青年放浪記   作:mZu

233 / 257
第233話

何もなく今日の仕事を終えて暇を持て余していたある男は裏側へと散歩することにした。その場所は灰色の綺麗に切り整えられた石が所狭しと置かれていた。その中を男は歩いていき何も気にすることなく門番に会釈すると地面の中にある階段の中へと降りていく。

 

其処には大きな神殿が置かれているのだが男は気にすることなく綺麗に揃えられている白い石畳の上を歩いて真ん中あたりで胡座で座り込む。何か意味があるとは思えないのだが何もない場所で何の音も立たないようなところでは男はとても落ち着いているらしい。

 

目を閉じて両手を折り曲げた足の上に軽く乗せて今居るこの空間に溶け込むようにして呼吸を整えていく。風の入ってくるような音だけではなく自分の鼓動や空気の振動などを聞こえてくるかのようなほどに己が中まで入り込んでいた。深い集中と自分を見つめ直すことで男は気を清めているらしい。別に此処で行う理由はないが此処が気に入ったのは大きな神殿が大きく関係しているということではない。また別の理由である。

 

「何じゃ、また来たのか。暇じゃのう。」

誰かが近づいてきた。男は瞬時に目を開ける。だが警戒するに値しないような人物なのでその場に座り込んでその人の顔を見ているだけにした。

 

その人は銀色の髪をしていて黒い烏帽子をかぶっているので仙人と思われるが実際のところは良く分かっていない。基本的に白を基調をしている長袖のものなのだが下の丈は変に短めというものである。青色で上下一式のように見えるので背が伸びて相対的に短くなってしまったのかそれとも元々その様なデザインであるのかは本人に聞いても仕方がないのだろう。

 

何故なら今まで千年以上は眠っている人達なのでその頃の記憶があるのかはまた別の話であるからだ。男はそれで良いらしいので気にすることは何もない。

 

「青年、何故そう頑張ろうと思える。」

 

「深く自分を知る事ができる。それだけで理由は十分だ。」

青年はそれだけを瞬時に答えた。迷いのないその言葉には変に重みのあるものとなっていて師であるかのような佇まいを持ち合わせていた。そのように感じるだけだろうがそう錯覚させるだけの技量はもう身についているのだろう。本人はそういつも語っている、俺では実力不足だ、と。

 

「それだけで毎日このように此処を訪れてはいつもそうしている。そして決まった時間に出ているそうじゃな。正直飽きたりはせぬのか?」

青年の目の前にいた物部 布都という尸解仙はそのように話しかける。青年は目を開けたまま何かを感じ取っているかのように落ち着いた口調で話し始めた。それほどの集中力を彼は持続させているのである。

 

「飽きる事はないだろう。このような時間は必要なものだ。それに此処なら神霊が多く漂っている。変に削がれるので再び入れ直したり出来る。」

確かに青年の周りには白い玉のようなものが現れては消えて、消えては現れている。布都としてはそのような姿は太子様を思い浮かべるらしく感嘆するしかないという事である。それぐらいの技量を持ち合わせていながら決してそれを行使するような事はない。ある意味ではしっかりと徳を積んできた人と思われるがそのような事に本人が興味がないということである。勿体無いものである。

 

「そうじゃな。そう思う。じゃが、別に外でも良くないじゃろうか。」

 

「それはまた別の話になる。もしそうならこのような場所には来てすらいないだろう。」

青年は落ち着いた口調で終始布都と話をしていた。布都はもう何も文句を言うを辞めたらしく仕方がなくその場で居続けることにした。もう仕方がないのだろう。

 

「太子様にも報告しておこう。我も参加してみようと思う。」

布都はそのように答えると青年の目の前から神殿の方へと走って向かっていく。顔つきと同じく幼く感じるがそれがこのような場所では一番良いと思われる。どのような場所でも少しは騒がしい人がいると楽しくなるものである。

 

「そうか。」

再び目を閉じて自分の中へと入り込む青年を邪魔したのはまた別の人物だった。強く踏みつけるかのようなその足取りはあまりの天井の低さに飛ぶ事をやめたらしい。青年は瞬時に感じると目を開けるだけでその場からは動かなかった。そして三人と少し遠くにいるもう一人の足音が止まった時まで青年はその場から動く事はなかった。

 

「アンタが神霊を呼び出している犯人かしら。」

ある人は厳しい口調でそのように話していた。目の前に神霊らしきものを大量に纏わせている人を見ればそうなるのは仕方がないと思われる。

 

「早めに観念する事だぜ。私たちは最強だからな。」

またある人は大人しくしているように促す。座っている人に言っているので抵抗しないようにしているらしい。別にそれを行う必要は全くないと思われる。

 

「どんどん話を聞いてみましょう。」

状況をまるで分かっていないような人はその二人とはまた別の物の見方をしているらしい。そうでもないとこのような発言はしないと思われる。

 

「これは勝手に集まっているものだ。気にする事はない。」

青年はそのままの体勢で答えていた。胡座をかいて神霊と戯れているかのようなその人物は三人と一人とは大きく関係性のある人物だった。

 

「アンタがなんで此処にいるよの。」

その声に合わせて青年は立ち上がると何かを確かめるように体を伸ばしていた。そして小さな声が漏れているがそれは誰もが無視していた。ただの蹴伸びだけなので何か言うようなことでもないと四人は感じているのだろう。そして青年は一通り体を動かしてから口を動き始める。

 

「妖夢、最近の幽々子の様子はどうだ?」

 

「え、あ。えぇっと。お元気そうにしていますが何か気になることでもありましたか?」

話していた三人とは離れた位置にいたはずの白玉楼の庭師兼剣術指南役の妖夢は急に話を振られたので困り果てたような反応をしていた。そして大きく仰け反るかのようなほどになっているが青年は直接それを見るような事はない。四人に対して完璧に背面を向けているからだ。

 

「伝えておいてほしい。そのうち現れる、と。」

青年はそれだけを話しているが実際はそこではないことなどもう分かっているようなことだった。

 

「アンタ、私の話を聞きなさい。」

 

「神霊の事について聞きたいのだろう。これは勝手に付いてくるものだ。霊夢も俺と同じようにしていれば一つくらいは懐くかもしれない。」

青年はそれだけを答えていた。それから青年は怠そうに体を反転させていた。痩せこけた細身のある顔をした青年はそのしっかりと眼光のある目で三人をある程度距離を詰めないようにさせていた。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。