青年放浪記   作:mZu

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第217話

先日見たあの影は天候による自然現象であると判断されて皆が落胆していた頃、香霖堂で新しく買い付けた服装である場所へと来ていた。

 

山笠を被り顔の上半分を隠していて薄緑色の着物に薄く白い線の模様を入れた質素な服装で前の方が着崩れていた。足元は下駄の方が似合うだろうが流れて来た訳でもないそうでいつもの靴を履いている。そんな服装で青年は鬱蒼とした森の中へと入り込む。まるで夢の世界にでも迷い込んだような世界をしていて青年の心を本来なら掴むと思うが慣れている為にそのようなことはないように思える。黒い屋根で煙突の先から黙々と煙を上げている家が今日の目的地らしい。

 

「邪魔する。」

 

「最近は魔理沙のようになってきたわね。いっらしゃい。」

 

「歓迎はするのだな。」

青年はそう言うとフラフラとした足取りで軽い気分で座っていた。椅子の背もたれにもたれ掛かるのかと思ったが別に其処までしようとはしていないので複雑な気分でその場を眺めている事にしたこの家の主人。

 

髪は肩に当たるくらいで金髪の綺麗に整えられていて赤色のヘアバンドをしている。そして肩にはケープのようなものをかけていて青色の服装をしているのはこの家の周りにある人形と変わらないと思われる。

 

「仕方がないじゃない。知らない顔ではないもの。」

その人は魔道書をパタリと畳んでから立ち上がる。そして何処かへ行こうとするがある時点でパタリと足を止めた。青年はふとまた違うことを考えていたがその考えはまたどこかへと行ってしまった。別にそれで良いらしい。

 

「して、アリス。どうして其処で止まっている。」

青年は率直に不思議そうにしていた。別に本来なら気にしなくても良さそうな気はする。だが、気になるらしいのでそのままにしてみる。

 

「ちょっと頼みたい事があるのよ。」

 

「何をしたい。」

 

「作ったは良いのだけど使い勝手が悪くてどうしても処分をしたいと思ったのよ。」

 

「それと。」

 

「実力を試してみたいと思っているのよ。」

 

「それで。」

 

「大きく分ければそれぐらいしか無いわ。」

 

「造形物には命が吹き込まれている。みすみす殺すのはどうだろうか。」

 

「そんなことは分かっているのよ。でもしょうがないじゃない。」

 

「その行為に加担するのは褒められるべきではないがするからには全力だ。」

青年も立ち上がりアリスの進むがままにしていた。

 

そうすると、見えていいのかどうかわからないような造形物が見えていた。その大きさは丸い塔であるアリスが好んで使っている魔道書が置かれているのであろう場所を占領するかのような人形が置かれていた。どうやって押し込んだのかは別に良いとして気になる点はそこではなかった。

 

「アリス、どうしてこれを作ろうと思った。」

素朴な疑問をぶつける青年にアリスの口は塞がったままだった。何も話さないらしいアリスに青年は敢えて話しかけるようなことはなく何かチョッカイをかけようともしていなかった。

 

「して、これを処分を頼みたいが誰もいなかったという事か。」

 

「そう。貴方以外には頼めなさそうだもの。」

 

「ではそれを出してみようか。」

青年は手伝いをしようとしたが特に手は出せなさそうなので何もせずにその場から一歩か、二歩下がっていた。アリスは金色の短い髪を揺らしながらオロオロとした虚弱な態度をしていた。それでも何も話さなさそうな青年は更に下がってからその様子を達観していた。

 

「抜くのではなく動かしてみてはどうだ。」

 

「それは妙案ね、と言いたいけどそうすると暴れるの。まだ未完成で自分の力を過信した結果生まれた忌まわしき物だから。」

 

「そうか。なら俺からは何も言うことはない。」

青年は押し黙ってしまった。取り敢えず暇なので玄関のドアくらいは開けておこうと思う。青年は踵を返してその方へと向かった。

 

だが、すぐに戻る事になった。大きな一回の音と何か柔らかいものが何かに当たった優しい音がしていた。其処には人形に押しつぶされたアリスが床に尻餅をついていた。アリスの上に乗っていた人形は其処らへんにある人形と変わらない服装で金色の造形物らしい輝きを持つ髪に青色の服装をしていた。

 

「これが私の試験的に作った人形よ。」

アリスはその場所から身を反対にさせて匍匐前進で抜け出て来ようとしていた。

 

「その説明は後で聞く。まずは出てきてみたはどうだ?」

青年は外に出ていた。いや、出ようとしているのがアリスには止める動議はないので青年の言われた通りにしていた。何か気にするようなことがあったのかと言われるとなかったり別にそうでもないように感じる。アリスは人形から尺取り虫のように出てきてから上に覆いかぶさっていた人形の左肩を持って引きずるようにしていた。

 

自分の作ったものなので何も言わないが青年は何と無く気になるらしく右肩を持って持ち上げるようにしていた。それから少々強引に取り出した人形を見ていてその大きさがどのようなものであるのかを見ていた。人の大きさよりも大きく巨人と化していたのである意味では青年は唖然としていた。

 

いつ作ったのだろうか、それとどのくらいの材料を使用してここまで大きい物を作り上げたのか。青年はそればかりを気にしていた。それだけに何度も見上げていた。

 

「こう見るとアリスの一途な想いが伝わる。」

青年はぼそりと呟いた。屋根にでもつきそうなほどの大きさをしていてよくここまで出してこれたものだと思っていた。

 

「元々は少し大きめの人形のつもりだったんだけど色々と拘っているうちにここまで大きくなってしまったわ。」

 

「そうか。その熱意はまた別のところに使えば良かったのではないか。」

 

「それは言わないで。気にしているんだから。」

青年は取り敢えず踵を返してアリスから距離を取ると右腰に携えている剣の柄を握って臨戦態勢を整えていた。それにアリスは答えるように魔力を人形へと送っていた。今回は大きな物であるらしく初動は遅いが動き出すまでは待っている事にした。

 

「これで二度目になるのか。」

大きな声で叫んでいた。

 

「そうね。苦戦していたら私の人形が援護するわよ。」

それに答えるように返事をする。

「それは必要ない。」

青年は答えると同時に前へと走り出していた。攻撃を浴びせる為に前へと出るが間合いの広さが向こうの方に利があると思った時にその場で止まり後ろへと下がった。

 

人形はどこからか出していた大きなハサミを持っていて物騒な雰囲気を放つ大きな守護者となっていた。ある意味では通用するか、と怯んでしまいそうになるが青年は落ち着いて現状を把握していた。

 

青年は考えを張り巡らせていたその目を見開いてから大きな足取りで走り出していた。身を大きく倒してその倒れこむ勢いそのままに低姿勢から居合のような一撃を放つ。だがあまりにも慎重さと言うものが大きくその一撃は致命傷となる程ではなかった。青年はそれならと体を浮かせてから目の高さを合わせていた。

 

「アリス、これは自動的に動いているのか。」

 

「ええ、暴走という形で動いているわ。」

さらりと答えるアリスだが一番物騒な答えであるのには間違いないと思えた。それはある意味倒れるか魔力が尽きるまでは動き続ける。無差別攻撃をしても何ら不思議ではなかった。

 

「あの大きなハサミが厄介なものだ。」

 

「私も援護するわ。」

 

「いや、やらせてくれ。」

青年は強い意志の潜ませた一言でアリスを黙らせると其処から急降下して攻め立てていた。人形はハサミを持ち上げて青年の剣での突きに合わせていた。

 

ハサミを交差させたその点の上から一本の小刀を投げつける。左腕からしなるように放たれた獄炎の剣は人形の元へと突き刺さった。弱くなったところで青年は押し切りその下へと自由落下によって人形の上半身のあたりを切りつけてから後ろへ下がり全体的に抽象的に見ていた。

 

頭の方に刺さっていた青年の投げた小刀から少しずつ燃え広がっている人形の額だが痛みはないらしく何もなかったかのように人形は自力で動いている。ある意味ではとても強いが脆くなりつつある人形にアリスは何となく嫌そうな表情をしているのを青年は横目で確認した。

 

「アリス、最後はどうしたい。」

 

「好きにして、良いわ。もともと私の失態の塊だもの。」

 

「そうか。」

青年は剣の柄を強く握りしめていた。逃げるわけにもいかないがこのまま何も手を出さないと言うのを気がひける、況してや人の物を傷つけている行為はとても青年の心を蝕んでいた。それでもやらねばならない。やらないと終わらない。青年は強い念を込めていた。

 

一気に焼き切る為に強い魔法を使ってみようとしていた。青年の剣には雷が宿る、そしてやるしかないからもう始めていた。青年は走り出して大きく飛び上がると人形に切りつけていた。もう後悔はないが戻らない時間と思いはその火に燃やされていた。

 

「アリス、ここは俺が片付ける。道具だけは貸してくれ。」

 

剣を鞘に納めた青年はアリスを睨みつけるような目つきをしてそのように言った。

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