黒髪に赤いリボンをつけた博麗 霊夢。黒いとんがり帽子がトレードマークの霧雨 魔理沙。此処最近幻想郷にした巫女の東風谷 早苗はその姿に驚いていた。それほどの変わりように唖然としていたと言うのか。そうでもないとこうは大騒ぎになるような事はない。
「どうしたのよ。そんな痩せこけて。」
霊夢は急に心配するような事をし始めたがそうなるほどの衝撃というのはあったのだろう。青年は特に反応は示さないままにその場に呆然と立っているだけだった。無駄なエネルギーは使用しないというのか使わないようにしているというか。明らかに変わっているのはよく分かる。
「断食の途中だ。特に気にすることもない。」
青年は周りの三人の反応には目をくれなかった。だがその眼光の鋭さは一切衰えている様には見えなかった。それとも逆に強くなっている様にも見えた青年はいつも修行を嫌いしようとしない霊夢でさえも何も言わせなかった。魔理沙は何か嫌そうな表情をしているだけで何か話す言葉がないと思われる。それほどまでにその変わりようは桁違いなのだろう。それとも予想を遥かに超える言うならば怪物となっていることに驚きを隠せないというべきか。
「凄いですね。何か目指しているものがあるのでしょうか。」
早苗は二人とは違って軽く受け止めている様だった。きっと常日頃から向上するための何かを怠らずに行なっていると思われる。青年は瞬時にその様に思えた。
「で、アンタが此処にいる理由は何かあるのかしら。」
霊夢は話が脱線していることについて怠そうにするだけ。青年はそうなるだろうとそこまで大きくは注目しているわけではなさそうだ。
「少々前に霊夢には見せたはずだが神霊という物を見つけるためにこの上にある命蓮寺に身を置くことになったのだがその日々の中でこの洞穴を見つけた。その人に貴女達は興味がある様だが俺を倒してから行くといい。俺など本気で戦おうとより醜くなるだけだ。」
青年は冷静に話していた。一切の抑揚はなく淡々とした落ち着いた口調であった。重みのある様なその言葉には霊夢達も固唾を呑むしかなかった。それ程に目の前の青年の先にいる人物がどの様な人物であるのか気になるらしい。
「それなら私は強引にでも通らせてもらうわよ。」
「そうか。好きにすると良い。先に言っておくが俺を倒そうとこの先にいる神子を倒そうとこの異変は解決しない。言わば、これまで霊夢が巫女としての修行を怠った罪に等しい。」
青年は適当に右腰から剣を抜くと下段で切っ先を下に向けた戦う意思があるのか不明な感じに思える持ち方でやる気があるのかはさっぱりわからない。あると言えばそうだ、と眼光は答える、いや、と答えるならその姿がそう答える。霊夢はお祓い棒をいつもの様に構えて札を構えるが一切動く事はなかった。
「どうしたいつもりかはわからないが三人居るがそれで良いのか。」
魔理沙は霊夢が構えるのを見て魔理沙もお得意の小さな八卦炉を取り出す。そしてお得意の魔法を放つ。
「マスタースパーク!」
魔理沙の持っている八卦炉が火を噴く。その炎は白くなっている。星の様な輝きのあるものが青年の前まで向かってくるが当たる様な事はなかった。
素早かった。
青年が動き出したのが見えていなかった魔理沙は直前までその動きは分かっていなかった。
確かに魔理沙の魔法は強力であるがその威力とその範囲を裏目に出る事がある。それは今の様な事であり青年の優しさによって命は奪われる様な事はなかった。
「魔理沙、やたら撃つのはいいが相手がどの様な人物であるのかは知ってから撃つべきだ。」
青年は刀身の峰で小さな八卦炉を弾くと白い閃光は軽々しくもどこかへ向かって行ってしまった。そして音のない場所でそれが落ちるだけが聞こえてくる。
その時間、その瞬間は時間が止まっていたかの様になっていた。まるで時計が落ちてしまったそんな瞬間の様だ。
「向かってくる。また拾えば良い。斬ってはいない。」
「分かったぜ。」
魔理沙は結局のところ拾いにはいかなかった。いや、拾いに行くことなど許されているはずがなかった。それだけの威圧を持って足を竦ませた青年は踵を返してある程度の距離を空けるとその場で立っていた。
「もうそろそろ顔を見る事ができるだろう。そうしたらどうなるかは見ていればわかる。」
青年は悲しそうな声でその様に話していた。
「そこまで言うのなら待ってあげるわ。そうでもないといけないものね。」
霊夢は仕方がなさそうにしているがそれだけだった。何か言うこともないのだろうがそれ以上に迷いがない一筋なのでもう動く様な事はしに買ったのだろう。霊夢は札を袖の中にしまうとお祓い棒を構えるのをやめた。
それを見て青年も剣を納める。それから何も起こらない様に思えたがある人がやって来た。
青年の近くに纏わりついていた神霊とされている白い玉は軽々しく奪われてしまった。そしてその後ろにいた人へと纏わりつく。
「神子、客が来ている。対応を頼む。」
青年はすっかりと普通の人間となっていた。そして首だけを向けて軽く話しているが話しかけている人の威光とも思えるものが凄まじいものだった。
「分かっている。聞こえていたから分かっている。青年、此処までご苦労だった。」
「アンタがこの異変の元凶なのね。」
霊夢は厳しい口調で話すがその人には軽く弾き返されていた。
「いいえ。この神霊は私に欲について聞いて欲しくてこの様に集まってきている様です。」
その人は青年と同じく落ち着いた口調で話しているのがまた鬱陶しく感じたのか解決出来る気がして来なくなった霊夢はその場で諦めてしまった。
「霊夢、向かうなら早めに向かう方が良い。違うなら素早く踵を返す事を勧告する。」
「分かったわよ。」
「あともう一つ、神霊の騒ぎが収まってから宴会を開くといい。きっと信仰も簡単に集まるのだろう。」
青年は軽い口調でいつも通りの感じで話していた。だが霊夢の逆鱗に触れる様な発言だが本人が何も言わないのなら何も問題とする事はない事であるらしい。三人は洞穴を出て行く事にした。
「山本さん、またいらしてくださいね。」
まだ帰っていなかった妖夢はそれだけを伝えると踵を返して洞穴から地上へといくつもりらしい。青年はその背中を見て居なくなるのを確認してからゆっくりとした動きで後ろを振り向いた。
「宴会が開かれたら桜を見に行くか。」
青年はそれだけを話してから白い石畳の上に座り込む。その右横に神子が座り、その横に布都が座り込む。
今回は布都があまり騒がなかったが後ろで神子が止めていたのは青年は知らないのだろう。それとも気づいている上で何も話しかけようとはしないのか。
自分の内なる声と向き合い続ける青年にはその声は聞こえる時と聞こえない時がある。どうやら今回は聞こえないらしい。