青年放浪記   作:mZu

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第230話

細い刀身で銀色の金属そのものの色をした七星剣。持ち手は聖人ともてはやされている豊聡耳 神子。

 

黒い刀身を手の中に収めた黒髪の青年は神子の前で両腕を交差させるように手を動かしていた。

 

それから前へと突き出して左足を前へと出して突きのような振り方を見せる。

 

その片方を止めた神子はもう片方の軌道の手中に収まらないように場所を変えていた。そして一撃を見舞う。

 

青年の左腕に持っていた黒い刀身の小刀に丁度止められた。

 

その細い剣先の思いは青年の黒い刀身の無情によって止められてしまった。青年はそれから神子の剣を弾くと素早く動かして自分の元へと来ないようにさせた。神子はがら空きの胴を晒す事になった。

 

右腕からポンプによって押し出されたような拳が持っていた剣の切っ先は神子の脇腹を捉えていた。

 

しかし神子も易々と攻撃を受けてくれるような人でなかった。

 

後ろへと足を蹴り出して距離を開ける神子を青年は追いかけるような事はできなかった。

 

神子はその向かってくる青年の隙をついて七星剣を振り下ろす。

 

鞭のような動きを見せるが青年は冷静に対応した。

 

それこそ柔らかいものを持つかのようなもので右腕で持っていた剣でそのしなりを抑えると左腕を弧を描いて振る。その先にある神子をめがけて進んだが直ぐに引っ込めた。

 

ピシリと波打つものがあった。それだけだが青年はそれだけで辞めておいた。あまり冒険はしないようにしているのか、長年の青年にとっての経験がそのように語るのか。神子は一瞬だけ行動をやめた。次なる一手を考えていた。

 

神子は流れに任せて一突きを放つ。

 

青年首筋キリキリを通り過ぎるが本人が一番反応を見せなかった。見えていたと言いたそうにしているのがまた腹立たしいものである。

 

「それは愚策だな。」

 

神子と青年の間合いは袖が擦れ合うほどだった。左手に持っていた剣で急所には当たらないようになっていた。

 

その対策をした状態で空いている右腕を垂らしている青年が攻撃を仕掛けるような事はなく蹴り飛ばしてから無駄な間合いを開けていた。

 

神子はふらつきながも後ろへ下がり次なる一撃の防御に徹したが何もしてこなかった。

 

確定した勝利を掴むための前段階の静けさなように感じた神子は体制を攻撃へと転じていた。

 

青年の右脇腹を狙った一撃を見舞う。

 

青年には軽く避けられた。

 

そして神子はそこから右へと軌道を変えると青年は待っていたのかどうなのか押さえ込んでそれ以上先には進ませるような事はしなかった。そして青年はその神子の剣の下を通る。

 

その真意こそわからないがナメているのは確実に伝わるようになっていた。

 

青年は身を屈ませてから足を動かして回転しながら立ち上がる。そして逆手持ちで構えていた青年を神子は誘われるように剣を振る。

 

左腕を前に出して右足は地面にあったあるものによって良からぬ方向へと曲がりこんだ。そして自分の体の向きが下へとそして横方向に向き始めていた。まるでもうかかることがわかっていたかのように確実に隙を作り出した青年は作戦が成功して嬉しそうな表情をしていた。それでもやはり神子にとっては悪いものではないと思われる。

 

足元を狙った一撃を見舞う為に石畳に寝転がった神子は弱い事はわかっていてもわざとこうさせられたと思われる。そうでもしないと割に合わない一撃に見舞われる事になる。そうならない為にこのようにした訳だが諸刃の剣であるというのも承知していることだった。

 

青年は負けないようにその場で大きくジャンプしてから音もなく地面に着地する。その繰り返しであるように感じたのか青年はその場からは逃げてみることにした。別に怖気付いたからということではなくその察したという事である。

 

だが青年はそこで諦めるような事はなかった。小刀を手の中でクルクルと回す。その音や風に耳を澄ませながら己が時間をを過ごしている青年が神子の方へと走り出した。

 

間髪入れない攻撃に普通なら対処できないはずだった。

 

だがそれは大きく違う結果となる。

 

七星剣によって青年の小刀を止めた神子は更なる追撃を見舞う。

 

青年の剣を止めた後に横薙ぎを行う事で意図的に間隔を生み出したのを良いことに右脚で石畳を踏みしめて渾身の一撃を見舞う。

 

しかしその場には何も無かった。

 

青年は瞬時に低空に飛行して咄嗟に場所を移動させて神子の一撃を避けたのである。右膝を石畳に付けて神子のことを睨みつけているのような目つきをしている青年だが上を向いて油断ない目線をしているだけで他意はなさそうだ。

 

その場で向き合う二人。

 

青年は指に力を込めて精一杯に踏み出すと神子の前に倒れ気味に向かっていく。そして持っている小刀によって一気に首筋を狙うが七星剣によって二刀を抑えてから前を弾き出す。

 

青年の剣は一度下がるともう一度側面から抱きしめるように動かす。

 

神子は後ろに下がりながら七星剣による突きを行う。

 

青年はまず右腕の持っている剣でその軌道をずらすと左腕である程度固定化していた。

 

そこから右腕の小刀の持ち方を変えると落とさせるように押し出す向きを変えてから神子の剣を無力化。

 

そして回転を利用して一撃を当てる。

 

兎に角何が起こったのかは全く分からなかった。だが特に見に覚えもないわけでもなかった。

 

みこの脇腹には青年の小刀の柄頭が当たる。

 

だが、左腕から伸びている小刀はまた別に位置から神子の首を狙っていた。突き刺すナイフのような構え方で切っ先だけは首筋に当たりそうになっていた。その時に神子が感じた恐怖というのは計り知れないものなのだろう。

 

その様な雰囲気が珍しく浮き彫りとなっていた。

 

青年は小刀を離すと一礼してから所定の位置に戻した。黒の上着の内側、何らかの入れ口の中に納めているらしい。鯉口に当たる鍔の音がしていた。それだけで鞘があるのは確認できる。

 

神子は仕方がないので不満気に七星剣の金色の鞘の中へと戻す。そして剣の柄に左腕の肘を乗せていた。

 

「大したものだよ。」

 

「滅相も無い。」

青年はただただ自信もなさそうにヘナヘナとしていた。

 

「これで私の処分はどの様にするつもりだ。」

 

「特に考えていない。」

 

「勝者として敗者への服従を誓わせたいとは思わないのか。」

神子は威光の差した全身を使って青年を威圧してきた。それを青年がどの様に捉えるのかは知らないが普通なら跪いてしまっても仕方がないと思われる。それだけの力は持ち合わせていた。

 

「興味ない。」

青年の回答はあっさりとしたものだった。そしてどの様な処分にするのかも何も考えていなかった。その時を生きる青年らしいといえばそうなるらしい。

 

「それが君の回答と言うのなら仕方がない。」

 

「して、貴方はこれからどうするつもりだ。」

青年は聞いた。

 

「刃を交えた仲だ。神子と気軽に呼んでくれて構わないよ。」

 

「それは断る。いちいち人の名前は覚えない主義だ。」

 

「そう言うなら好きに呼ぶがいい。私はこれからもう少し寝ていることにしよう。私の好きな季節がもう少しでやってくる。そして十分に力が戻っている様には思えない。」

神子は青年の背中に取り付いているかの様な神霊の方を向いていた。人間一人に負ける様なものであれば今持ち合わせている力は弱々しいものなのだろう。そう神子は考えたらしい。

 

「そうか。その前に話をして欲しい奴がいる。人と妖怪の両方を保護しようとしている貴方の封印している本人だ。」

 

「わざわざ足を運ぶなんて可笑しいと言いたいですが仕方がありません。君の頼みなら聞くしかないでしょう。」

 

「そうか。」

青年はとても軽い返事で神子への返答としていた。大きく歴史が変わろうとしている、その事には目もくれず。

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