青年放浪記   作:mZu

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第235話

その後、射命丸 文の文々。新聞では神霊異変として大きく取り上げられて何やら異変を解決したらしいと人里では噂となったが本来見えないので何があったのかはさっぱり、というのが人々の率直な感想だった。

 

その後、春の訪れを待つばかりの人々にはこれから起こる季節を楽しみにしていた。

 

 

春の麗らかな陽気で桜も咲き始めた幻想郷では皆が新しい季節の到来を楽しみにしていた。それこそ何かあったかの様に思えるほどに熱狂した様子は前に起こった宴会の異変を思い出される。

 

桜も満開となり頃合いとなった博麗神社の巫女である博麗霊夢はあらゆる場所へと招待状を送りつけて多くの人を集めようとしていた。幻想郷では大きな行事の一つであるために博麗の巫女は生活費目当てに呼びつけるが基本的には成功した見込みはない。だがこの場所ではこれぐらいでしか資金を稼ぐことのできないため仕方がないが妖怪ばかりが集まり賽銭が落とされない現状というのは巫女にとっては大惨事となる。

 

「今日も妖怪ばかりが集まってくるのね。」

霊夢はいつも通りなので何か特別に何かを考えているわけでもなかった。この博麗神社へと訪れる物好きは人里の人々の中では命を投げ出したいか現実に打ちひしがれた者にしか来ない。そのはずだったがどうやら今年は違うらしい。

 

そう思えたのはこの場所へと来るための石段の階段を上ってくるその音が大きく大量であるので博麗の巫女は持っていた湯のみを取りこぼしてしまった。本来なら来る人は外の世界へと戻りたい人がやっとの事で辿り着いて懇願して来ることがあるがそれにしてはかなりの人の量である。

 

ふと立ち上がり博麗の巫女はいつもいる小屋の縁側から御神体のある本殿まで歩いて様子を見ることにした。

 

其処には博麗の巫女でさえ目を見開くほどの大量の人々が何かを持ってこの場所へと来ていた。米や果物、作物を持ち寄って賽銭の代わりに置いていく者。しっかりと賽銭を投げ込んで何かを願っている者。それは多種多様に人々は思い思いの時間を過ごす。その後、博麗の巫女を見かけたので一礼して帰っていく。また直接持ち運んで来た物を渡したりしていた。

 

此処では宴会に参加できない者が自分の作っているものや商売品を持ち寄って博麗神社へと辿り着いて何かを置いていく本来ならあり得ない光景にヘコヘコと頭を下げる人々よりも頭を下げている博麗の巫女。本人でさえどうしてこの様になったのかはさっぱり分からないが何か大きな事が起こっているのは間違いなかった。

 

「これは驚いたな、霊夢。どうするんだぜ。」

縁側で霊夢とは違い暇にして今の現状を楽しそうに見つめている霧雨魔理沙は沸かしていた茶を湯呑みに入れて口で息を吹きかけて冷ましながら飲んでいた。疲れきった霊夢を軽々しく迎えると小屋の襖を閉じてから中にある卓袱台へと移動を始める。

 

「何が起こっているのかさっぱりね。」

霊夢は零した茶を入っていた湯呑みを持ち上げると新しく入れると湯気の立った状態で啜っていた。どうやら落ち着きたいらしいがそれが不可能であると外のガヤガヤとした音が静かに物語っていた。

 

「本当だぜ。明日が宴会の開催日なのにな。一体何がしたいんだぜ。」

魔理沙は楽しそうにしながら話していた。友人であるはずだが人の事で面白いことは純粋に笑ってしまうのでこれは仕方がないことなのかもしれない。だが急に現れた人々の事は気になるらしく霊夢の話は真剣に聞くつもりらしい。

 

「きっと新聞を読んでくれたのね。」

 

「無いと思うぜ。しかもわざわざ何かを持ち寄ってくる様な奴は居ないだろうぜ。此処には妖怪かそれに対抗出来る人間ぐらいしか近づくことができない。それなのにこんな大量にくるという事は誰か細工したとしか考えられないぜ。」

魔理沙は意外にも現実を見ている様に思える。そうでもしないと来れない場所にあるために誰も寄り付かない、妖怪の巣窟とされている博麗神社に誰かの差し金がない限りは人が集まる様な事はない。魔理沙は冷静にその事を考えて見据えていた。

 

「そうだとして誰がそんな事をしたいと思うのよ。此処は大結界を守っている場所なんだから八雲に援助を貰えば万事解決なのよ。」

霊夢は意外にも冷めた反応を見せていた。そんな霊夢に魔理沙は目を丸くして何か悟った様な表情をしているだけでそれ以外は何も話す様な事はなかった。それこそまるで抜け殻の様な。

 

「そうなるとその人が手を引いている可能性があるんだな。」

 

「そうね。八雲なら別に関係のない事だけど。他の人なら大きな問題になるわよ。」

 

「そうなのか。その人の好きにさせれば良いんじゃないのかぜ?」

 

「それが出来たら簡単な話よ。」

霊夢は魔理沙の一件楽しそうな話を一蹴りして何かを含んでいるかの様な言い方をしている。魔理沙はそれだけでもう関係ない事だとして何かを反論したりする様な事はしなかった。元々魔法使いなので進行とか結界の事については何の知識もない魔理沙はそれを全て有している霊夢にはこの様な話に限った話だが噛み付いたりする様なことはない。それ故に魔理沙はこれ以上話したりしないという事である。

 

「邪魔する。」

其処には黒い礼服で白いのシャツを内側に来ている執事の様な格好をしている見覚えのある青年が立っていた。

「人の家なんだけど。普通聞いてから入ってくるでしょう。そのくらいの礼儀はわきまえなさい。」

 

「今更、その様な気遣いは必要だろうか。」

 

「ええ、必要よ。」

 

「妖怪を問答無用で倒している人の言葉とはとても思えない。して、活動は行わないのか。」

 

「アンタね、何をしたら良いのよ。」

 

「此処の有用性について話してみたりしないのか。もしかしたらもう来ない人になるかもしれない。この騒ぎを聞きつけた他の宗教の関係者はこの山を下った先で思い思いに活動をしている。紙を配ってみたり道案内を引き受けたりしているが何か活動しないと全て持っていかれる。それでも良いのか。」

 

「何れにせよ、最終的に此処へと向かってくるのだから何も変わらないわよ。」

霊夢は茶の半分ほど入った湯呑みを机の上に音を立てて置くと帰れと言わんばかりに青年を睨みつけていた。だが、本人が一向に変帰る気はなさそうなので霊夢は引き続き続けていたが途中で飽きたのか呆れたのか辞めてしまった。

 

「兎に角、今は忙しいのよ。今日のところは早く帰ることね。」

 

「忙しいとは程遠い姿を見えるが修行の途中であるのか。」

青年は軽い気持ちで聞いていた。

 

「そんなものは必要ないわよ。私が少しやれば大抵のことは解決できるものよ。」

 

「それでこれまで本気を出していないと。大抵の奴がそのような理由をつける。やれない事をやれると言い張るのはそれなりの努力を積み重ねてから物申すべきだ。霊夢」

 

「それは分からないわよ。アンタが知らないことなんて沢山あるでしょう。」

 

「確かにこの先に何があるのかは全く知らない。だが知らないものもある、だからこそ学ぼうとしている。それを諦めたらどうなるのかは言わなくても分かるだろう。」

 

「分からないわよ。」

霊夢は不機嫌に答える。青年は意外にもさらりと受け流しながらゆっくりと話し始めた。

 

「置いていかれる。走るのを辞めてれば止まるのと同じ道理だ。」

 

「人との距離が相当空いているのが私なのよ。それも分からないようね。」

 

「そのような自意識過剰な話は聞いていない。こんな場所へ来ているのだから少しは活動を起こさねば此処には本当に誰も来なくなる。一人は妖怪にも人間にも平等に優しく接していて、もう一人は妖怪には手厳しいが人間にはとても甘い。そして最後の人は特に男性からの人気がある。山の中では熱狂的なものであると聞いている。」

 

「それが誰なのか聞いているのよ。」

 

「神子に聖、早苗の言ったところだ。それぐらいは見ていてほしい。」

 

「私は興味はないわ。信仰なんて勝手に集まるものよ。」

 

「そして同時に簡単に失うものでもある。」

青年はそれだけを伝えてからこの場所からは離れた。

 

「何なのかしら。」

霊夢は単純に毒を吐くだけで何を話したいのかはさっぱりという感じだった。

 

 

そして当日。案の定妖怪とそれを退治できる力を持っている人間しか来ないという魔理沙の言った通りのことが起こった。そしてそれは青年の言い分とも間違っているとは言い切れない結果となっていた。

 

昨日の熱狂的な参拝客は今日のところは一切くるような事はなかった。それどころか人が十分に集まらないらしく空いているところがある。その数は全くと言って分かっていないが大体の人が集まっていたのでもう来る見込みはなかった。

 

だが、そんな博麗神社に多くの足音を響かせた人がいる。

 

金髪に紫色のグラデーションをかけている女性で白色の無地の着物の上に黒色の物を羽織っていて前の方はばつ印の黒い帯で止められていた。そして黒い革靴のようなブーツを履き慣らしている。

 

もう片方には獣の耳のようにも見えなくもない先ほどの人物よりかは薄めな金色をしていてヘッドホンのようなものをしている。そこには和と文字が書かれているだけである。ノースリーブで薄紫色の服装で紫色の服装をしている。マントは羽織っていないらしい。

 

そして真ん中で先ほどの二人には挟まれる形で此処までやってきていた青年は昨日と変わらぬ格好をしていた。まるで両肩に抱えているような雰囲気があるが徳のある人物同士でそのようなところまでは発展するような事はなさそうだった。それ程に磨かれているというのかそれぐらいの威光があると言うのか何とも言えなかった。

 

「よく来たわね。」

 

「無愛想な挨拶だ。それでは来るやつも少ないと思われる。」

 

「残念だけど昨日は沢山来たわよ。今日も後からどうなるか見ものね。」

 

「それはない。して、どこか空いている場所はあるか。」

 

「三人なら適当に座りなさい。」

霊夢は適当な返事をしていた。しっかりと後ろについてきていた人数を数えるような事はなかった。

 

「折角多くの人数を集めたのだが無為に終わりそうだ。適当に空いているところに座ろうか。」

青年は少し気を落としたような話し方で霊夢に文句を言うかのように通り過ぎたがその後にその左右の関係者と妖怪の山に住んでいる場の人が来ていた。

 

それは青色の髪をした河童や厄神様、そして神までもが参加するつもりらしい。それだけで霊夢が度肝を抜くのには十分なものだった。十人は超えるような大所帯で現れた青年に驚かないわけがないという事である。

 

「アンタ、何人連れてきているのよ。」

 

「さて。沢山の人に声をかけたら忘れてしまった。」

青年は軽く答えるだけで何か特別に用意しているということでもなさそうだった。それだけに驚いた口が塞がらなさそうな霊夢は何も言えずにその場に立ち尽くしていた。だが、十数人もいた人もこの宴会の会場の中に溶け込むといつも通りの雰囲気を出している霊夢。それを笑って見ている住人は楽しそうにしているだけだった。

 

「何よ、何か面白いことがあるの。」

 

「いや、昨日の件なんだが手を引いていたのは青年だろうぜ。根拠はあまりないがそうでもしないとこうも集める事はできないぜ。」

 

「確かにそうなのよね。それにしてもどのように集めたのかしら。」

 

「それはきっと布教活動を上手く利用したとしか思えないぜ。大抵はその感じの雰囲気はあるだろう。」

魔理沙は適当ながらも的を得ていると思われる発言をしているので霊夢は何も反論はしなかった。それどころか魔理沙の発言が大体合っているようにも思える。

 

「確かにそうね。こうなれば本人に聞くしかないわね。」

霊夢は急に怒っているかのような雰囲気を出すが魔理沙はそんな事を気に留めずに二言だけ耳の中に入れることにした。

 

「それは無駄だぜ。とぼけて終わりだ。」

魔理沙は酒の入った杯を持って口元に持っていくと一気に飲み干していた。そして自分で汲んで満面の笑みをこぼしているので霊夢ももう何も言うつもりも反論をする気力も削がれたと思われる。

 

そして大成功のうちに終わった春の宴会の後、各々の住処へと帰っていった。

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