青年放浪記   作:mZu

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第30話

白い吹雪から桜の吹雪へと変わろうとしている季節であった。既に散っていてもおかしくはない季節なのだが辺りは白銀の世界へと化していた。誰がが春を奪ったためである。

 

 

スカートの下にタイツを履いた銀髪のナイフのような目つきのメイドは広間で待っていた。その理由はある男を待っていた。

「すまない、パチュリーに課題を提出していた。」

青年は駆け足で戻ってくるといつもの灰色の着物に羽織をかけていた。此処には元々着物似合いそうなものはなく和洋折衷を体現したような服装をしている。俗に言う浴衣にベストを羽織って過ごしている。

 

「それは大丈夫です。それにしてもすいません。持ち合わせがないものでどうしてもそのようなものしかなくて。」

咲夜は申し訳なさそうにしていたが元々無かったものなのであるだけ嬉しいと思っていた。とても満足そうな顔をしている。咲夜はマフラーを最後に首に巻いて完全防寒対策をして外に出る。美鈴でもそこまでするような事はしない。あの人は鍛錬の一つとしてその様にしていた。

 

「少し出かけて参ります。」

門の前でいつものようにしている門番は眠りこけていたらしく地面に座っていた。青年はそんな様子を見ながら何も言わなかった。

 

「煙草でも買って来るんですか?」

美鈴は能天気に答えた。確かに青年が外に出る理由としてはそれで十分である。だからと言って美鈴も任せても良かったのにとは感じる。もし本当にそうだとしたら。

 

「いえ、この冬のように寒い異変を何とかしないといけないわ。それで少し此処を開ける事にしたわ。」

咲夜は冷たそうに話している。この景色かのようだ。

 

「そうですか。気をつけて下さいね。」

美鈴は適当に会話を終わらせて直ぐに居眠りを始める。それで良いのかと青年は思ったが何でも良いや、と投げ捨てた。

 

「行ってくるわ。」

咲夜は言葉に出して別れを告げる。青年は手を小さく振っていた。何か理由があるのかもしれない。美鈴も小さく手を振っていた。完全には眠っていないらしい。

 

それから咲夜に体を持ってもらい、宙に浮かされていた青年は静かにしていた。まるで猫のようである。舟ぐらいは用意しないと不便であるな、と感じた咲夜であった。

 

暫く浮き続けた後に奇襲を受ける。それは前にも見たことのある氷の弾だった。

 

「ハッハッハ、此処まで来い。人間ども。」

高らかに笑い、そして活発的に活動をする妖精、チルノであった。

 

この季節になろうともワンピース一枚だった。青年はその方を向いて其処に向かうように咲夜に話した。どうやら了承したらしくゆっくりと降りた。

 

「また喧嘩を売られるとは。今日は何の要件だ。」

青年は面倒くさそうに話していた。それもそうだろう。この氷で貼られた湖の上で勝負を挑まれればそうしたくもなる。咲夜は氷の上に降りずもしもの時に助けようとしていた。

 

「何となくだ、気にするな。」

また高らかに笑っているので首を動かして何となく準備運動を始める。表面は雑に凍らせたのか凹凸の激しくもしもの時はその場所を蹴るなりどうにかして有利にしようとしていた。

 

「そうか。なら、早めに終わらせよう。」

青年は一本だけ右腰から刀を抜き取る。そして中段で相手に向けて構えた。チルノは軽々しく大剣を持っていた。

 

「どうだ、これが私のアイシクルソードを見よ。」

チルノは自慢気にしているが自分で作り上げたのだろうと青年は思っていた。

 

しかし氷となると少しは有利になるかもしれない。そんな事を戦う前に青年は考えていた。本来は刃を交えてみてから判断するものだろうが前にも対峙したのでどのように来るかはよく分かっていた。

 

チルノは真っ直ぐに切り込んできた。そして大振りに大剣を振るう。上から斬り伏せようとしていたらしいが何ともないように青年には受け止められてしまった。徐々に溶けている大剣を見てチルノは早急に引いた。

 

「何だ、剣が燃えるように熱いなんて。」

チルノは驚いていた。自分の武器が軽々しく溶けている、もとい壊れているところを見て何とも思わない人はいない。このような反応をするのが一般的であろう。ただし、チルノの場合は戦闘不可能かのようにしていた。

 

「何のマジックを使ったんだ。何だ?」

チルノは大剣の溶けてしまった部分を見てどうしても分からないかのように見ていた。青年は徐々に奪われている体熱を我慢しながらその様子を見ていた。

 

「なら、早急に終わらせよう。」

青年は二刀を取り出して構える。チルノももう負けるつもりはないと溶けた部分を補修してから突っ込んできた。最早馬鹿の一つ覚えのように見えるこの攻撃を青年は受け止めていた。

 

徐々に溶けている大剣に目もくれず精一杯に振るう姿は青年からは滑稽だった。その先はどうなるかと言えば簡単である。大剣は完全に溶けたチルノはその勢いのまま青年へと突っ込んだ。青年はそうなるのを予知したかのように受け止めていた。チルノの体はとても冷たくて生きているとは思えなかった。其処らへんは妖精によって大分変わってくると思われる。

 

「負けたー。また今度は勝つからね。」

チルノは勝負を挑んだが青年は軽く受け流してその場を後にした。また戻って来る事があるかは別の話である。

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