青年放浪記   作:mZu

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第248話

青年はいつも通り寝起きのままで舟に乗って釣りでもしようとしていた。それこそ人里では今でも妖怪に襲われたり頑なに道具を握り続けている人が居たりするそうだが青年はそんなのことは構う事なく出かけていた。目の前には霧に包まれた全体の分からない湖があり上の方がだいぶ晴れているので偶に朝日を眺めては時間を過ごしている。

 

だが、今回はどうやら違うらしい。それを知覚した青年は服装を変えてその場へと向かっていた。別に気になるから向かうだけで他の理由は何もない。

 

「美鈴、何か知っていることはないか。」

青年は帰り際にもう門の前に立っている門番に話を聞くことにした。その人は門の前で何かの流派のような動きをしている。青年も偶に見ているが門番は多彩な戦い方を持っていて学ぶ事が未だに多いのはもう仕方がないことなのかもしれない。

 

「いえ、私も何か雲でも出来たのかと思っていましたが何やら違うような気がします。」

美鈴はそのように答えた。確かに昨日は無かったので不思議であることには間違いないが美鈴が行けないのには門の前を守る義務があるためにこのような遠くからしか見ることが出来ない。雲と見間違えても仕方がないのかもしれない。

 

「そうか。とりあえず昨日は無かった。そして長い時間動いていないということなのか。」

 

「恐らく。近くで見ているわけでありませんので詳しくは伝えられませんがきっとそうだと思います。」

 

「済まない。ありがとう。」

青年はそう伝えて門を通り抜けると館の中へと向かっていた。中庭にある植物などには全く目が行かず闇雲に向かって行く姿を妖精くらいしか見ていなかったが何か不穏な空気があるのは間違いなかった。

 

「どこに行くつもりよ。」

 

「咲夜、俺は気になるものを見るだけだ。何も心配しなくて良い。」

青年は着替え終えてからもう一度出てこようとするところで紅魔館のメイド長に止められた。別に理由など今更ないがこの時間に出掛けていることがまず気になる点なのだろう。

 

「そう言って何かと問題を起こしているように感じるのは私だけ?お嬢様も心配なさるわ。」

 

「自分のことを考えてみたらどうだ。足元がフラフラしている。」

青年はそれを答えとしてそのように言った。別に意味などないのだろう。咲夜は答えにもならない言い方に腹を立てたが何故か当たっている節があるのがどうしても否めなかった。心に引っかかるその針がどうにも取れそうに無かった咲夜は取るために必死になっていた。

 

「それでは昼前には戻ってくるだろう。」

青年はもうそこで話を終わらせて外へと出かけていった。それを追う事もできない咲夜は皮肉を込めて自分を責めていた。青年が言いたいのはそこである。

 

 

空には青年が見た時と変わらずに存在している渦のようなものを向かって飛び立っていた。何か気になるものと言えばそれは多くあるがまずやっとこの異変を起こした犯人が現れたということで間違い無いと思う。

 

「何が目的か聞いてみるのもありかもしれない。」

空の上で誰も聞かないような言っても仕方がない独り言を呟いていた。誰も居なくて自由な世界でそのようにしていても何も変わらないのだろうがきっと青年の心を落ち着かせる事には必要な事なのだろう。

 

「これはきっと異変を起こした主が起こしているものなのか。」

青年は目の前まで来てそのようによく観察しながら言っていた。右手を頬に当てて何か思いに耽っている青年に声をかけたのはまた意外な人物だった。

 

「私に相手をしてくれない人見つけた。」

 

「どうした、急に。」

 

「何か冷たいわね。この人。ちゃんと生きているのかしら。」

 

「心臓は動いている。きっと生きている。」

 

「そう、そんなことはまぁ良いのよ。」

 

「待ってよ。姉さん。私がそいつを最初に見つけたのよ。横取りなんて許さないわよ。」

 

「何よ。貴方なんてこの付喪神使いに勝てるわけないじゃない。」

 

「そんなのやってみないと分からないじゃない。」

 

「二人とも済まないが話が見えてこない。なんの話をしているのか具体的に聞かせてくれ。」

青年は変に興味があるのかそのように答えていた。付喪神とは基本的に長い年月を有するものなのでそう易々と取り憑いてくれるようなものではないと思っていたが何故か二人がそのように答えるので本当にそうなのかと思ってしまった。

 

「何も言わなくても付喪神よ。その妖剣からは私たちと同じものなのよ。」

 

「そうか。」

 

「あっさりと答えるわね。力が欲しくないの。」

 

「この剣達が望むなら持ち主として応えてやる必要はあると思う。」

 

「よく分からないわ。もう姉さんに任せたわ。」

 

「何なら二人でやってみるのも面白いかもしれない。」

青年はもっと二人の話を聞きたいらしく妹と思われるその人まで止めていた。

 

その人は茶色の髪色で少しふっくらとした髪型をしている。姉に比べると頭に沿うように少し丸みのある感じはする。そして紫色のカチューシャをしていて黒い線がジグザグとした模様として入っていた。服装は薄紫色のラインの入った白い上着で此処にはラインよりも濃い色の紫でカチューシャと同じ模様が入っていた。

 

手には何か付けているが青年には何か分からないのであまり触れるようなことはなさそうだ。

 

黒いスカートで紫色のリボンや模様が入っていて七本の弦が周りには付いている。要は楽器の付喪神のようだがその下までは青年には分からなかった。弦楽器であること以外は特に分からなかった。名は八橋。

 

「いや、此処は姉さんに任せるよ。」

その人は特になも名乗ることなく何処かへと消えてしまったので無理に追いかける必要のない青年は目を追うだけで体は動かすことはなくその場に留まっていた。

 

「そうか。そういうなら仕方がない。して、姉さん。この異変は誰が起こしたのか知っているのか。」

青年は振り向いた。その先には先ほどの人から姉さんと呼ばれている人だった。

 

薄い青紫色をした髪色で二つ結びと短めの髪型を両立させたような髪型をしていた。そして右頭部には白い花の髪飾りがあり前にも見たことがあるようなものであるが確実に見間違えなので青年は何も言わなかった。

 

薄い黄褐色をした服の下に白の長袖のシャツを着用しているようでその下の袖の部分からは生地の存在がわからないほどに透けていた。青年は遠くから見ているので余計にそう思う。

 

そしてなによりも丸みのある弦楽器だが不自然にもネックがないものでその上を弦が通り抜けていた。名は弁々。先ほどの二人と合わせて九十九姉妹である。

 

青年は兎に角際ほどのことはスパッ、と切り捨てていた。

 

「それは教えない。せめて私に勝てたら良いわよ。上下逆さまな世界で誰が最強なのか決めようじゃないか。」

 

「そうか。それは面白そうな行事だ。」

青年は素早く剣を抜いて構えていた。薄く開いた目で状況を確認しながら頭の中では何かを念じていた。

 

「そう言えるのも今のうちさ。」

その人は曲がるレーザーのような物を放っていた。曲線のある五本の線で妙に間が広かったがその上を音符が通り抜けていた。鞭のようなしなりのあるレーザーの上を不規則に動いているように見える音符達が青年の方へと向かってくる。

 

だが青年もそれが対処できないということでもなかった。

 

青年の剣は確実に音符を捉えていた。そして確実に当てた音符は弾けてしまった。それよりも斬り伏せてしまったように見えるが何が起こったのかは何も理解できそうになかった弁々は仕方がなく更に続けたが何も状況は変わらなかった。

 

それどころか聞く実に近づいてくる青年に恐れをなしていた。普通なら弾幕ごっこでそのようなことにはならないのだが、青年が普通ではないのでもう仕方がない事なのである。

 

もう何ともならないと考えた弁々は弾幕の種類を変えてきた。

 

今度は怨霊のようなものを出して青年に無差別に向かわせていた。空中戦に慣れていない青年だとしても今日は調子が良く制御がしやすかったのでサラサラと避けていく。そして何が起こったのかは全く分からないが突然の風によって弾幕が大きく崩れた。

 

「当たらないのね。どうしたら良いの。」

 

「敵に聞くな。そのような事は妹にも聞いてみたらどうだ。」

青年はすぐに剣を納めていた。敵意はない事を口で言わずとも伝えているようだがそれが通じたのかは全くと言って分かっていない。

 

「して、この異変は何処から発生している。」

 

「この嵐の中よ。その中から私達に力を与えてくれたものがあるはずよ。妹は先に向かっていったわ。あなたも早く向かったほうがいいわよ。」

 

「俺はそういう事をして力を欲しくない。己の力を磨いてこそ技が出来上がる。それを使いこなすことによって力がつくだろう。」

 

「私達は元々そのような事もできなかった。あの人達は私達にとって救世主よ。」

 

「物は言いようのようだ。して上下逆さまの世界の意味を知りたい。」

 

「それは簡単なものよ。貴方が持っている剣が一番優位に立てる世界なのよ。だから私達はここまで強くなれたけど貴方には通用はしなかった。負けを認めるしかないわ。」

 

「それは勝手に決めたら良い。それで人里では道具を持ってそこから動かなくなる人がいたのか。それと何か力を感じるようになったのはそのおかげということになるのか。」

 

「もう飼われる時代は終わったのよ。」

 

「その時代は俺が終わらせる。道具あってこその人間だ。其処に上下もない。故に返したところで何も変わる事はないだろう。して来るか。」

 

「少し休憩してから向かう事にするわ。」

弁々は不適腐れたように答えるだけで青年が通り過ぎても何もしようとはしなかった。そして追う意味もないと其処から動くような事もなくその場で言った通りに休憩しているだけだった。

 

道具をちゃんと愛しているということだけはよく分かった。

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