青年放浪記   作:mZu

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第232話

何も無かったはずの冬というものは終わりを告げて雪が溶けてこれから春が訪れようとしている幻想郷では欲望の塊とも呼べる白い玉のようなものが浮かび上がっていた。前にも誰かの背中で見たことのある人やある意味では見慣れているが今回はどうもその様には感じれなかった人、はたまた興味だけで出かけていく事にした人。その欲望というのは人それぞれだが各々の目的を達成するために一旦向かう事にしたところがある。それが冥界の中にある白玉楼と呼ばれる場所だ。生者となろうとしている霊が集まるその場所ではそのように感じる人がいてもおかしくはなかった。一先ず三人はその場所へと向かうことにした。

 

 

「それで、アンタが幽霊の親玉ね。」

赤い巫女の服を着た博麗の巫女はいつも通りお祓い棒を向けていた。その先にいたのはそれこそいつも通り誰かを待っていたと思われるその館の主であるピンク色の短い髪をした淡い水色の服装をして縁側でお茶を飲んで過ごしている西行寺 幽々子だった。

 

キョトンとしたカリスマも何もない表情をしているがこれでも博麗の巫女である霊夢が言う幽霊の親玉である。事実上霊の管理をしているがその仕事ぶりを見たことはないので誰も信じることはないだろう。

 

「お客さんかしら。妖夢ー、お茶を出してあげてー。」

特に気持ちの入っていない言葉で従者である妖夢と呼ばれる人に頼みごとをした。まるで状況をわかっていないように思えるがそれぐらいの余裕があるからこそできることなのがしれない。そうでもないと可笑しいはずだ。

 

「冥界なんてこんなひょいひょいと入って良いようなところだったけ。」

お祓い棒を振って今にも幽々子も殴りつけそうな霊夢の横で緑色の髪に蛙の髪留めと一房の髪をまとめているの白い蛇の髪留めをしている巫女、東風谷 早苗は不思議そうに小声で話していた。それはまた隣にいた人の耳に入ったらしい。隣にいた人はどんな些細な事でも聞き逃さないようにしているからこそ鍛えられたその地獄耳をしている黄色のカールのかかった髪をしていて全体的に黒色の服装をしているトンガリ帽子が特徴的な魔法使い、霧雨 魔理沙だった。

 

「大丈夫だぜ。前に来たことはあるからな。」

魔理沙は気楽そうに答える。それこそ何か重要なことがあるのかと言わんばかりに小馬鹿にしているかのような気がする。それだけ早苗の一言が馬鹿らしかったのか単純に励ましの裏返しとして言いたいだけなのかはさっぱり分からなかった。

 

「そうなんですね。それは良い情報を聞きました。」

 

「そうよ、偶にうさぎさんも来るんだから。」

どうやらもう一人地獄耳をしている人がいるらしい。その人は茶を啜ってこの状況で和んでいる芯の強い人だった。

 

「それは誰の事ですか。」

早苗はその言葉に食いついたらしく霊夢を事実上押し退けて話を聞く体制を作り上げていた。流石の霊夢もお祓い棒を納めると落ち着きなく足を動かすが何も口から出すようなことはなかった。それ程に怒り狂っているのかはたまたそれを通り越して呆れて物も言えなくなってしまっているのか。それは本人にしか良く分からないことであった。

 

「名前は確か。鈴仙だったかしらね。ねぇ、妖夢。」

 

「何ですか。薪から棒に。話を詳しく聞かせてから返答をさせてください。いつも私が困っているんですから。」

 

「だって、面白いんだもん。」

 

「何となく察しましたけどね。確かにその人は来ていますよ。永遠亭でどうやら薬剤の研究をしているようです。それで人里で日夜薬を売って歩いているようです。今日は来ませんけどね。」

妖夢は適当に持ってきていた湯のみ三杯を手渡してからその場に座った。幽々子の隣となるわけだが帰ることもできないと察したと思われる。幽々子は別にそこまですることはしなかった。このような事だから幽々子と青年からいじられることを知らないと思われる。

 

「その話は聞いた事があるぜ。確かにウサギのお姉さんと子供は呼んでいたはずだ。まさかその人とは。」

魔理沙は驚いたような納得して安堵したかのような声を上げていた。

 

「そんな呼ばれ方をされているのですね。大変でしたね。」

妖夢は何かを察したのかそのように呟いていた。その苦労がわかる人は妖夢が青年だけである。

 

「で、本題よ。アンタがチャチな神霊で何かしようとしているのか聞いているのよ。」

 

「そんな声を荒げないでよ。びっくりしちゃうわ。」

幽々子は弱そうな声を上げていた。霊夢は流石に眉をピクピクと動かし始めているがそれを口からは意思表示はしないらしい。きっと面倒なことになると思い始めているのかもう知っているのかそれは本人しか分からない。

 

「分かったわよ。もう一度聞くわよ。アンタが神霊を使って何かしているのかしら。」

 

「いいえ、何もしていないわよ。私が何かしようとすると思うのかしら。」

幽々子は聞いていた。

 

「春雪異変の事を忘れたとは言わせないわよ。」

 

「あの時ね。私と山本さんが始めた会ったときのことね。」

幽々子がそのような事を話し始める。誰も聞いていないと言いたくなった霊夢だがそれこそ相手の手中の行為であるのには変わりないのでやめておいた。幽々子はそれ程に厄介な人物なのである。

 

「それは知らないわよ。」

 

「私が教えることの出来る限りの事を教えてあげるわ。それで此処から立ち去って頂戴。信じるも信じないも勝手だけど何処へ向かっているのかは霊の管理者だから分かるのよ。」

幽々子は上から目線で聞いていた。霊夢は仕方がないので聞くことにしたのか首を一回だけ縦に畳んでから不満げな表情のまま幽々子の方を向いていた。流石にこの時ばかりは幽々子は何も関係ないことは話さなかった。

 

「それでそれは何処よ。」

 

「命蓮寺の裏側にある墓地の何処かね。途中で地中に潜るからよく分からないのよ。」

頑張ってね、と適当な言葉を付け加える幽々子を変に睨みつけたままその情報を貰うことにした霊夢は踵を返してから何処かへと向かっていく。その場所は別に言わなくてもわかることだった。

 

「妖夢、貴方も行きなさい。」

幽々子は早急に支度へと向かわせるとその三人の後を追いかけさせた。何をしたいのかそれこそ何があるのかは何も分かっていない。妖夢は二つ返事で用意をすませるともう一度幽々子の前に立った。

 

「それでは行ってきます。」

妖夢は主人に挨拶をしてから三人を追いかけていた。閑静となった白玉楼で一人幽々子はある人の訪れを待っていた。

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