青年放浪記   作:mZu

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第254話

口元と左腕の袖には赤い液体が付いていてどちらも黒ずみ始めていた。こうなると洗濯しても落ちにくくなる。青い色をした服装で肩や胸元ズボンにはポケットがありそれぞれに何かが入っていた。青い帽子から黒髪からたらりと垂れていた。

 

「遅いじゃない。」

 

「そうか。」

短絡的に答えたその人は怪物の小槌から伸びている針のようになっているところを抑えていた。霊夢を真っ二つにさせようとしていたそれは青年によって止められていてそれ以上は動く事はなかった。その隙に霊夢は逃げ去る。

 

青年はその間に小槌を持ち上げるとあらぬ方向へと飛ばしていた。それはもう追うことも許されない程になっていて怪物の体勢を大きく崩させると青年の左脚はその怪物の顔面に向かっていた。大きく振り切ったその脚から放たれた強力な一撃に怪物は吹き飛ばされて壁に激突していた。

 

ゴン、と鈍い音をして壁の下で蹲っているそれを見ながら青年は後ろにいる霊夢に話しかける。

 

「魔理沙はこの城の外に居る。軽く探してくれ。落ちなければこの階に居るはずだ。」

青年はそのように言った。何か意味でもあるのかのようだったかまで別にそのような事でもない。霊夢はそれでも気になるらしい。

 

「何で移動させたのよ。」

 

「急に弾幕が来たから咄嗟に抱えて壁の裏に逃げていた。」

 

「感謝するわ。でも良いの。」

 

「何がだ。」

 

「もう後はないわ。」

 

「いや、そうでもないさ。」

 

「何があるのかは知らないけど後は任せるわ。」

 

「怪我は後で治せ。少なくとも俺は出来ない。」

 

「分かっているわよ。永琳のところなんでしょう。」

 

「分かっていたのか。早く行け。」

 

「場所は知らないわ。」

 

「なら隠れていろ。俺は決着をつける。」

青年は力強く答える。だが、徐々に早くなるので何かに焦っているようだった。霊夢に気になって一言話しかけようとしていた。だが無理に急かしている青年を見てきっと何か考えがあるのだと思っていた。霊夢は青年の目を見てからそそくさと逃げるように開いている戸の裏へと逃げていた。青年が逃げていたと思われるからだろう。

 

霊夢はここから居なくなっていた。魔理沙という大事な友人を手に抱えながら怖さに怯えているのだろう。青年は居なくなるのを確認してから壁に打ち付けられた怪物の起き上がっているのを見ていた。揺らめくその目の光がその世の者のとは思えないのだがここでやるしかなかった。

 

青年は小さく前に出ると其処から大きな足取りで素早く近づいていた。怪物はそれを見て急いで構えていた。だが、それが効くようなほど青年が慢心しているわけではないのでその隙を突いて起き上がっている時にできた乱れたマントの隙間から剣を突き刺す。青年は力強く刺しこんでいたがその手の感覚はまだまだだった。

 

今度は石のように硬かった。青年は心配になって刀身を見たかったがそれはまた後にすれば良い。怪物は急所を当てられてその場に床に大量に赤い液体を落としてその場に倒れこんだ。

 

青年はまだ感覚はなかったが勝ったのだと思っていた。だが、一切の油断はしようとは思っていなかった。まだ立ち上がるのだろうと思っていた。青年は刀身を見ながらその先にいる床に伏せている怪物の様子も見ていた。どうやら切っ先が欠けてしまったらしく面倒な事になっていた。青年は仕方がないので念じながら剣が治るように祈っていた。

 

するとそれに答えるように形成し始めていた。深い集中だから出来た荒技だが青年に手段を選ぶような事はできなかった。金の要素を集めて何とか作り上げたその剣を持っていた青年は目の前の変わり具合はどうしても信じられなかった。

 

黒い殻にこもっているようで何も出来そうになかったが取り敢えず一撃だけ与えてみる事にした。

 

金属物のような硬さのあるようで青年の振り下げた剣は弾かれてしまった。そして傷一つ付いていなかった。仕方がないので青年は姫の方へと向かっていた。

 

霊夢の夢想封印の中でも生き延びていた姫はどうしようもない感じでその場で体を縮こませていた。

 

「姫、答えは決めたか。」

青年は優しい声で聞いていた。今までこの城の中で暴れまくっていた者とは思えなかった。そして邪魔者ではなくて今は助けようとしているので反応に困っていた姫だがここでどちらに着くかなど聞くまでもなかった。

 

「辞めるよ。今回は辞めるよ。だから命は取らないでください。」

 

「取らん。そんな事をしてたまるか。貴方はこれから弱者に対する救援活動をすると良い。それで少しでも幻想郷が変わるのなら俺はそれで良い。」

青年は即刻答えていた。その後に何かして欲しそうにしていて少し考えていた。そして何かを思いつくと早口にそう言った。姫はこの人が何を言いたかったかのかは全く理解出来なかった。そんな事を出来るとは思えなかったからだ。この計画はもう失敗している。それを見ていてもまだやれと言うのか、姫はそう思った。

 

「そんな事は無理だよ。」

 

「俺が何とかしてやる。弱者同士頑張ろう。」

 

「何言っているんだ。」

 

「元々は俺はここに来るようなことも許されないほどの力の弱さだった。のうのうと生きていればきっと小槌の力を求めていた。弱い事を悟った俺は色んな人の教えを聞いて実践する事でここまで来ている。姫は弱い。だから何をした。」

 

「何もしていない。正邪に人間達に虐げられて鬼の世界に逃げ込んだと言う話を聞いた時に私はこの異変を起こす事を決めた。それを支援してくれたのは言うまでもなく正邪。でも今は全く違う。正邪の方が間違いだったよ。」

確かに左腕に持っている金色の小槌は姫にしか扱う事はできないのだ思う。正邪は其処に目をつけて嘘を吹き込んだのだろうと青年は思っていた。

 

「人を殺すのは弱者のする事だ。気に入らないから斬り殺す。破壊する。それをして何になる。恨みに仕返しをしてその仕返しをして終わらない輪廻を繰り返したいと思うのか。」

 

「思わないよ。それは同じ思いでしょ。」

 

「だから俺は何もしない。その代わり幻想郷に良い影響を与える人物になってくれ。」

青年はそれを言い終わると素早く後ろを振り返っていた。殻の破けるような音がしていたので不意に青年は後ろを向いていた。ピリピリと音を出しているそれは青年には何か違う事を示すのにはちょうど良かった。

 

「姫、逃げろ。これからがある貴方はここで死ぬわけにはいかない。」

 

「うん、分かった。」

姫は逃げようとしていたがそれを掴んだのは青年の左腕だった。そして宙に浮かさせると一言だけ伝えられてから何も抵抗出来ないような感じで投げ出されていた。姫は床を滑っていたがそこそこの距離を投げられたらしい。姫は必死になって走っていた。青年はそれを見てから気を落とす。

 

自分の内部にまで落とし込んだ青年の意識はまた別の所を向いていた。奥底にあるようなものを引き出すようにしている青年の意識は急に浮上を始めた。何か解決したのだろう。それぐらいの気持ちで急に意識を取り戻していた。

 

目は釣り上がり口を紐で結んでいるような感じで開きそうにはなかった。そして右手には小刀を持っていて左手には二本の針が指に挟まれている。鉤爪のようになっている左手は下を向いていて右手も同じように下を向いていた。まるで意識のない人形のようなその雰囲気だった。

 

殻を破った怪物は元の原型をなくしていた。小槌は黒くなっていて元々何色だったのかわからなくなっていた。そして黄色っぽかった小槌の先から伸びていたものも黒くなっていて全体的に黒くなっていた怪物は悪魔のような雰囲気のある感じで闇に覆われていた。

 

偽物の小槌が正邪の意識を完全に乗っ取ったのだと思われる。そうでもしないとこうはならない。恐るべき力を秘めているそれはどうする事も出来ないようになっていた。

 

青年は表情を変える事もなく剣を構えていた。右脚を前に出して軽く動かしていた。いつでも来い、と言っているようだが行ってはいけないような雰囲気も醸し出していた。どうすればいいのか分からない。

 

一方の怪物と化した正邪のようなものは青年の方へと向いていた。小槌を振るおうとしていたが青年の右腕に阻まれた。

 

青年の行動の方が早かったのだ。怪物に一撃加えた青年だが少しの時間稼ぎでしかないのでその場からすぐに離れていた。

 

小槌を振るおうとして目標のいない事に気付いたがその頃には遅かった。

 

青年の左手に持っていた針が怪物の背後を突き刺していた。マントがあって弾かれると思ったがそれを防いでいたのは青年の持っていたもう一本の針だった。そして弾かれるその力を青年は押し返していた。

 

肩甲骨辺りを突き刺されたようだがそこまで当たりは良くはなかった。

 

内側から弾かれるようになった青年の針は手を離した瞬間に何処かへと飛んでしまった。青年の左頬を擦り血を垂らした。半身の状態だったので避けれたがもし普通に立っていたら喉を貫通していたのだろう。それを物語るように近くの壁に刺さっている針は揺れる事なく突き刺さっていた。もう少しで貫通していたのだろう。

 

青年はもう一本ズポンのポケットから針を取り出すとそれぞれの指の間に挟んで三本持つことにした。そして青年は右腕を振って小刀を怪物の方へと向けていた。

 

小槌を振りそれを受け止めるが拮抗しているらしくお互いが押し込んだ結果、鍔迫り合い紛いの状態となっていた。それぞれの顔が見合うように小刀も相手の力を見定めているようだった。渾身の力で話振った両者の力はお互いに影響していた。青年は床を転がるほど転がり怪物もそれに等しいほどだった。

 

青年はそこから走り出して怪物がそれに合わせるように向かってきていた。

 

青年が小刀を振って小槌を振っている怪物が少し遅れていた。お互いに弾かれていたが再び刃を合わせる。

 

青年の方が先に動いて怪物に対して小刀を振り動かしていた。刀身と相手の小槌から伸びている部分が当たり大きな音を出していた。怪物が吹き飛ばされていて青年は更に追撃をするようにもう一太刀浴びせようとしていた。回転を加えた一撃。

 

怪物はしゃがんで飛び蹴りのようにすると青年はまともに受けてしまった。腹を蹴られて吹き飛ばされる青年は受け身も取るがそれでも間に合わないほどの威力で暫くは床の上を滑っていた。

 

怪物は浮いている右脚ではなくて左脚で床を蹴り出すと右脚で更に床を蹴り上げて青年の方へと近づいていた。

 

右腕に持っていた小槌を振り下ろすが床を滑っていた青年も体勢は整っている状態だった。無難に避けてから足元を掬い取って体を浮かせた。怪物は自分の勢いで転がると青年はその場でスピンするように止まり素早く立ち上がる。怪物としても其処までダメージは受けていないようだった。だが外へと飛び出していた。

 

その外は随分と日が昇っているよう玉がまだ昼間というわけではなさそうだった。

 

青年も外へと出る。そして怪物の前に立ちはだかる。これより先には行かせる事が出来ないからだ。

 

この後ろには霊夢と魔理沙と姫が居る。どうなるのかはもう分からないのでその場で何とかするしかなかった。

 

小槌を振り始めた怪物に青年は小刀で受けるしか方法はなかった。避けたりすると後々面倒な事になるかもしれない。

 

外側から振られた小槌にその反対方向へと回転して左脚で下から蹴り上げるようにした。小槌を避けてその返しとして蹴り上げられた怪物のその先に手すりなどなかった。そして一番大きい場所で屋根にも乗る事なく落ちていく。青年はそれを追いかける為に飛び出していた。その判断と行動力には驚かされるが此処がどのような場所なのかは言うまでもない。兎に角雲のある場所だった。

 

この先命の保証もない。そして誰もその動きにはついてこれなかった。いつもなら動けていたと思う霊夢も今は負傷していて立ち上がる事もしなかった。魔理沙は言うまでもなく立ち上がる事も許されなかった。嫌なところを当てられたらしくきつそうな表情をしているが霊夢の札を貼ってもらう事で九死に一生を得ていた。姫はもう何が起こっているのか自戒の念で押し潰されそうになっていた。

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