青年放浪記   作:mZu

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第247話

人里という場所は妖怪はおらず皆平和に過ごしているそんな場所だった。

 

基本的にはそうだが人間に味方している妖怪や紛れている妖怪もいない事はない。

 

綺麗な白い布を着用してその上から黒い羽織物をしている青年は一人でその場所へと来ていた。目的というのは最近妖怪に襲われる人々が多くなっているという事を咲夜から聞いた為であり何か自分の欲のままにここまで来ているということではない。

 

一見いつも通りに見えるがあまりそのような点はないと思われる。青年は一応警戒はしておきながら適当に歩いていくことにした。買いたいものも何もない青年はそれを探すように足を進めていた。

 

或いはある人を探していて道に迷ってしまったが別に大きく外れているわけではないので別に気にするようなことではないらしい。それだけなので本当の意味で時間を無駄にしている青年だが本人が気にするような事はない。

 

辺りからは人の声がしていて車の動く音がしている。そして賑わいのある店で大きな声で客引きをする店の人がいたり、それに釣られるように近づいていって買おうか迷っている人もいる。

 

多くの人が住むこの幻想郷ではそれぞれに買い求めるものは違い高めのものから誰でも身に付けることができるような物まで置かれている。勿論精巧なものもあれば劣悪なものもある。人間と変わらない。

 

「兄さん、ちょっと金貸せよ。」

偶にいる。今回は異変らしきものが起きていて人里が万全に機能していないのでこのような劣悪な人がハエのように近づいてくることもある。青年はもう少し素朴なものにしておくべきだと思ってしまった。

 

「貸す金は持ち合わせていない。」

青年はそのように答えて振り向いていた。相手は三人引き連れていている人が一人いて徒党でも組んでいると思われる。青年は柄を触りながら今にも抜きそうな構えをしていた。

 

「なら、剥いでやるからゆっくりとしていな。」

俗に言う盗賊という野蛮な種族ではある。青年のような見た目は弱そうな人から少しずつ奪い取っていくのだが青年はそれを止めるようなことはしなかった。逆にそうしないといけない程追い込まれている人がいるという事実があるので仕方がないと思う。四人は教養がないらしくそこら辺に転がっていた人達を集めていたのだと思われる。恐ろしく腕が立つということでもないようで青年が無理に恐れるようなことはない。

 

「なら四人で来ると良い。一撃で終わらせる。」

青年はそう宣言した。

 

「やれるものならやってみな。」

四人のうちその頭領らしき人が青年の前に現れる。その後を三人が続いている。あれだろう、一人に気を取られている間に三人で襲おうという魂胆だろうが青年に効くことはない。

 

「今の剣、見なければ去れ。」

青年は素早く剣を鞘から抜いて相手の右拳を止めながら首筋には刃紋を当てる。もう少し動いていれば斬られていたのだろう。青年はトントンと二回叩いてから自分の剣を納めた。そして抑えていた拳を前へと押し出すと止められていた人は簡単に倒れていた。青年は踵を返して人里の人の中に紛れてしまった。

 

「何なんだ、あいつ。おっかねぇ。」

誰も頭領を移動させるような人はいなかった。

 

 

青年がある人の事が気になった。別に理由もないのだが何となくという所だ。強いて言うなら何か不自然な気がするのだ。

 

青年は首から先に動かして踵を返す。人里の中を青年は縫う針のように通り抜けていた。そしてその人には分からないように近づいていくことはないが遠ざかることもない絶妙な距離を歩いていた。

 

興味があるだけで動いていた青年は何の計画もなく歩いていくことにしたがその後話しかけたところで何かしようとは考えているようではなかった。関心があるから話を聞く、それだけだった。

 

その人は青いリボンを後頭部につけた赤色の短い髪をしていて首元を隠すようなマントをしている。裏側は風に揺れているところから見る限りでは青色で黒色の上半身の服装に織り込みのある赤色のスカートを着用していた。名は赤蛮奇。

 

誰にも話そうとはしないところを見ると人見知りなのかもしれない。それとも徒党は組まない主義なのか。青年はそんなことを考えながらその人の後ろをついて歩いていた。

 

家屋の間の狭い道へと入ったので青年は後ろほどついていくことにした。大体分かっているわけなのでもう何も言うようなこともない。

 

「それで、君は何の用だ?」

 

「いや、気になる人物を見かけた。それだけだ。」

ジトッ、とした身の入っていない目をしていて不審そうに眺めているその人は口元までを覆い隠しているようで何を話しているのかとのような口の動かし方をしているのかは一切分からない状態だった。

 

「それだけで来るなんてとんだ阿保なのね。ま、良いわ。後悔して声を上げないことね。」

その人は多分笑ったのだと思う。それがどのような理由になるのかはさておき青年は何をするのか興味があるようだった。

 

「すこしはなしをしてくれたらそで良かったのだがそれも良いだろう。やって欲しい。」

 

「良いわ。やってあげるわよ。」

 

「では準備が整うまで俺はここで居ることにしよう。」

青年は懐から箱を取り出すと適当に一本だけ取り出すと唇に持っていき咥えていた。今にも落としそうなのだがこれで落とした事はあまりない。それに普通の道を通ろうとはしない青年がどう吸うのかは分かったものではない。

 

「余裕そうね。じきに恐ろしさに気付くはずよ。」

 

「そうか。」

青年は恐ろしく言っていたその人の言葉をまるで興味がないかのように相槌を打つだけだった。飽きていたのかそれとも何も始まらないのでブーイングを込めたものなのか。何が起こるのかは一切分かっていない。

 

シュッ、と音を立てて青年の方に向かってくる頭部。何故か目の前に現れたが何が起こったのかは一切分かっていない。だが青年は落ち着いてそれに対処すると飛んできていた頭の表情が大きく変わっていた。それこそ何が起こったのかは一切分からないようで寸前で止められたそれに目が見開いていた。

 

「最初から首が無いことは分かっていた。少し不自然だったからこう話を聞いてみることにした。」

 

「なら早く言いなさいよ。」

 

「言うと誇りを傷つけることになるだろうから辞めておいた。特に人を襲わないと言うのなら別に興味はない。」

青年は柳の生えた空き地のような場所から出て行くことにした。あっさりとしたその態度に赤蛮奇は如何にもできそうになかった。】

 

満月の夜。それはある妖怪にとってはこれ以上にない程の好機となる。

 

その妖怪は竹林にひっそりと住んでいる妖怪で落ち着いていて少し沈んでいるような性格をしている人だった。だからと言っても誰とも交友関係がないと言うわけでもないようで草の根ネットワークというものでつながっているようだ。

 

 

いつも通り青年は迷いの竹林の中へと入っていた。薄暗いというわけでもなく満月の光によって優しく照らされているだけだった。青年にはもう少し暗くても良かったところもあるが何があるのかは分からない以上はこのぐらいでも良かった。

 

服装としては動きやすいようにしているのか白い布を羽織っていて黒い衣服を合わせているだけのどこかの僧侶を思い出す服装をしていた。そして青年が扱いやすいように改造しているのだがあまり外見では分かりにくい。

 

「本当にここに知り合いなんているのでしょうか。」

そんな青年の後ろを歩いている白いワンピースを着用して太ももにいつも通りナイフを仕込んでいる女性は頭に被っていた麦わら帽子をしっくりとくる位置に戻しながら話していた。紅魔館のメイドで完璧で瀟洒なメイドらしいが本当にそう思うと青年は思っていた。名は咲夜。

 

「居る。前に喧嘩していた時にレミリアと此処には来た事があるがそれとはまた別の人だ。」

青年は淡々と答えていた。何も気にしていないようだが前に永遠に夜の続く異変が起こる前にちょっとしたいざこざがありレミリアは仕方がなく青年と行く事にした異変がある。それは真実を知る沈黙者と嘘を吐くもので別れた確執のある異変だが今はその話は如何でも良い。

 

「その件は迷惑をかけたわね。今はそのような事はないから大丈夫よ。それでまた別の人のようだけど何があったのよ。」

咲夜はそう聞いていた。そもそも青年の行動を全て把握しているわけではないので何とも言えないが前にかんざしを土産に渡された時には驚いたものだ。話を聞くとどうやら貰ったものであるらしく渡したいとの事。それと寿司と呼ばれている食べ物を持ち帰っていた。一切れずつとはいえ、全員に平等に渡させるほどの量は持ち帰っていた。話を聞くと三途の川まで行っていたとさらっ、と答えられる。慣れているとは言うものの理解できない部分が増えた場面であったようだ。

 

「前に道に迷った時にその人に会った。それで今日満月だから見に行こうという話だが。貴方が付いて来ているのでどうなるのかはわからん。」

青年は特に何か分かっているようなそうでもないような感じがする。ふらふらと歩いていて特に考えているようなこともない青年なのでそれぐらいの反応が正しいのだと思われる。咲夜もそこは割り切っているのでまだ慌てたりするような事はない。

 

「それはどういう意味よ。」

 

「知らない人が連れて来ていて恨めしくしない人は居ないだろうという事だ。」

青年はそう答えた。何かして来たのかもしれないけどそれも知らない咲夜にはどういう意味であるのかは分かっていなかった。永久に謎に包まれる事になるのだろう。

 

「そういう事ね。それでも貴方を知りたいのよ。それだから仕方がなかったのよ。」

 

「そうか。」

青年はそれだけ言って竹林の中を歩いていた。地面の起伏に合わせて垂直に伸びる竹は平衡感覚も土地勘も失わせるような場所だったのだが青年には確かな自信があるようでそのままいつも通りの歩調で歩いていた。少しだけ咲夜をリードするような歩き方で背は伸びていて綺麗な歩き方ではある。どこで学んだのかは知らないが似ているところがあると咲夜は思った。青年はきっと真似ていたのだろう。

 

「迷いの竹林なんて呼ばれているそうだけど本当にそうなのかしら。」

咲夜は素朴な疑問を聞いていた。別に硬直した表情で聞くようなことでもないのだが何かあるように思えるのがどうにも気になるらしい。

 

「周りを見ていて方角が分かるならきっと迷う事はないのだろう。」

青年はそれだけを言って少しだけ笑っていた。冗談半分程度で話しているだけなので手遊び程度の遊びだと思われる。

 

「そうね。そういう事にしておくわ。」

咲夜が強引に自分の中で落とし込んだ事でこの話は終わっていた。

 

 

竹林の中で一人で立って満月を見ている人がいた。

 

その人は赤い髪をしていて頭部には何やら耳のようなものができていた。妖気と言うのかその様なものが漂っていて赤色の空気になっているので髪などがその様に見えてしまうだけかもしれない。スカートの下は黒色で赤色と白色と段々と変わるのだが今日はその区別がつけにくい。

 

「綺麗な月だな。」

青年は上を見上げながらその人に話しかけていた。そしてその人は振り向くと妖怪らしい恐ろしい顔をしていたのだがその表情はすぐに変わってしまった。

 

「この人は一体何でしょうか。」

 

「影狼だ。妖怪だが何かは知らない。」

 

「とても危険な感じがします。」

咲夜は素早くナイフを取り出していた。何かと咲夜に握らせてくれるそのナイフを構えて影狼の方を向いている咲夜。青年には何が起こっているのかは分からずに嫌な予感がするだけだった。

 

「この私と満月の夜に闘おうなんて。」

 

「行かせてもらいます。」

咲夜は宣言したがそれを止めたのは青年の左腕だった。

 

「闘いに来たわけではない。少し顔を見に来ただけだ。メイドならその辺りは弁えてくれ。気持ちは分からんでもないがな。」

青年は咲夜が止まったのを確認してから左腕を下ろしていた。そして少し疲れたような表情を見せているが何か理由があると言うわけでもない。

 

「それで私はどうしたら良いのでしょう。」

影狼が気を縮こませていた。急に終わってしまった事を止める事はできなくなっているらしい。

 

「咲夜とやってみるか。俺は何も手は出せないから。」

青年は適当な提案をしてみる。公平にならないのかもう見えているので別に気にするような事はない。

 

「それで良いのでしょうか。」

 

「咲夜良いよな。」

 

「良いですよ。」

簡単に答えていたがそれを言った時にはもう勝負は付いていた。それこそ咲夜の能力を使用していた。

 

「流石に瞬殺はない。」

 

「怖いわー。人間怖いわー。」

 

「そうか。喧嘩を売る相手を間違えない事だ。それが一番この先で生きていける手段となる。」

何もしていない青年だが何故か自信に満ち溢れていたが仕方がない事でもある。

 

「そうだね。とても強かったんだね。」

 

「そう落ち込む事もないだろう。まだ何とかなるのかもしれない。」

 

「そう見えるなら良かったよね。何も分からなかったよ。」

影狼はその様な語っていた。

 

「ナイフは一本だけだったから対処も簡単だったはずだ。」

青年は特に何の気分にもならずに答えていた。いっそのこと何か別の事を考えているようで違うような気もするのだがそれで良いのだろう。影狼は反応に困っているようでそれを生憎そうに見つめている咲夜。

 

「この人には負けているからこうなるのは仕方がないわ。もう行くの。」

 

「そうだ。影狼、また会おう。何だったら霧の湖に来ても良いだろう。」

青年はそこから飛び立とうと剣を抜いてから体を浮かせるとそこから低速に飛び去っていた。それに咲夜も続く。どこに向かうかは彼にしか分からない。

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