博麗神社での宴会を終えて帰る事にした青年。そしてその青年というのは紅魔館の主人と少し話してから地下へと向かった。その地下には本が立ち並ぶ棚が所狭しに置かれている。そして青年はその林を潜り抜けていつもの階段を使用して下へと下がると平然とした態度で歩いて赤いソファーに座る。
「久しいな、パチュリー。元気にしていたか。」
青年はフカフカのソファーに前かがみになりながら目の前にいる人に話しかけている。
その人は紫色の艶やかな髪をしていてジト目をしている。気の抜けたような目をしているがしっかりと見据えている。いつも通り魔道書を開いたままでどちらとも言えないような感じが受ける。
青年の様子は少し疲れているのか目が少し閉じているように見えるがきっと気のせいなのだろう。
「ええ。それにしても何処で道草を食っていたわけ。」
パチュリーは少しだけ怒っているような雰囲気のある声で小さく答えていた。
パチュリーと青年がいる地下は本来音が立たないはずの場所の図書館であるのでそれでも十分に聞こえる。青年は何か考えているような雰囲気で首をひねる。パチュリーは普通に待っているつもりだろうがいつも通りの光景である。
「草を食うほどお腹は空いていない。」
「そう言う事は聞いていないわよ。」
パチュリーは不満そうな表情を浮かべている。それはそうだ。
「命蓮寺で墓地の掃除をしていた。」
「そう。まぁ、貴方が何をしようとも私には関係のないことだから別に良いんだけれど暫く来ないから心配したわよ。」
パチュリーはそんな風に言うが青年は気にしている様子はなかった。本当に善と悪という秤にはかかりそうもない生き方をしている。パチュリーとは長い付き合いなので別にその事が理解出来ていないということでもなかった。
「そうか。しかしここは何も変わらないものだな。」
青年は感慨深く話していた。やはり懐かしいというのかそんな感じはするのだろう。
「変わっているはずがないわよ。貴方みたいに自由奔放な場所ではないわよ。」
「そうか。それは良かった。」
青年は深くソファーに腰掛けると落ち着くために目を閉じて眠りそうになっていた。それほどに心が落ち着く場所へと変わっているのか青年はついに横になり始めてしまった。
「いい寝顔ね。」
また魔道書へと目を向けるパチュリーとソファーに眠りかけている青年はお互いに干渉しない静かな時間を過ごしていた。
夢とかではないと思われるがそんな時間もいいと思われる。青年は意識が急に落ちたような感覚を覚えて飛び起きた。
「おはよう、いい眠りだったわね。」
紫色の落ち着いた雰囲気のある服装をしている女性でおっとりとした雰囲気のある。そして左側に一房髪を結んでいる紫色で被りやすそうな帽子を頭の上に乗せている。そしていつも通り眼鏡をしている。
「今はいつぐらいだろうか。」
「朝じゃないかしら。時間に縛られた事はないから興味もないわ。」
女性は特に目線の行き先を変えることもないまま話していた。だが、それが二人の間では当たり前かのような感じがある。お互いに何も考えてはいないかのようになっていた。
「朝か。よく眠っていたようだ。」
青年はソファーの上で横になりながら目を開けていた。それから上半身だけを起こすと左腕をソファーの背もたれに乗せてから足を下ろしていた。そしていつも通りもたれ掛かっている。その様子は主人のようなものであるが立場上は一番下である。
「本当にそうね。とてもお疲れなのね。」
パチュリーは変に優しい声で青年に話しかけていた。
「どうした。」
青年はそれに驚いたように話している。
「いつもの事よ。そうでしょ。」
パチュリーは特に気にしていない様子なので青年も何もいうような事はなくなった。
「そうか。」
青年はそれだけを答えて何処かへと向かっていく。いつも通り何処かへ向かっていく青年を止めるものはここには何もない。偶に物を壊しては直している青年にはある程度近場ならば何処に本が置かれているのかはよく分かっている。此処には一応司書もいるのだが一階なら青年は使わずに探し出す事ができる。
「そう言えば命蓮寺で暮らしていたようだけど何をしていたのかしら。」
「別に。適当に座禅を組んでいたりして過ごしていた。」
「そう。墓掃除もしていたそうだけど他にも何かしていないのかしら。」
パチュリーは少し青年が何をしていたのか興味があるのか聞いている。実際のところは何か話すような事はしていない。
「特に何かしているわけでもない。一日も変わることもなく過ごしていた。朝は叩き起こされたのはいい思い出だ。」
「何をしているのよ。」
パチュリーもそこには気になるらしい。
「朝はとにかく早くてな。暫く起きられるようになるまでは苦労した。日も出さないうちから外で座禅を組んでいた。それから精進料理を食して俺は墓掃除をしていた。」
「そうなのね。それは大変な生活なのね。」
パチュリーとしてはかわいそうな子犬でも見ているかのような表情をしているがそれが何処に向けられているのかは知らない。
「そうでもない。此処とあまり変わる事はない。やる事は変わったぐらいだ。」
青年は変に楽しそうにしていた。別に悪くないような感じはしていると思われる。
「そういうものなのかしら。身体的にはきついものとなりそうよ。」
「それも精神を磨くためには必要な事だ。とてもいい経験になった。」
「それなら良いけど。」
「パチュリーもしてみると良い。慣れると楽しいものだ。」
青年はなぜか楽しそうに言っているのがどうも気になるらしいパチュリーだがどうも聞くつもりはないらしい。
「そ、そうなのね。遠慮しておくわ。」
「そうか。仕方あるまい。」
青年は強くは勧めるつもりはないらしい。無理にやるものでもないしやらせるものでもない。全ては自由に行われているはず。
「本当にそれだけしかしていないのかしら。どうしてもそう思えないのだけれど。」
「最後の方は断食をして欲を切り捨てることを始めた。白湯は飲ませてもらっているがそれ以外が口に入るような事はない。それ以外は別に何ら変わらない生活をしている。」
「お腹は空かないのかしら。心配だわ。」
パチュリーとしては珍しいが青年を心配しているようなそぶりを見せているのがどうも気になるらしい。青年は聞こうか聞かまいかも酔っているかのように目を泳がせていて不審そうな感じに思える。
「今日は優しいが何かあったのか。」
「いえ、何もないわよ。」
「そうか。して、そう心配するほどでもない。日頃からそうしていると食べなくても良いのではないかと思えてくる。貴方もそうであろう。」
「私は魔法でそのようにしているだけよ。貴方と大きく条件が異なるわ。」
パチュリーは前から不食と不眠を可能とする魔法を自身にかけて一日中魔道書を読み続けることを可能としている。いわば本に依存しているわけだが青年はその方がいいと思っている。学べる事は人に聞けばいいし人から見た視点というのが必要になることもある。
「そうか。それを解除するような手段はないのか。」
青年はそう聞く。パチュリーとしてはそれは可能だがそれをしたところで何か変わる事があるのかと思っていた。
「あるにはあるわよ。したい訳ではないけど。」
「なら仕方がないか。」
青年は先ほど取っていた本を開くと久しぶりに読み始めた魔道書を見つめながら青年は時間を過ごすことにした。そこに現れたのは空気の読めない人だった。
小さな見た目で水色のような髪で耳を隠す程度の少々遊ばせた感じの髪型で赤いリボンのついた白い被り物をしている。そして腰に赤いリボンをしている白色の服装で他に袖やスカートの裾にも同じようにリボンが施されていた。靴も白いが爪先にはまた赤いリボンが付いている。
「朝食が出来たから呼びに来たわよ。」
その人は青年の後ろの近くまで寄るがほとんど無視されているようにも感じれた。ソファーの背もたれほどの距離しかないほどだったが一切気づくような事はなかった。
「レミィ、やめておいた方がいいわよ。」
パチュリーはそんな友人の姿を危惧するように一言忠告している。だが聞く耳を持たないのでパチュリーはため息を一つ出してそれで終わらせていた。
「どうしたのよ。」
遂に体を揺らし始めたが触れようとしたその瞬間にはこちらを向いていた青年は目だけで何かを訴えていた。
「うわーん、パチェ。怖い目をしてくる。」
その人はまるで子供かのように泣き喚いているがそうさせた本人は気にする事なく魔道書を読みつづけていた。周りの状況がまるで飲めていないかのように見えるが別にそうでもないというのは聞かずともよく分かる。
「仕方がないわよ。青年の邪魔をした貴方が悪いわよ。」
パチュリーはそれだけを伝えて慣れた手つきで図書館のある館の主人であるレミリア・スカーレットの頭を撫でている。青年はあいも変わらず魔道書に目を通している。
「お嬢様、何処に行かれたのかと心配しましたよ。」
「咲夜じゃない。何かあったのかしら。」
「そのような事はないですよ。お嬢様が何処かへ行かれていたようなので探していました。ところで、青年はご一緒に朝食を頂きませんか。」
「それでは頂こう。多くは食べられないからスープだけでも良いだろうか。」
「好きなだけ食べなさい。」
「うっ、どうしてなのよ。」
「まずは身振りから覚えることね。」
パチュリーはそれだけを伝えてもう行くようにしミリアに伝えていた。仕方がなく不満そうに図書館から出て行く二人の後ろへと付いて行くように歩いて行く。パチュリーはそれを安心出来るまで眺めてから目を落とした。