青年放浪記   作:mZu

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第246話

早朝といってももう日差しは出ていて気持ちの良い朝であった。青年は何時ものように紅魔館の門の近くに向かう。その岸には青年の美鈴が手作りした汚くなってきた舟が一隻地面に打ち付けられない杭に縄をかけている状態で停泊していた。

 

青年は門番に一礼しながら釣竿を肩に背負って舟の上に乗り込むと中に置かれている櫂を取り出して水面を漕ぎ出していた。今は冬のような寒さではないので漕いだ時に起こる風がとても気持ちの良いものであった。そして水面を搔き切る舟の音を楽しみながら霧の湖の上を走っていた。

 

別に理由も何もないが紅魔館からは遠いところへと向かっていた。ほんの僅かにあるとすれば近場ではないと青年が思ったからだとしかいう事はない。

 

そして青年は適当なところで舟を止めるとその場に寝転んで器用に膝裏で竿を抑えると適度に揺らしながら何か釣れるのを待つことにした。空は段々と高い雲へと変わり夏のような日になっていくということを示していた。そしてゆっくりと流れていくだけの空模様に青年は満足げにしながら目を閉じて景色と情景に溶け込むことにした。

 

舟と一体となった青年は夏の風とその雲模様を感じながら竿に確かな重みがあるのを待つ。面倒で我慢が必要になる時間だがその駆け引きを様々な形で楽しむ青年に飽きと言うものもなければ楽しみというものもない。いつも通りの日課だ。

 

別に持ち帰って食す事もなければ全く釣れなくて不機嫌そうに変えるようなこともない。ただ一つ言うなら釣果によってやる事を決めているだけだろうか。それは本人でも分かっていない。

 

目に入ってくる鋭い日差しに青年は起き上がると竿を膝裏で抑えていたことも忘れていたようで取りこぼしていたがすぐに湖に手を入れて拾い上げる。この様子だと釣れていないのだと思われる。仕方がないので帰ることにした青年だがその上を通り過ぎる物があったので少し考えている事にした。何だったら帰ってくる途中で挨拶をするのも悪くはない。

 

 

赤い服装をした黒髪の少女と黒い服装をしているこの時期には暑そうな服装をしている少女は赤く血塗られた館へと突き進んでいた。その下には霧の湖という文字通り霧に包まれた湖を通り抜けていく。

 

「住人に聞くのが手っ取り早いわよ。」

黒髪の巫女のような赤い服装をした人はそのように言った。何か気になることでもあるのだろうがそれが何かあるのかと言われると別に何もない。それが博麗の勘だと言うのなら誰も文句はつけるような事はないのだろう。それが例え隣に友人であろうとも。

 

「そうだな。久々にここに来るな。」

巫女の隣を箒にまたがって飛んでいた魔法使いがそう言った。此処にいるある住人に図書館がある事を伝えられてから極稀に現れていたその人だが最近ではめっきりいくような機会はなかった。門番をいちいち通り抜ける必要があると言うのが面倒なようだ。

 

「宴会の異変以来ね。久し振りに会う事になるわね。」

巫女がそう言うがそれぞれ違う経歴があるので微妙に話はすれ違う。そのはずだが糸が絡まる前に辿り着いたのでそのような心配は全くなかった。門の前には一人の門番がいる。

 

赤い髪をした腰まで届きそうなほどの長い髪で緑色の中華帽をかぶっている少女で緑色のチャイナドレスを着込んでいる。金色の刺繍がほど濾過されている。

 

「久しいな。」

魔法使いはそう言う。

 

「前にもお会いしましたね。最近は如何されましたか?」

優しく受け答えをする門ばんだが実際は問題はそこではないので巫女が引っ張るこむ形で中へと入り込んだ。入る理由は主人と話がしたいと言う事であった。それを門番は青年の知り合いだからと言う事で通した。恐るべし。

 

「門番は何しているのかしらね。」

赤く血塗られた館の中へと入り込むと紅いカーペットの敷かれた大きなエントランスの中心で立っている人が急に話しかけた。

 

その人は銀色の髪で両方の耳の前に三つ編みをしているメイド長。青色を基調とした白い腰についているエプロンがそれを伝えていた。入ってきた二人は急に現れた事に警戒していた。

 

「何だぜ。聞きたい事があるから主人に早く会わせて欲しいぜ。」

魔法使いがそのように叫ぶ。思い切り警戒している二人だがメイドは安堵したような表情を見せていた。何故かは二人は知らない。

 

「どのような要件なのか、それによっては追い返します。」

メイドは区切りよく答える。主人が吸血鬼故に偶に来るハンターの警戒の為なのだが厳重にし過ぎているのかもしれない。それだけ大事にされていると言う事なのだろうがそうする必要はあまりないと思われる。

 

「何だったらアンタで良いわ。霧の湖で人が襲われたらしいわ。それで何か知らないか聞きにきたのよ。何か知っている事はない。」

巫女は上から目線で威圧的な言い方をしている。元々そのような言い方しかしないがそれを知らないメイドは少々むすっとし始めた。だがそれは表には出さずに完璧なメイドとして振舞っていた。それにある人のせいで良くこうなっている。

 

「いえ、何もないわ。」

メイドはきっぱりとそう言った。無い物はないので仕方がないがその言い方も少々問題があると思われる。

 

「そう。なら、主人の下まで通しなさい。これは博麗の巫女として言うわ。」

 

「でしたら案内します。」

 

「意外と素直じゃない。」

 

「ある人のせいで鍛えられているのでしょうね。」

 

「なんとなく察したわ。」

 

「怒っても仕方がないのよ、あの人。」

メイドが不満を述べているが適当な会話のつなぎでしかない。単純に時間を止めれば一瞬で辿り着く。それほどにメイドの能力というのは恐ろしいものである。

 

「此方になります。」

メイドは四回扉を叩くといつも通り一言述べてから許可を得てから中に入る。

 

「いらっしゃい。待っていたわよ。」

中には青色の短めな髪をした紅いナイトキャップを被っている少女は紅茶を飲みながら待っていた。まるで運命によって手繰り寄せられて以下のように振る舞うがある人だけには何も効かない。

 

「その言い方が癪に触るわね。」

巫女はそのように述べながらも予め用意されていた椅子に座る。高級そうな座り心地の良い椅子で背もたれにお洒落な湾曲を入れたデザインをしていた。

 

「早速本題に入るわ。」

 

「何か心当たりがあるのか、という事でしょう。何もないわよ。」

その人は本題に入る前に話を断ち切った。無駄な会話はしないという気である。それなら良いのかと巫女は立ち上がる。理解できていない魔法使いは少し置いてけぼりを食らっていた。

 

「咲夜、ついでだから調査してきなさい。近辺の安全が守られないようでは主人として見下されるわ。」

いうまでもないがもう見下されている、ある人には。そんな事は知らない客人二人はその言葉に乗せられるように咲夜と呼ばれたメイドの後ろについていく事にした。どこまでも続くような廊下だが湾曲した時間の隙間を縫っていたように一瞬でエントランスへと出てきた。何が何だかわからないだろうが幻想郷では驚くことではない、と思う。

 

「アンタも来るなら手伝いなさい。主人の命令は絶対なんでしょう。」

巫女はがめつく足元を見ていた。的確に言葉を選んで徐々に追い詰めていく巫女だがこれでも抗えない。

 

「そうよ。それに一応心当たりがないということでもないわ。あまりにも不可解なだけよ。」

 

「何よ。」

巫女は聞く。少しだけ誑かしたかのような思っているのかムスッ、としている。

 

「青年が前に人魚を連れてきたのよ。其れだけなんだけど。何か参考になるかしら。」

 

「何をしたのよ。」

 

「釣ってきた魚を二人で食べていただけよ。それで知らぬ間に居なくなっているから何処に居るのか聞いたら湖の何処かにいると返されたわ。」

 

「ありがとう。全くもって参考にならないわね。」

巫女は少しだけ笑っているようだった。しょうもない事なので言うこともなくなったのだろうと思われる。

 

「でしょう。だから言わなかったわ。さて早く調査に向かいましょう。」

 

「分かっているわよ。」

三人は館のある地面から飛び立つと固まって探す事にしていた。本来は遅いのだが館の住人が近くにいた方が安心だと考えたのだろうと思う。そうでもないと微妙な感覚になってしまう。

 

「まず人魚を探そうぜ。青年は見つけられる気がしないからな。」

 

「そうでもないわ。この時間はまだ釣りをしているはずよ。」

 

「そうなの。意外ね。」

 

「何も釣ってくる事はありませんが魚料理を頼むときは一匹だけ釣ってきます。話をした時は二匹でした。」

 

「でしょうね。」

 

「楽しそうでしたよ。その二人。」

 

「そう。今は関係ないから口を慎みなさい。」

 

「要はこの湖から見つけたらそれで良いだろうぜ。青年に話を聞けば一発だぜ。」

 

「あまり離れないでちょうだい。面倒な事になりそうなのよ。」

 

「そんなに弱いと思うの。」

 

「憩いの場なんです。館で働くメイドたちは此処で遊んでいるので倒さないで欲しいんです。」

 

「分かったわ。なら迷惑をかけてくるやつしか倒されないわ。それで良いんでしょう。」

 

「ええ。お願いします。」

メイドが一礼していた。霧に包まれた視界の悪い湖では探すのも困難だろう。

 

 

「面倒な事になったな。」

青年は舟の上で誰かと話していた。誰なのかは分からないが人間ではないのはよく分かる。

 

「ごめんなさい。最近力が高まっているからその試したくなったの。」

船に乗っていた青年の対面にいる人は弱々しく言っていてかなり反省しているようだった。しゅんとしたその姿は何か脅されているように見えなくもない。

 

「俺が居るうちは言い訳も出来るがどうなる事が分かったものではない。」

青年は特に漕ぐこともせずにその場で鏡の上にある船の上で寝転んでいた。周りは霧に包まれているが上の方がそうでもないので意外と見えるものである。まるで誰も居ないかのようにしているが実際は乗っているのであべこべな感じになっていた。

 

「すいません。これからどうしたら良いのでしょう。」

 

「とにかく大人しくしていろ。」

青年はそう答えてから上半身を起こしていた。急な動きに腰を抜かしかけたので青年優しく一言だけ謝る。それで済んだらしくその人は大人しくなっていた。

 

「アンタ、誰と居るのよ。」

上空から話しかけられた。だが、青年は特に御土居ている感じは見せずに背を向けたまま話していた。

 

「人魚だ。」

青年はすんなりと答えていた。

 

「人魚、ね。メイドが言った通りのようね。それで何をしたのか分かっているの。」

 

「どうやら力がみなぎっていて試したくなったそうだ。」

 

「なら退治するべきよね。」

 

「いや、先にその根本を倒す方が先だろう。それが分からん能無しでもないだろう。」

青年はそう言った。

 

「分からないわね。それがアンタの言い分というわけ。」

巫女は厳しい口調で叱責するような話し方をしていた。青年は一切気にすることはないが面倒くさそうではある。

 

「俺が注意したからそれでここは引いてくれないか。」

青年はそれだけ答えていた。何をしたいのかはいざ知らずもう面倒臭いのだろう。

 

「それで済めば私たちは要らないのよ。」

 

「なら、こいつは差し出すことにしよう。」

青年が引っ張り出したのは舟に同乗をしていた青い縦巻きの髪をした半身が魚の姿をしている何層に重ねたような和装をしている人を巫女の前に出していた。そして試すようにしていた。

 

「それが今回の異変を起こしたのね。とても信じ難いわね。」

巫女はそう言うと近くを探そうとしていた。そして三人が何処かへ行くのを見ていた後だった。

 

「良かったな。命が拭き消させるところだった。」

 

「びっくりしました。どうしてくれるんですか。」

 

「拭くものがないのでどうにも出来ない。さて如何したものか。」

青年は少し考えているようなふりをしていた。実際は全くもって他事を考えているわけでもなく何も考えていなかった。それこそ情景に溶け込んでいる木のように感情のない色彩の一部だった。

 

「そうするか。」

青年は肩にかかる重みを楽しそうに言うだけで他に何もするようなことはなかった。

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