働き始めてから七日が経っていた。
青年の考えた通り妖精は効率的に早く仕事を終わらせるようにしていた。但し、咲夜の厳しい審査を通る必要があるらしくその時ばかりは嫌そうな顔をしている。
それと一つ問題があり二人で館から出るようにさせた。妖精があまりにも遊びたいばかりに早く仕事が終わらせるようになったのは成功したがその中で上達の早い妖精と遅い妖精が両極端になっていた。
なのでより遅い人の仕事を手伝って二人で外に出させる様にすることで効率化と実力の底上げを狙った。
「ちょっと良いかしら?」
咲夜はパチュリーの元で魔法の勉強に勤しんでいる青年に声をかけた。青年は急に邪魔が入った事に苛立ちを見せるが、後ろを見た瞬間にその声は止めた。
「どうした?」
青年は目の前に立つ青服で銀髪のメイドには頭が上がらなかった。正直青年が手伝っている意味はメイド長が復帰した事により無くなってしまった。それでもメイド長は好きにしていて良いと言って青年は魔法の勉強をして居候をしている。別に厳しい条件を課されている訳でもないがメイド長の働きぶりに敬意を示しているだけである。
「お嬢様の体が元に戻ったから挨拶でもしたらと思ってどうかしら。」
咲夜は妙な提案をしてきた。お嬢様もとい此処の主人に敵を合わせようとしている。青年はその事に疑問を呈していた。
「その必要はあるのか?」
青年は率直に思ったのはその事である。別に話を通しておけば良いしまだ療養中なのは聞かされていたが、なぜ此処でという気持ちである。
「大いにあるわ。直々に話をしたいそうよ。」
青年は渋々立ち上がると、メイド長の後をついていった。と思っていたが瞬時に着いていた。それだけ他事を気にしていたらしい。魔法陣の構築を習い始めた青年はどのようなものが描けるかずっと頭を巡らせて考えていた。
「失礼します。お嬢様。」
メイド長は扉にノックを四回した後に主人の声がかかるまで待っていた。それから部屋の中に入ったのである。青年はその様子を見ながら怠そうに中へと入る。中は黒と紅のチェック模様で真ん中に主人専用の高さになっている机の上には多くの種類のスイーツが切って乗せられていた。林檎やオレンジなどの果物が適当に詰め合わせられている。
「身体の方はどうなんだ?」
青年は第一に心配に思っていたことを聞いた。主人としてはそのような事はその時のことを思い出させるだけなので禁句であった。ましてやその本人が目の前にいてその口から放たれる。
「白銀のナイフは効いたわ。まだ傷口は残ってるわ。」
主人は青年の事を見て狡猾な表情を浮かべていた。そして復讐心たっぷりに青年の事を見ていた。それも仕方がない事だと割り切っていた。
「そうか。なら、話は終わりか?」
青年は早く話を切り上げたいらしくすぐにこの部屋から立ち去ろうとしていた。
「待て待てまてぇ。話はこれからよ。」
急な反応に主人としては有るまじき行為をしたわけだが、すぐに平穏に戻す。青年は帰りたいという気持ちを公にしていた。それだけにお嬢様と呼ばれた人も眉間に皺を寄せている。
「それで話とは?」
面倒臭いといえど、此処の主人はこの人なので青年としては居候先を失うのは不味かった。
「私が彼処まで吹き飛ばされたわけよ。何か知っているでしょう。」
主人は時にして吸血鬼としてない本性を露わにする。青年はそんな様子を静かに見ていた。
「何知らないといえばどうする。」
青年は完全に舐めきった態度を取っていた。主人は上手く怒るのを辞めていた。水が沸騰する寸前で水を足し続けるのとよく似ている。その内ヤカンから水が溢れ出すのだろう。
「何も知らないなんて言えるのかしら。」
主人は挑発的になっていたが青年にはどこ吹く風かのようにじっとしていた。
「済まない。少し考え事をしていた。もう一度頼めるか。」
青年はまさかの話を聞いていなかった。主人は遂に怒りが抑えられなくなった。まさかの対応にこうならない人の方が少ないだろう。
「貴方は私の事をなんだと思っているんだ?」
「敗者。」
小さく主人の事を切り捨てた青年は主人の事をよく見ていた。主人はメイドの元へと擦り寄る。何がしたいのやら、二人の行動に咲夜はそんな風に感じていた。
「すんなりと話しているのも良いが、精神を安定させてからにして欲しい。あまりに酷だ。」
青年はそれだけ言うと主人の居た部屋を出た。主人はそんな様子を見ながら憎めないやつだと止まっていた。良い意味にも悪い意味にも裏のない青年だが、表があるわけでもなかった。どちらかの面だけでもちゃんと戦えるようになろうと主人は思っていた。