番が居るらしい。挨拶ぐらいはしてみてはどうだい?」

青年は少しの間だけ考えていた。敢えて何も話そうとはしないが香霖も何かを感じ取っていたらしい。分かっているような気はするが口出しはしないのが香霖としての優しさと思われる。

 

「それは会えたらしてみることにする。して、その人はどのような人であるのかは会ってみないと分からないものだからな。」

 

「うん、そうだね。これから行くのだろう。」

 

「そうだな。折角だから行くことにする。」

 

「聖さんにはよろしく言っておいて欲しい。頼むよ。」

香霖はそれだけしか頼まなかった。青年はその言葉を聞いてだけで首を一つ動かしてからその場から動き出した。

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