青年放浪記   作:mZu

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第224話

青色の髪で金色のかんざしを付けた短めな髪型で後ろの方には丸が二つ作られていて無限大のような形をしている。

 

そして天女のような羽衣を身にまとっていているので恐らくは高尚な身分の方なのだろうと青年は考えていた。服装としてはゆったりとした水色の衣服で道士のような黒色の靴を履いている。基本的に善悪の概念はなさそうな顔つきをしている。

 

「私は霍 青娥と言うものです。貴方は一体何の為にここへといらしたのですか。」

青娥は青年に聞いていた。落ち着きのあるおっとりとした口調で性格が現れているようにも見えるので青年は同じような感じで返す事にした。

 

「別に用と言うものはない。強いて言うなら妖怪に襲われたと言う話なので危険がないか確かめに来ていた。と言う事だろうか。」

他人事のような上の空状態で話す青年に青娥は汗を一つ浮かばせていた。恐らくだが青娥は青年が自分の欲では動いていない事を見抜いている。

 

「そうですか。ですが、今日はお帰りください。」

 

「来たついでに何を守っているのか見せては貰えないか。」

青年は短絡的に物事を伝えた。それだけなのだが青娥は言い知れぬ危機感を感じたのは言うまでもない。

 

「それは出来ません。お帰りになられないと言うのなら力ずくで追い返すだけです。芳香、一緒に戦いなさい。」

後ろの方で横になっていた芳香と呼ばれていたキョンシーは其処でむくりと起き上がると青娥の元へと近づいていた。額に貼られていた黄色の札でこの死体を操っていると思われる。

 

青年は興味深そうにその様子を見ていた。その様子に青娥は戦いそっちのけで気になり始めていた。

 

「その使役の仕方はやはり貴方だからこそ出来るのか。」

 

「ええ、仙人にしか許されない術を用いています。」

 

「そうか。俺には難しそうだな。」

青年は何か行動を起こしたというわけでもなかった、少し顔を動かしてギョロ、とした目を青娥と芳香に向けていただけで他は何もしていないはず。それだけのはずなのに気の入り方は人間のそれではなかった。

 

「せいがー、何をすればいいのー。」

そんな話し方をしていたのかどうかは分からないが極端に言葉の話し方が変わったので何かあの札に秘密があると思っていた。それだけではないが仙人の扱うその術にも関心がないというわけではなかった。

 

「あの人の懲らしめなさい。」

 

「わかったー。」

ピョン、ピョン、と跳んで青年へと近づく。来ている本人は一本の針を右手から投げてそれで完了させた。それだけなのだがその場から動くことが出来なくなっていた。青娥には青年が投げたことしか見えていない。それなのに倒れてしまったのである意味では何が起こったのか全くわからないような状態に陥った。相手が悪かったといえばそれで済む話なのかもしれないがそのような事が仙人にあってはならない。青娥はそう感じた。

 

「して、青娥。其処には何が眠っている。」

青年は聞いていた。どこか見透かしたようなその目に青娥はその場から動けなくなっていた。

 

「此処にはこれからこの世を大きく変えてくれるお方が蘇るわ。そうなればこの世から妖怪なんていうものは滅びるでしょう。」

 

「そうか。それは困る。」

 

「どうしてですか。貴方も人間でしょう。襲われたりするような事はなかったのですか。」

 

「なかった。俺のこの剣は妖怪に作ってもらった。綺麗な刀身でよく磨いている。そしてその鞘やその他必要なものも妖怪に揃えてもらっている。魔法鋼と呼ばれる材質も妖怪に教わった。そして色々と戦闘はあれど楽しい思い出だ。それを消し去る事は俺は許さない。」

 

「それは心持ちは良いものですね。」

青娥はその力強い青年の言葉に感嘆の声を漏らした。だが何も分かっていないと言いたそうにしているのが青年の鼻についた。

 

「それにこの幻想郷では人と妖怪は共存している。和を重んじるようになった幻想郷で勝手な真似はやめてもらいたい。」

 

「まぁ、それでも良いでしょう。ですがあの聖人を見て貴方もひれ伏すでしょう。」

青娥は笑いをこらえながら青年の方を向いて軽く馬鹿にしたような表情を見せる。其処で青年は一本の棒を咥えて何もしようとはしなかった。その代わりに言葉で対応するらしい。

 

「何をもって聖とする?」

青年は静かにそれだけを言った。それ以外の言葉は交わすつもりはなさそうで相手の出方次第という事になる。

 

「あの方に悪と言う言葉が似合わないからです。それ以外の理由はありません。」

 

「貴方の正義は俺の悪となる。邪魔する者を排除しようとするのは必然であろう。それに同意するなら俺の正義の剣が貴方を貫いても文句は言うまい。」

 

「それはおかしな理屈でしょう。」

 

「そうか。なら善い行いとはどのような事か。」

 

「人を幸せにする事でしょう。」

 

「なら悪い行いとは何か。」

 

「人を不幸にする事でしょう。」

 

「曖昧だ。それで善悪を語ろうとは仙人というのも案外容易いように感じる。」

 

「それは聞き捨てなりませんね。」

 

「貴方の仙人という誇りを侮辱した俺は悪になる。しかし同時に今のままでは仙人とはとても呼べないという教示だとすればどうする。」

其処で青娥は黙ってしまった。言葉を詰まらせた青娥に青年はなんの言葉も行動を示さなかった。ただその場で置いておく。答えなどないのだからこうなるのが必然だ。青年はそのように考えていた。

 

「ならば俺はその聖人に首を垂れに行くとしよう。」

青年の足取りは軽く何か楽しそうなもので青娥の横を通り過ぎていく。それがどうしても許せないような青娥は背後から一撃を見舞う。

 

その一撃に青年は前へとよろけていた。軽いはずだが焦点、つまりは体の中心を射抜いたその一押しに青年は良くも悪くもその場で動けなくなっていた。

 

「これでも本物とは認めないのですか。」

青娥は蔑んだ目でそのように話す。別に青年は気にしているようにも見えないが左手で突かれたところを触っているので気にしているらしい。

 

「余計にな。そう横暴な態度はあまり良いようには評価されない。」

青年は基本的に気にしているような様子はないが強いて言うならという感じで言葉は濁していた。

 

「そうなのですが私は生憎手段は選ばないの。」

拳を構えて青年の方を向いている青娥、青年はそれを面白そうにしているだけで苛立ちを見せるようなことはなかった。

 

「そうか。邪な気持ちは皆持っているようだ。」

息を潜めて立ち上がる青年のその眼には言い知れぬ思いがあるように思えた。それだけではないかもしれないが何か不穏なものはあると思う。

 

「やろうとするなら生半可な気持ちではこないことよ。」

 

「そのつもりはない。もともと持ち合わせていない。」

剣も抜くようなことはなかった。青年は体を前へと倒してからその先にある目標へと走り出した。青娥はその足音に耳を澄ませながらそのカウントダウンを聴き続ける。その音が近づく度に心にずしりと重たいものがのしかかるように思えた。

 

青年は左脚を軸足にして腰の捻りを加えながら強烈な一撃を見舞う、青娥は両腕で包むこむような感じで構える。青年は大きな動きはしなかった、そして拳ではなく脚が青娥を狙う時無防備になっていた相手の脚にその力そのままに与えられた。

 

青娥は急な予想もしない位置からの痛みに打ち震える、しかし青年は気を抜くことはなかった。己の正義を貫く、そう言わんばかりに右足を軸にした回し蹴りを放つ。青娥の額に与えられたその一撃によろけさせるがそれ以上は攻撃をするようなことはなかった。

 

「錬丹で鍛えたこの体に傷をつけるとは只者ではなかったようですね。」

 

「そうか。」

青年は軽く答えた。相手を拍子抜けさせるほどに興味を示しているようには思えなかった。踵を返して何処かへと向かっていく青年の背中を青娥は目で追いかけることしかしなかった。

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